[重賞回顧]第69回川崎記念~ダート界、世代交代の予感〜

2020年の川崎記念は、3頭の「歴代王者」が出走。

昨年の勝ち馬ミツバ、一昨年の勝ち馬ケイティブレイブ、2017年の勝ち馬オールブラッシュ。

これに加えて、昨年浦和で行われたJBCクラシックを制したチュウワウィザードを合わせた4頭のJpn-1レースを制した馬が出走した。

また、まだJpn-1レースを制していないものの、4歳馬からも期待馬が出走。

Jpn-2名古屋グランプリを制したデルマルーヴル・東京ダービー馬ヒカリオーソ・羽田盃馬ミューチャリーと、今後のダート界を背負っていくような存在が顔を揃えた。

前日までの雨の影響で、馬場コンディションは不良馬場。チュウワウィザードが単勝オッズで1.6倍と抜けた人気に。

以下、ケイティブレイブ(3.2倍)、デルマルーヴル(8.0倍)と続いた。

レース概況

ゲートが開くと、チュウワウィザードが好スタートを切るが、内からケイティブレイブが先頭に立つ。
2番手にはアナザートゥルース、3番手にはデルマルーヴル。
以下ミツバ、ミューチャリー、チュウワウィザード、ヒカリオーソが先団を形成する。

中団にはメイプルブラザー、オールブラッシュ、後方にはモズオトコマエなどが続いた。

1周目の直線でも変わらずケイティブレイブが競馬を引っ張る形に。
2番手にはミューチャリー、3番手にはチュウワウィザード、さらにそこにミツバ、アナザートゥルース、デルマルーヴル、ヒカリオーソの順で続く。

前半1100mの通過タイムが69秒5。

ケイティブレイブが依然先頭をキープしているが、徐々にミューチャリーが迫ってくる。3番手グループにはチュウワウィザードとデルマルーヴル。ミツバの和田騎手の手が徐々に動き出す。アナザートゥルースの大野騎手には既にステッキが入ってくる。対照的にヒカリオーソの山崎騎手は楽な手応えで徐々に進出。中団の馬達も徐々に動きを見せてきた。

2周目3コーナー。

ケイティブレイブを交わしてミューチャリーが先頭に立つ。2番手にはチュウワウィザード。デルマルーヴルもケイティブレイブを交わして3番手に立つ。展開に変化があらわれるなか、後方からヒカリオーソも上がってきた。

4コーナー手前でミューチャリーを交わしてチュウワウィザードが先頭に立つ。
2馬身後方にはデルマルーヴル。ケイティブレイブには余力がなくなってきた。
代わってヒカリオーソが上がってくる。

そして、最後の直線。
チュウワウィザードが楽な手応えで後続との差を広げた。
2番手にはミューチャリーが必死に抵抗するが、外からデルマルーヴルとヒカリオーソが襲ってくる。

激しい2番手争いをよそにチュウワウィザードが2番手以下を6馬身の差を付けてゴールイン。
2番手は外から伸びてきたヒカリオーソ、3番手はデルマルーヴルがミューチャリーを交わしてゴール。
ケイティブレイブはアナザートゥルースとの5番手争いにも敗れ、6番手での入着が精一杯だった。

タイムは2分14秒1。

各馬短評

1着 チュウワウィザード(1番人気)

通算15戦9勝2着3回、3着1回。

唯一馬券圏内に絡まなかった昨年のチャンピオンズカップ(G1)でも勝ったクリソベリルから0.3秒差の4着と、安定した戦績を残している。

血統的にみると、父のキングカメハメハからはホッコータルマエが出ている。

しかしチュウワウィザードの特筆すべき点は、母方の祖母にあたるオータムブリーズにある。

オータムブリーズの直子のアイアンテーラー(父ゴールドアリュール)はJPN-3のクイーン賞を制覇。孫にはダートG1レース4勝のルヴァンスレーヴがいる血統だ。

次走は選出されれば、ドバイワールドカップとのこと。選出されなければ、船橋のJPN-2レースのダイオライト記念に進むはずだが、今後行われる帝王賞をはじめとするダートG1レースではライバルのオメガパフュームを負かせる位の成長度が期待されそうだ。

2着 ヒカリオーソ(7番人気)

前走の報知オールスターカップ(川崎・ダート2100m)はオールブラッシュの3着に敗れたものの、同じコースの戸塚記念を制した馬である。

また、2000mの東京ダービーを制するなど、2000m前後の距離が合っているようだ。

先行力が武器のこの馬だが、今回はスタートで若干出遅れたとの事。そこから2着まで押し上げた辺り、差して競馬もできるという新たなる面が出たレースだった。

帝王賞などのJPN-1レースで勝ち負けするには更なるステップアップが必要。だが、地元南関東限定の重賞であれば、堂々と主役を張れる逸材のはずだ。

3着 デルマルーヴル(3番人気)

チュウワウィザードから離された3着だったが、レースを注視すると、マーフィー騎手が終始チュウワウィザードの動きを警戒していたのが分かる。

終始チュウワウィザードの外に被せるようにレースを進めていく「勝つための競馬」を敢行しての3着だけに、内容は悲観しない。

ダート1400mの兵庫ジュニアグランプリ(JPN-2)からダート2500mの名古屋グランプリを制するなど距離適性は分からないが、今までのレースを見る限りではダート2000m前後の距離が合いそうな気がする。

JRAのダート戦戦でも十分活躍できそうだ。

4着 ミューチャリー(5番人気)

これまでのレースを見ると、中団より後ろに控え、瞬発力を活かす競馬を得意としていた。しかし今回は、好スタートを切った後、敢えて前で競馬をする御神本騎手の好判断が光った。

考えてみれば、去年のジャパンダートダービーでクリソベリルから0.6秒差の3着に入った馬。ヒカリオーソと同様にJPN-1レースで互角にやるのには更なるステップが必要。

ただ、南関東限定の重賞競走では主役を張ってもおかしくないレースぶりであった。

総評

走破タイムの2分14秒1は2016年のホッコータルマエと同タイム。近5年間でもトップタイになる速い決着となった。

この日の川崎競馬場は、不良馬場といっても、水たまりができるような馬場でなく、時計が出やすいようなある程度締まった馬場となっていた。

このような馬場になると、明け5歳のチュウワウィザードや明け4歳のヒカリオーソ、デルマルーヴル、ミューチャリーの様なスピード重視の若年層の馬が活躍する。

また、ここ4年間JRA勢が5着まで独占したのに対し、地元のヒカリオーソやミューチャリーが2,4着と掲示板に載った辺り、今年の南関東の4歳勢はハイレベルな世代という事が分かった。

これから経験を積むことで、ヒカリオーソの父フリオーソの様にJPN-1レースを制する馬が出てくることを期待したい。

写真:がんぐろちゃん

あなたにおすすめの記事