![[血統研究]主要な種牡馬とGⅠ活躍馬の血統比較から、現代日本競馬における『アツい血統』を探る](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2025/03/IMG_9400.jpeg)
『遺伝に着目した血統研究』と題し、X(旧Twitter)にて調査結果を公開しているK.Arakiです。第2回の今回は、JRAの平地GⅠレースにおいて、近年、結果をだしているアツい血統を、データから探っていこうと思います。
アツい血統を探るために、今回は以下の2つの血統表を比較することにしました。
①主要な種牡馬66頭の血統表
②過去3年のGⅠレースを勝利した馬52頭の血統表
各馬の血統表を構成している各先祖の血量を計算し、①と②とで血量の比較をしてみよう、という試みです。
どのように比較をするかについて、アドマイヤグルーヴを例にしながら、簡単に説明していきます。
①の種牡馬66頭の中に、アドマイヤグルーヴを先祖に持つ馬はドゥラメンテの1頭だけでした。ドゥラメンテの血統表中におけるアドマイヤグルーヴの血量は、母なので50.00%となり、66頭における平均血量を求めると50.00% ÷ 66 ≒ 0.76%となります。
一方、②のGⅠ馬 52頭の中にアドマイヤグルーヴを持つ馬は、ドゥラメンテ産駒の7頭のGⅠ馬が該当します。これら7頭の血統表中におけるアドマイヤグルーヴの血量は、いずれも祖母なので25.00%となり、52頭における平均血量を求めると25.00% ÷ 52 × 7本 ≒ 3.37%となります。
このように① (=主要な種牡馬)と② (=GⅠ活躍馬)を比較した結果、特定の先祖の血量が① <②の関係であった場合、少数の種牡馬しか持っていない血なのに、その血を持つ馬がGⅠレースを多く勝利していることになります。つまり、その血は今アツい血統といえるはずです。
逆に①>②の関係であった場合、多くの種牡馬が持っている血なのに、その血を持つ馬のGⅠレースでの結果が思わしくないことになります。こちらの場合、その血はアツいかどうかの観点からは一歩さがる血統という可能性がでてきます。
では、ここから、詳細なデータを見ていこうと思います。表1は、調査データをまとめた資料になります。

表1:主要な種牡馬とGⅠ活躍馬の血量比較
「① 主要な種牡馬の血統表」の分析対象としては、2022/2023/2024年それぞれの産駒出走数ランキングにて、上位50位以内へのランクインの経験がある、種牡馬66頭を対象としました。
比較対象となる「② 過去3年のGⅠレースを勝利した馬の血統表」の分析対象としては、2022/2023/2024年のJRA平地GⅠ馬52頭の先祖を分析対象としました。なお、複数のGⅠを勝利している馬については、1頭扱いとして血量や本数の計算をしています。
血量の計算方法については、①の66頭と②の52頭の血統表を元に、7代先の先祖までを調べることにより、求めています。また、今回の資料では、②における血量順にソートして並べています。
では、ランキング上位から気になる馬をピックアップしていきたいと思います。
1位になったのは、サンデーサイレンス(以下SSと表記)で①②ともにトップの血量となりました。いずれも13%代なので、全ての調査対象馬の曽祖父にSSがいる状態(=血量12.5%)よりも多い血量となっています。本馬は、日本競馬において、もはや必須に近い血統と言えるでしょう。
2位となったのは、キングカメハメハです。①(=主要な種牡馬)においては5.38%の血量しかないにもかかわらず、②(=GⅠ活躍馬)においては、11.78%まで血量が上昇しています。キングカメハメハの優秀な点は、「SSを持たないため、配合しやすいこと」に加えて、「今やほぼ必須と言えるSSの血に頼らなくても一流馬を多数輩出できるだけの高い能力があること」であるというのが個人的な見解です。特に後者に関しては、後継種牡馬のロードカナロア(17位)やルーラーシップ(40位)もSSを持たず、父同様に種牡馬として一流の活躍をしています。さらにパンサラッサ、ダノンスマッシュ、ファストフォースなどのSSの血を持たない孫世代も続々と種牡馬入りを始めていて、今後さらに血量を増やしていく可能性が高いでしょう。
3位はNorthern Dancerです。今回の集計方法では血統表の7代以内を計算対象としているため、昔の馬であるほど8代よりも奥に埋もれやすくなります。この場合、実際の血量よりも少なく算出されることになってしまいます。今回の調査対象馬の中には、Northern Dancer を8代目に持つ馬もいることから、不利な状況ではありましたが、堂々の3位ランクインとなりました。
6位はドゥラメンテとなりました。本馬はSS持ちのキングカメハメハ系種牡馬となります。わずか5世代の中から3冠牝馬も含めた7頭ものGⅠホースを輩出しており、改めて早逝が惜しまれます。
12位はディープインパクトとなりました。①(=主要な種牡馬)においては8.33%の血量だったのに対して、②(=GⅠ活躍馬)においては、5.29%まで落としています。特に2024年において、ディープインパクトの血を持つGⅠ馬は、ジャスティンミラノの1頭のみでした。この結果を意外に感じる人も多いのではないでしょうか。
ここからは個人的な『仮説』となるのですが、この結果となった要因の1つは「ディープインパクトの独特の走り方」ではないでしょうか。ディープインパクトの強さの所以とも言える走り方。その走り方が異質で独特すぎたとしたら…代を経るたびにその独特の走りを実現していた数多くの遺伝子が少しずつ繁殖牝馬側の遺伝子に置き換えられてしまったことで、その走りの実現が難しくなっているのではないでしょうか。ディープインパクトと同じ走り方ができた繁殖牝馬なんて、そうはいないはずですから。
しかし、数ヶ月後には3冠馬コントレイル産駒がデビューしますし、先日はディープインパクトを祖父に持つフォーエバーヤングがサウジCを見事勝利しました。今後の血量がどう変化していくか、ウォッチを続けていきたいです。
14位はハービンジャーでした。父として3頭、母父として3頭、合計6頭のGⅠ馬を輩出しました。このうち4頭が京都競馬場でGⅠを勝利しており、高い京都適性を示しています。
15位はウインドインバーヘアとなりました。ディープインパクト、ブラックタイド兄弟だけでなく、妹ランズエッジの牝系からもGⅠ馬を立て続けに出ており、ポテンシャルの高さを示しています。特にGⅠを勝利したランズエッジの孫3頭の母が全て異なっていることにも驚きました。
さて、血量から今アツい血統を分析する試みはいかがでしたでしょうか。
今回は私の得意とするExcelで作成したツールを活用して分析してみました。今後も定期的に最新の分析結果をウマフリさんやX(旧Twitter)にて発信していこうと思っていますので、ご期待ください!