[皐月賞]いよいよ到来した牡馬クラシック第一戦。大混戦を制するのはどの馬か。 - 重賞プレビュー

主役不在で始まる牡馬クラシックロード。
近年稀に見る大混戦を制すのはどの馬だ!?

今週日曜(16日)中山メインは牡馬クラシックの第一戦・皐月賞が行われます。
先週が3歳牝馬の桜花賞、今週が3歳牡馬の皐月賞と、いよいよ春競馬も本番といった時期になりました。春の暖かな気候と相まって、競馬ファンなら誰しもワクワクするシーズンではないでしょうか。

ただ、今年の3歳牡馬路線は近年稀に見る大混戦という状況です。
牝馬路線はリバティアイランドという圧倒的な主役がいて、桜花賞ではその強さを見せつけて勝利しましたが、牡馬路線には明確な主役が不在です。『今年の皐月賞は誰が中心?』と問われても、かなり意見が分かれることは間違いありません。出走馬の能力の把握も難しいところがありますので、まずは前哨戦やトライアルレースを簡単に回顧していきます。

皐月賞 前哨戦振り返り

共同通信杯
1着:ファントムシーフ 2着:タッチウッド 4着:タスティエーラ 5着:ウインオーディン

勝ちタイム 1分47秒0 (良) 前半1000M:1分00秒5 上り4ハロン:46秒5 3ハロン:34秒1

前半1000M通過が1分00秒5とスローペースで続き、上り3ハロンが速くなる瞬発力勝負となりました。
展開的に先行馬が有利ではあったものの、先行しつつ速い上りを出せた勝ち馬の力が一枚上だったと言えます。

2着争いはタッチウッド、ダノンザタイガー、タスティエーラの3頭で際どくなったが、出遅れながらもレースの中盤で先頭に立ったタッチウッドが押し切って2着。チグハグな競馬でも2着に残ったタッチウッドの素質の高さも光ったレースと言える。

弥生賞ディープインパクト記念
1着:タスティエーラ 2着:トップナイフ 3着:ワンダイレクト

勝ちタイム 2分00秒4 (良)前半1000M:1分01秒0 後半1000M:59秒4

前半1000Mが1分0秒1とスロー。

その後もペースが上がらず、残り600Mから速くなる瞬発力勝負となった。
内、前が有利の展開で早め先頭から押し切ったタスティエーラの持続力が一枚上でした。
2,3着馬は地力上位の馬が順当に走ったというレースと言えます。

スプリングS
1着:べラジオオペラ 2着:ホウオウビスケッツ 3着:メタルスピード

勝ちタイム 1分48秒9 (やや重)前半1000M:59秒4 上り4ハロン:49秒5 3ハロン:37秒2

前半1000Mが59秒4。やや重馬場ということを考えれば、Hペースでグラニットが逃げる展開と言えます。
残り800Mは1ハロン12秒台にラップが落ちていく我慢比べのようなレース。重馬場で速い上りの脚を使えなかったので、2番手以降もなし崩しに脚を使わされてしまった展開で、ある程度位置を取って長くいい脚を使った馬が上位に来た一戦と言えます。

なかでもべラジオオペラの持続力と底力が一枚上。
2着馬ホウオウビスケッツは2番手で粘るも勝ち馬に交わされてしまいました。米国血統の馬なのでやや重馬場が向いた印象です。3着メタルスピードは内目のロスの無い進路取りで恵まれたように考えてもよく、個人的にはマイラーと見ています。

ここまで主な前哨戦の3レースを取り挙げましたが、タスティエーラの戦績から考えると、共同通信杯>弥生賞ディープインパクト記念という構図になるかもしれません。その力関係に他の馬をどの位置に入れるか、というのが一応の基準です。そこから皐月賞のレースでの枠順や馬場、展開などを考えていき、各馬の評価の上げ下げを行っていくのがいいと思います。

土曜中山7R、9Rを簡単に振り返って日曜の中山の馬場を推測する

土曜中山7Rは4歳以上1勝クラス芝2200Mのレースで11頭立てのレース。
1番人気のボンベールが逃げて3~4コーナーに入りましたが、直線に入ると外からシャドウマッドネス、エクスインパクトの2頭が伸びてきてシャドウマッドネスが勝利しました。1馬身半差の2着争いが際どくなり、勝ち馬と一緒に上がってきたエクスインパクトがさらに後ろから伸びてきたヴィトーリアを抑えて2着に食い込んでいます。上位3頭は差し・追い込み馬だったので完全に外差し馬場による追い込み展開のレースでした。勝ち馬はデムーロ騎手騎乗でしたが、道中で横山典騎手が見せるようなポツンと1頭離れた最後方からの差し切り。3着馬は道中後方2番手でしたので、追い込みの印象が強いレースでした。

土曜中山9Rの山藤賞は3歳1勝クラスの芝2000Mのレース。皐月賞に近い条件と言えるので非常に参考になりそうです。レースではジュンフシナが徐々に2番手以降を離しての逃げ。2番手グループが少し離れて進み、また離れて後方に馬が固まって進む縦長の展開。3~4コーナーで2番手以降が急速に一団に固まって直線へ。直線ではダニーデンが先頭に立ちましたが、外からスズカハービンとシルバーティムールが伸びてきてゴール前では3頭の競り合いになり、スズカハービンが勝利しました。1,2着馬は道中後方を進んで外から追い込んできたのでこちらも差し、追い込みの競馬になりました。

