[アーリントンC]混沌としたマイル戦線に有力馬が現れるか。ショーモンやオオバンブルマイ、ナヴォーナらが激突。 - 重賞プレビュー

15日(土曜)阪神メインはNHKマイルカップトライアルのアーリントンカップが行われます。
以前は2月末に行われ、やや波乱度の高いレースでしたが、2018年に4月に開催時期を移行し、3着までにNHKマイルの優先出走権が与えられるように変更されると、多くの実力馬が出走するようになりました。

18年の勝ち馬は19年スプリンターズステークスの勝ち馬タワーオブロンドン。そして昨年の勝ち馬ダノンスコーピオンは次戦でNHKマイルを制しました。18年からの5年間で4回1番人気馬が勝ったように、前評判の高い馬が勝利するという傾向になっています。阪神芝1600M外回りという紛れの少ないコースで実力を発揮しやすいレースに変わってきていると言えるのではないでしょうか。

今年は昨年のダノンスコーピオンのように明確な1番人気馬がいるわけではなく、実力伯仲の混戦というメンバー構成ですが、先週のニュージーランドトロフィーで朝日杯を勝ったドルチェモアが敗れたことで3歳のマイル界が一気に混沌としてきました。朝日杯2着のダノンタッチダウンは今週の皐月賞に出走、朝日杯3着馬のレイべリングは共同通信杯で9着と残念な結果に終わっています。
ニュージーランドトロフィーはエエヤンが勝ちましたが、同馬は東京芝1600Mに替わってどうかという点が疑問ですし、デイリー杯2歳Sを勝ったオールパルフェはスプリングSで7着と成長度が疑問です。ファルコンS組はそもそも道悪での競馬だったので東京の高速馬場に替わってどうかというところでしょう。

現時点での3歳マイル界は主役が不在です。
このような状況下ではNHKマイルカップのトライアルレースであるアーリントンカップの重要度が例年以上に高くなったと言えるでしょう。
右回り左回りの違いはありますが、阪神芝1600Mのガチンコ勝負がNHKマイルで中心になる馬を浮き彫りにしていくのではないでしょうか。このレースの結果で、NHKマイルカップの人気や中心となる馬が定まりそうです。その点で大きな意味を持つトライアルレースと言えるでしょう。

週ごとに変化の大きい阪神芝が大きなポイントに

各馬の実力が伯仲しているアーリントンカップですが、さらに頭を悩ませそうなのが今週末の馬場状態です。
最近の阪神芝はお天気によって馬場状態が変化しています。大阪杯週はそれまでの時計がかかる馬場から一転して高速馬場へと馬場が回復。先週の桜花賞週は当該週の木曜、金曜に雨が降って、日曜はやや重スタートでしたが桜花賞時は良馬場となりました。ただ、大阪杯週よりは時計がかかる馬場でもありましたので、非常に難解です。

アーリントンC 注目馬紹介

ショーモン - パワーアップが顕著な1頭。勝って笑う門に福が来るか。

キャリアが少ない3歳春の時期ですので、1勝クラスを勝っている馬が中心になるでしょう。
中でも、前走同じ阪神芝1600Mを好タイムで勝っているショーモンが、ある意味で基準になるでしょうか。

2歳時はデイリー杯2歳Sで3着と健闘。
その後はレースを使わず、3月11日の3歳1勝クラスのレースに出走しています。
この時は成長分もあったと思いますがプラス22キロ。それでも道中は2番手を追走し、直線で早め先頭に立ちました。その後は内から伸びてきたプッシュオンに交わされてしまいますが、その後じりじりと伸びて差し返しての勝利でした。

勝ちタイムの1分33秒3は優秀です。
また、500キロを超える馬体重ですし、血統的にもスピードとパワーを兼備したマインドユアビスケッツ産駒なので、渋った馬場が向くタイプと見ます。先行して持続的に脚を使えるので、安定度が高い馬と言えるのではないでしょうか。

ユリーシャ - エルフィンSで負かしたのは桜花賞2着のコナコースト! まだ底を見せていない素質馬。

先週の桜花賞はリバティアイランドが素晴らしい末脚で勝利しましたが、2着のコナコーストも早め先頭から見せ場たっぷりの競馬でした。

そのコナコーストをエルフィンSで破っているのがユリーシャです。
エルフィンSのレース自体はいわゆるスローからの上り3ハロンの競馬でしたが、単騎先頭で進んで上り3ハロン34秒4の脚を使って逃げ切りました。展開が向いたとはいえ、2着のコナコーストに2馬身半差をつけていますし、2着とクビ差の3着が後にフィリーズレビューを勝ったシングザットソングですから、いかにレースレベルが高かったかが分かります。

今年の桜花賞は出走のボーダーラインが高かったので早い段階で桜花賞出走を諦めてアーリントンカップに目標を定めました。渋った馬場に対しても、未勝利戦勝ちが同じ阪神芝1600Mでやや重馬場での勝利ですから対応可能でしょう。逃げの脚質で安定していますし、エルフィンSで負かした馬たちがその後に結果を出したことからも『桜花賞に出ていたらどうなっていたか?』を想像したくなる1頭と言えるのではないでしょうか。

