エアグルーヴ、メジロドーベル、スペシャルウィーク、メジロライアンの血が流れる血統馬。フラワーC勝ち馬、ホウオウイクセル。

もし私が「あなたが思い入れのある世代は?」と問いかけられたら、私の答えは決まっている。
「2021年の牝馬世代です」
「理由は?」
「この時代に私は競馬を始めたから」
ちょうど、桜の蕾がほころぶ頃に私は競馬というものを始めた。クラシック戦線が盛り上がる頃である。
今回は、この年のフラワーCを回顧したい。牝馬クラシックの幕開けとなる桜花賞に向けても重要な一戦だ。

ファンファーレが響き、ゲートが開く。バラついたスタートであったがその中で良いスタートを切ったのがホウオウイクセルであった。同馬は、先頭に立ちかけたがジョッキーが位置を下げた。しかし、先頭集団に位置取った。先頭に立ったのは、タウゼントシェーンである。そのまま、各馬は第二コーナーへと突入した。

動きがあったのはコーナーを曲がり終えた直線。
先頭に立つと予想されていた、アビックチェーンが後続を突き放して、逃げの戦法を繰り出した。ホウオウイクセルは4番手。隊列が縦長となったが、依然として、4番手でレースを進めている。これからの展開を考えると好位置でレースを進めたと言えるだろう。

最終コーナーにかかる。このまま、アビックチェーンが逃げ切るかと思われた。
──が、ホウオウイクセルが一瞬の隙を突いて、馬群の間を縫って抜け出し、アビックチェーンをとらえた。

最終直線で、そのまま先頭を突き進む。しかし、後続馬も負けてはいない。後続馬たちが末脚に賭け、猛追を開始した。数多の影が忍び寄る。しかし、同馬は根性で粘り切って、一着でゴール板を駆け抜けた。三歳の乙女たちの夢である桜の女王への足がかりとなるレース・フラワーCは幕を閉じた。

ホウオウイクセルはこのレースを制して、桜花賞への切符を手に入れ、次なる舞台へと進んでいった。

この年のフラワーCは、ホウオウイクセルの冷静なレースの進め方と共に、他の出走馬にも注目すべきものとなった。先述したがホウオウイクセルに迫った一頭であるユーバーレーベン。その年のオークス馬である。さらに、“個性派“として名を馳せたリフレイムも出走していた。まさに、色とりどりの“華“が競演となったレースであった。

その後、ホウオウイクセルが向かった桜花賞には、あの“純白のアイドルホース“が待ち受けていたのだが──それはまたの機会に。

余談であるが、この年、話題のアプリ「ウマ娘プリティダービー」がリリースされた。私が競馬に興味をもつきっかけとなったのがこの「ウマ娘」であった。実馬をモチーフとした「ウマ娘」をトレーナーとして育成し、共にクラシック級やシニア級(例えばダービーや天皇賞など)のビッグタイトルを獲ることを目指す内容のゲームである。

実はホウオウイクセルは、この話題のゲームに深く関連していた。
血統を遡ると、父方の祖母がエアグルーヴ、母はスペシャルウィークとメジロドーベルの間に産まれたメジロオードリー。メジロドーベルの父はメジロライアン。つまり、女帝とメジロの血を引いており、「トレーナー」としては、応援せずにはいられない一頭であった。そういえば、三着馬のユーバーレーベンもウマ娘では破天荒なキャラクターとして有名なゴールドシップの産駒である。

クラシック開幕がいよいよ近づいてくる時期に開催されるフラワーC。
2022年には、後の秋華賞馬スタニングローズもここで勝ち星を挙げている。また、2018年の三着馬は、後にヴィクトリアマイルや香港Cを制覇しすることとなるノームコアであった。このことから、一着馬だけではなく、掲示板内に入った馬からG1馬が排出されるステップレースとも言えるだろう。
2021年に咲いた華は、真っ赤に燃える火のような華であった。

──さて、次はここから、どんな“華“が咲くのだろうか。

写真:ちゃぼ

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