[重賞回顧]第58回スポーツニッポン賞京都金杯(GⅢ)~京都巧者の新たなる面~

1月のハンデ戦、京都金杯。

しかし、ここを飛躍のきっかけとして、のちにG1ホースになる馬もいる。

例えば、芝2000mで行われ、名称も「金杯・西」と呼ばれていた時代の、1988年。

タマモクロスが直線の短い京都内回りで、ラストで14頭をごぼう抜きした。

タマモクロスはその後、天皇賞春秋連覇や宝塚記念制覇を達成し、その年の年度代表馬に輝いた。

他にも1990年のオサイチジョージは、その年の宝塚記念を制覇。翌1991年には勝ち馬ダイユウサクが波乱の有馬記念を制した。

現在の芝1600m戦になってからも、2005年にはハットトリックが同年のマイルチャンピオンシップ、香港マイルを制覇。

2008年のエイシンデピュティが同年の宝塚記念を制覇。

さらにダノンシャーク(2013年)が、翌年のマイルチャンピオンシップを制覇している。

京都金杯は単なるG3レースのハンデ戦ではなく、将来のG1ホースへの可能性が秘められた馬達が出るかもしれない……そんなレースなのである。

ファンも新星登場を期待していたのか、1番人気には明け4歳馬のカテドラルが推された。

2番人気はスワンステークス(G2)を制した4歳馬ダイアトニック、3番人気は京都コース4勝の実績を持つ5歳牝馬サウンドキアラが続いた。

レース概況

ゲートが開くと、ソーグリッタリング、ボンセルヴィーソが好スタートを切った。

しかし、それを制して逃げ馬で8歳馬のマルターズアポジーが先頭を主張。3番手にはモズダディー。以下メイショウショウブ、エメラルファイトが続く。

サウンドキアラはその直後、ソーグリッタリングと共に取り付く。ダイアトニックは中団、1番人気・カテドラルは後方2番手からレースを進めていた。

前半800mが47秒1と、ほぼ平均ペースでレースが進む。しかし、600mから800mのラップが12秒2と、先行する馬にとっては一息つく事ができる展開に。

これが後に、勝敗を決める大きなポイントとなった。

坂を下って4コーナー。

ボンセルヴィーソが逃げたマルターズアポジーを交わして先頭に立つ。直線に入ると、内からエメラルファイト、外からサウンドキアラが迫ってくる。

カテドラルは後方から脚を伸ばそうとするが、伸びがない。

残り200m。

サウンドキアラが先頭に立つ。 

真ん中からダイアトニック、大外からソーグリッタリングが伸びてくる。特にダイアトニックの脚色がいい。

しかし、サウンドキアラが再び伸びると、ダイアトニックの脚は一杯になった。

これがハンデ53㎏のサウンドキアラと57㎏のダイアトニックのハンデ差だろうか。

結局、サウンドキアラがダイアトニックに1馬身3/4の差を付けてゴールイン。

走破時計は1分34秒0。

3着は内で粘っていたボンセルヴィーソ。大外から伸びてきたソーグリッタリングが4着。カテドラルは17着と大敗した。

各馬短評

1着 サウンドキアラ(3番人気)

掴んだ白星5つは全てが京都コース。キャリア15戦で唯一6着以下に敗れたのが昨年のG1レース、ヴィクトリアマイル(7着)のみ。

しかも、2勝クラス(当時は1000万下)からの格上挑戦で0.7秒差の7着と好走した。

しかも、これまでは京都コースの外回りでのレースでラスト600mが33秒台と瞬発力勝負に強かった本馬だが、今回は34秒6と時計が掛かった中での勝利。

逆に言えば、瞬発力が求められる高速馬場に対応できるし、時計の掛かる馬場でも対応できるという事にできる事が証明されたと考えるべきだろう。

春はヴィクトリアマイルを目標にしているが、得意の京都競馬場でなくとも昨年の7着以上の結果が出ておかしくないほど、馬自身が充実している。

2着 ダイアトニック(2番人気)

芝1400mのスワンステークスを制した一方で、芝1600mのレースは6戦1勝と戦績的に振るわない本馬。

ただ、10着に敗れたマイルチャンピオンシップ以外は勝ち馬から0.3秒以内と、戦績ほど負けていない印象は受ける。

ラスト600mのタイムはメンバー中トップの34秒3。

ハンデがある中で、この馬の力はしっかりと出せただろう。ベストは芝1400mのはずだが、京都コースであれば芝1600mでも十分通用する事を証明した。

同距離で行われるマイラーズカップでも注意が必要だ。

3着 ボンセルヴィーソ(14番人気)

3勝クラスの渡月橋ステークス1着からの昇級初戦のため、14番人気と低評価だった。

ただ、元々はNHKマイルカップ(2017年)、朝日杯フューチュリティステークス(2016年)といったG1レースで3着に入ったように、メンバー中トップクラスの実績を持っていた。

マルターズアポジーが先頭に出たのを確認し、競りかけず2番手でレースを進めた太宰騎手の好騎乗も光った。

ダイワメジャーの子らしく、1600m戦では器用に立ち回るレースセンスがあり、今後もマイル前後での好走が期待される。

17着 カテドラル(1番人気)

スタートに難のある馬であったが、今回は出遅れることなくスタートが切れた。6着と健闘したマイルチャンピオンシップの様に、後方から脚を溜める競馬に徹した。

前半800mが47秒1と先行馬にとって有利な展開で、後方から伸びてくる馬には不利だった、という見方もできる。

しかしマイルチャンピオンシップの前半800mのタイムは47秒2と、今回とほぼ同じペース。それでも伸びなかった辺りは、マイルチャンピオンシップで激走した反動が残っていたということなのかもしれない。

体調面が戻れば、今後も重賞で好走できる馬だろう。

総評

当日の京都芝コースでのレースは5レースあったが、最終レースで勝ったゼセル(16番枠)以外の馬は10番枠より内の馬が3着以内に入った。

1か月間の間、開催直前までシートで養生した影響もあったのだろう。

京都金杯も3番枠、6番枠、7番枠の馬が上位に入り、18番枠のソーグリッタリング、14番枠のブレステイキング(5着)など外枠に入った馬は不利を被ったように見える。そうした馬は今回の結果はノーカウントとして、次走以降も注目したい。

写真:ゆーすけ

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