映像ではわからない、最初のチャンピオンズカップ挑戦で見せたサンビスタの末脚。

ダートでもジャパンカップと並ぶ国際招待レースを作ろうと2000年に創設された「ジャパンカップダート」。創設当初はジャパンカップと同週(場合によっては同日)に東京競馬場で行われていたのだが、2007年に日程が1週繰り下げられ阪神競馬場で行われるようになった。そして2014年には、開催場所が中京競馬場へ。アメリカのダートは全て左回りなので、右回りの阪神で実施するとダート競馬の本場であるアメリカの馬が苦戦する点への配慮からである。

その際、レース名が「チャンピオンズカップ」に変更された。国際招待レースではなくなったため、レース名に「ジャパン」を入れるのが憚られたのだろう。

私にとって想い出深いチャンピオンズカップといえば、2015年に一口出資馬のサンビスタが勝利したレースである。出資馬が勝っただけではなく、口取りにも参加させていただいた。

しかし、その前年(2014年)、つまり中京に移転してレース名がチャンピオンズになった最初の開催も思い出深い。そこにも愛馬サンビスタがいた。そして、私はサンビスタを応援すべく、現地中京競馬場に赴いていた。

この年、サンビスタは盛岡競馬場で行われたJBCレディスクラシックで優勝。当初はその次のレースにクイーン賞を予定していたが、引き続き状態がいいことから、急遽チャンピオンズカップに出走することとなった。当初の予定に無かったことから、JBCレディスクラシックを勝利に導いた主戦の岩田康誠騎手はローマンレジェンドに騎乗が決まっていて、松田大作騎手とのコンビが組まれた。

そのレースの1番人気はコパノリッキー。その年はフェブラリーSを人気薄で勝ってから、かしわ記念も制して、秋はJBCクラシック制覇と勢いに乗っていた。特に前走のJBCクラシックで後続に3馬身差の圧勝だった。

しかしレースが始まると、当然逃げるだろうと思われていた1番人気馬コパノリッキーが出遅れた。逃げが身上のコパノリッキーが後方からのレースになってしまって、力を発揮できそうにない展開に。クリノスターオーが押し出され気味にハナを切るが、1000m通過が62.3秒のスローペースとなった。そして、最後の直線では先行したホッコータルマエ、ローマンレジェンド、ナムラビクターの3頭が前でせめぎ合っていた。

ホッコータルマエvsローマンレジェンドvsナムラビクター。直線での攻防を映像で観ると、こんな感じである。

馬群の中団にいたサンビスタが4番手まで上がっていったが、上位3頭とはかなり差があり、前にいる3頭のワンツースリーで決まるように思えた。ここで、カメラがズームインし、上位の3頭の争いをアップで映す。その3頭がホッコータルマエ、ナムラビクター、ローマンレジェンドの順番で入線し、その後4位入線馬としてサンビスタが再び画面の中に現れた──。

しかし、ゴール前で観ていた私はターフビジョンには目もくれず、愛馬サンビスタを追っていた(馬券はコパノリッキーを軸に流してたので、当たりそうになかった)。ゴール前にいた私の目には、その光景は後に映像で見るものとは違って見えた。
前の3頭が粘る中、サンビスタが馬群を割って4番手まで押し上げる。そして、そこからの脚が凄かった。3着に迫る勢いなのだ。ひょっとしたら勝ってしまうかも──そう思わせるほど、馬群を抜け出してからのサンビスタの脚はもの凄かった。現地で、確かに目撃した。

結果は3着馬に1馬身1/4及ばずの4着だったが、前有利なスローペースの中、サンビスタはいい脚を見せてくれた。元主戦騎手である岩田騎手が乗っているローマンレジェンドには先着して欲しかったが、予想以上の好走だった。もしスローペースにならなかったら、馬券圏内はあっただろう。もしかしたら勝っていたかもしれない(コパノリッキーがちゃんと逃げていたらコパノリッキーの勝利の可能性も同時に高まるが……)。
愛馬の思わぬ好走ともの凄い末脚に、私は大興奮だった。

その翌年、サンビスタはM.デムーロ騎手を背に、チャンピオンズカップを勝ち、牝馬として初の中央GI勝利を達成する。その様子は別稿で書いたので詳細はここでは書かないが、それには続きがある。

サンビスタがチャンピオンズカップを勝った日の阪神のメインレース(チャンピオンズカップの15分後発走)と最終レースで、松田騎手が連勝したのだ。
そう、前年のチャンピオンズカップでサンビスタに騎乗して4着まで持ってきた松田騎手である。阪神競馬場にいた彼はおそらくチャンピオンズカップの中継でサンビスタの勝利を見て(もしくはサンビスタが勝ったと聞いて)、「去年、俺が乗った馬だ」と思った筈である。「今年も乗りたかった」と悔しがったのか「あの馬も強くなったな」と喜んだのかはわからないが、きっと色々と思うところがあったのだろう。
それが、メインと最終を連勝する原動力となったのだと、私は思っている。

あなたにおすすめの記事