「競馬嫌い」の僕を「競馬好き」にした競走馬、ヤマカツエース。

2017年3月11日土曜日の午後。
何気無くテレビを見ていた。
ファンファーレが鳴る。ゲートが開いたのが見えた。

僕は、競馬が嫌いだった。
頭の中で、動物虐待とリンクしたからだ。
ムチで叩き、無理やり走らせている──ただの見世物で、怪我をしたら、お役御免。
そんな物に夢中になる事は出来ない。
歓声などあげられるはずもない。
そう思っていた。

そんな、とにかく競馬を嫌っていた僕が、そのレースだけは見入ってしまったのだ。
どうしても気になる競走馬が走っていた。
きっかけは、当時勤めていた会社の女の子が、熱心に話していたこと。

「ヤマカツエースって馬が好きなの!」
「競走馬はカッコイイし、カワイイよ!」
「引退馬の子供を応援する楽しみもある!」

競馬について、随分と楽しそうに話をしていた。

2017年3月11日土曜日、金鯱賞。
何気無くした会話と笑顔が脳裏に浮かんだ。
ファンファーレが鳴り、一斉にゲートが開いた。
順調にスタートした競走馬達。ヤマカツエースは中団に位置付けていた。
最後の直線、スルスルと先頭へ躍り出る。
そのまま、2着馬に1馬身差をつけてゴール板を駆け抜けた。

「あれ……すごいカッコイイじゃん……」

すぐにヤマカツエースに魅了された。

だが、心のシコリは残ったままだった。
ムチの使用は、自分を納得させなかった。だからこそ、週明けに会社の女の子に聞いてみた。ムチの使用に、納得出来る答えが欲しかった。
「痛みの程度は馬にしか分からないけど……」と、前置きをした上で、笑顔で教えてくれた。
「今年からムチにクッション材がついたの!」
「それに、馬の皮膚は厚くて意外と平気らしいよ!」
この話は、自分にとって意外だった。

馬の痛みについてはあくまで馬の感覚の話だから、解決してはいない。だが、クッション材の存在は、自分を安心させた。
凝り固まった考えから見方が変わった。
カッコイイ競走馬を、素直に応援したくなった。
それから毎週レースを見るようになった。
特に、ヤマカツエースは欠かさず応援した。
そのまま、どんどん魅了されていった。
他の競走馬の応援もするようになった。

競馬は、面白い。

過去の僕のように、競馬に悪いイメージがある人へ。
とにかく一生懸命走る馬を見てほしい。
ひたむきなカッコ良さを感じてほしい。
それだけで、見方が変わるはずだ。
競馬場で、走ってる音や息遣いを感じてほしい。
命を燃やして、全力で頑張っている姿を。
きっと、僕のように競馬に魅了されるはずだ。

今、僕は競走馬に惹かれ続けている。
ヤマカツエースの、金鯱賞のおかげで。

写真:Horse Memorys

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