オオバンブルマイ - 馬場が荒れた時ほどレジェンドの眼力が冴える。立ち回りに注目。

今年のアーリントンカップはキャリアの浅い馬が集まったメンバー構成になりましたが、唯一の重賞勝ち馬がオオバンブルマイです。

京王杯2歳Sでは前残りの展開を道中4番手を進んで差し切って勝利。
続く朝日杯では7着でしたが、出遅れてしまったのが原因で力負けではありません。
1600Mの距離自体は大丈夫でしょう。

京王杯2歳Sのように先行する形なら、マイル重賞でも戦える力があると言えるのではないでしょうか。
今回騎乗するのは武豊騎手。馬場状態の判断に優れている騎手ですし、先行馬に騎乗しての立ち回りが巧さには定評があります。3戦2勝とまだ底を見せていない同馬。レジェンドを鞍上に迎え、巻き返す可能性十分です。

ランスオブサウンド - タフな馬場なら、前走からの距離短縮がいきてくる。

アーリントンカップは先行馬が多いメンバー構成。
加えて水分を含んだ馬場であまり速い上りが出せない馬場状態を考えれば、先行馬が積極的に位置を取る持続力勝負になる可能性が高いでしょう。

レースの中盤でもペースが緩まず、直線では消耗戦のような形になるのではないでしょうか。
そういう状況では前走からの距離短縮馬がハマる可能性もあります。5頭いる距離短縮馬から、牝馬のランスオブサウンドに妙味を感じます。

新馬戦でランスオブサウンドは道中5番手を進み、外から差し切りました。
この時2着に負かしたのが後にチューリップ賞で5着に入るラカンですから価値ある勝利と言えます。

2戦目の君子蘭賞では逃げて残り200Mまで粘っていました。距離を短縮しての1600Mはピッタリでしょう。
今回は新馬戦を勝った時の藤岡佑騎手ですので乗り替わりの不安もないと言えます。キャリア2戦でまだ上積みがあることを考えれば、牡馬が相手でも好勝負可能でしょう。

セッション - 『3歳マイル重賞は、クラシックからの路線変更組を狙え』の格言を信じて。

3歳牡馬路線は多くの馬が皐月賞・ダービーを目指すので自然とクラシック組のレベルが高くなります。
一方で、一度は皐月賞・ダービーを目指したものの、距離適性などからクラシック路線を諦めて、マイル路線に切り替えたことで結果を出す馬もいます。

具体的な例を挙げますと、2016年のNHKマイルカップを勝ったアドマイヤマーズは皐月賞4着からの路線変更、21年のNHKマイルカップを勝ったシュネルマイスターは前走で弥生賞ディープインパクト記念2着からの路線変更でした。

今回のアーリントンカップでは前走で弥生賞ディープインパクト記念で7着だったセッションにその傾向を感じます。2戦目の阪神芝1800Mでの勝ち上がりだったので次戦は2000Mの若駒Sを選択し3着という結果。道中は2番手から前を追いましたが、直線で伸び切れず3着となりました。続く前走の弥生賞でも道中2番手からの競馬でしたが、勝ったタスティエーラが4コーナーで早めに上がってきてしまったのでセッションは苦しくなり直線では失速してしまいました。ただ、マイルの距離がピッタリという可能性もありそうです。

距離短縮して最後に切れにつながったり、タフな馬場でのスタミナ比べになった場合でも底力を発揮できるのではないでしょうか。

ナヴォーナ - 1戦1勝馬でも大物感はトップクラス! 半兄にはNHKマイルカップ馬シュネルマイスター。

重賞勝ち馬が1頭だけというメンバー構成ですので、まだキャリアが少ない馬に期待が集まるのは必然でしょう。1戦1勝馬のナヴォーナにはかなりの大物感を感じます。

新馬戦は東京芝1600Mでしたが、いわゆるスローからのヨーイドンの展開で、ラスト600Mだけの競馬。上り3ハロン34秒0の瞬発力勝負で先行馬が有利の展開でしたが、ナヴォーナは道中10番手から外を回って豪快に差し切りました。同馬の上り3ハロンは33秒2と上り2位の3着馬に0秒9差もつけました。2着馬に1馬身と4分の3の差をつけての快勝ですから直線での切れは相当です。

2戦目で重賞を選択したのは自信があるからと言えますし、絶好調の川田騎手が騎乗することでさらに注目が集まりそうです。血統的にも半兄にNHKマイルカップ2着があるシュネルマイスターですから血統的な期待感もあります。重賞での力関係が鍵になりますが、ここも勝てるだけの素質がある馬と言えますし、勝ちっぷりでは一気にマイルの主役になれる可能性を感じます。新馬戦の時とはレースの環境がガラッと変わった2戦目でどんな走りをするのか注目です。

これまでの実績馬が年明けの緒戦で凡走して、一気に混沌としてきた3歳マイル界。
NHKマイルカップの唯一のトライアルレースであるアーリントンカップの重要度が例年以上に増したと言えるのは間違いありません。このレースの結果がNHKマイルカップでの基準になるのは確かですし、今回の結果でマイル界の力関係がはっきりすることになるでしょう。この記事が皆さんの参考になれば幸いです。

写真:かぼす

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