土曜の7、9Rについてまとめますと、2レースとも差し・追い込み決着。血統的にはディープインパクト系の産駒、前走からの距離短縮、近走で速い上りを出している馬が上位に来ているという傾向でした。日曜も渋った馬場のままなら似たような傾向になるかもしれません。雨が降らない時間が多いと思うので馬場も土曜よりは乾燥してくるはずです。馬場が少し乾燥していけば、より外差し傾向になるのではないでしょうか。

皐月賞 注目馬紹介

ファントムシーフ - 安定度の高さはトップクラス。減点材料の少なさが武器。

直近のレースの単純な力関係を上に書きましたが、弥生賞ディープインパクト記念を勝ったタスティエーラが共同通信杯で4着だったこと、東スポ杯2着だったダノンザタイガーが3着だったこと、共同通信杯6着のシーズンリッチが次走で毎日杯を制したこと、朝日杯FSで3着だったレイべリングが共同通信杯では9着だったことから、共同通信杯組のレベルの高さは明らかです。

勝ち馬のファントムシーフの能力は力関係上では最上位と言えるでしょう。
4戦3勝と成績も優秀ですし、唯一敗れたホープフルSも出遅れて1番枠で動けない位置になってしまったので力負けではありませんでした。

ルメール騎手が騎乗し、うまく立ち回れば大きく負けることはないように感じます。
メンバー中最も安定度の高い馬と言えるのではないでしょうか。

ソールオリエンス - 大物感なら世代随一! 過去の名馬を思い出させるような勝ちっぷり。

近年稀に見る大混戦の今年の皐月賞。
各前哨戦からは立ち回りの巧い馬が多いものの、『これぞクラシック候補だ!』と思えるような高い素質を感じる馬が少ないのが今年の3歳牡馬の寂しいところかもしれません。
多くの競馬ファンが3歳牡馬に求めるのは立ち回りの巧さや器用さよりも、不器用でもいいから素質と能力の高さで勝ち切ってしまう粗削りな魅力でしょう。その魅力を感じるのがソールオリエンスです。

1月に行われた中山芝2000Mで行われた京成杯では4コーナーで外に大きく膨れながらもそこから立て直して差し切っての勝利でした。この不器用な勝ちっぷりに過去の名馬の面影を思い起こさせる競馬ファンも少なくありません。個人的には2015年の皐月賞で同じように4コーナーから直線手前で外に膨れてしまいながらも外から豪快に差し切ったドゥラメンテの勝ちっぷりに近いものを感じました。

今年の京成杯と2015年の皐月賞では出走馬のレベルが全く違いますが、能力の高さは明らかです。皐月賞でもうまく立ち回ったライバルたちを相手に豪快に差し切ってほしいと思うファンも多いのではないでしょうか。

タスティエーラ - 父サトノクラウンの借りを返せるか。

皐月賞と同じコースの弥生賞を勝ったタスティエーラにも期待が集まります。
2戦目で挑んだ共同通信杯ではキャリアの若さを見せての4着。道中は思ったほど位置が取れず、直線で外を回しましたが伸び切れませんでした。その反省を生かして弥生賞では早めに動いて長くいい脚を使って差し切っています。馬の個性を生かした松山騎手の好判断と言えるでしょう。

直線での切れが求められる東京よりも、持続的に脚を使える中山の方が合っている印象です。
皐月賞では14番枠に入りましたが、外から長くいい脚を使える位置につけられそうという点ではプラスではないでしょうか。父サトノクラウンは同じ堀厩舎所属で、2015年の弥生賞を勝ち、1番人気で皐月賞を迎えましたが、出遅れが響いて6着と残念な結果になりました。息子であるタスティエーラも堀厩舎で上位人気で皐月賞を迎えることになりそうですので勝利を期待したいファンも多いかもしれません。

タッチウッド - 不器用な素質馬×武幸四郎厩舎×武豊騎手。混戦を制すのは華のある人馬か。

個人的には前哨戦で最もハイレベルなレースが共同通信杯だと書きましたが、その共同通信杯で一番強いレースをしたのがタッチウッドです。
出遅れて後方からの競馬になったものの、向正面で位置を上げていき3コーナーでは先頭に。直線の長い東京競馬場では、レースの前半から中盤にかけては脚をためるのがセオリーです。ましてやキャリアの浅い3歳馬ですから、我慢させることを教えるためにもレースの序盤はスローペースで折り合うのがベターですが、そこでやや折り合いを欠いて位置を上げてしまったタッチウッド。普通なら直線で失速するものですが、粘りに粘っての2着でした。

勝ったファントムシーフが2番手からスムーズな競馬をしたのと対照的に、無茶苦茶な競馬で実力馬たちを抑えての2着ですから素質の高さは明らかです。皐月賞ではスムーズな競馬ができれば、と思うのがファンの心情でしょう。今回は武豊騎手を迎えての一戦で、武幸四郎厩舎の馬に武豊騎手が騎乗という華のある組み合わせになりました。馬の力を出し切れば能力的に互角以上に戦える同馬。こういう混戦で『持っている』武豊騎手に期待するファンも多いのではないでしょうか。

シャザーン - 強敵とは未対戦でもまだ底を見せていない。友道厩舎のスタミナ馬がまた1頭上位を狙う。

改めてメンバーを見渡すと先行馬が多い今年の皐月賞。
グラニットが徹底的に逃げていくので、水分を含んだ馬場であってもかなりのHペースになる可能性が高いと言えます。レースの中盤での息の入らない持続的な流れになって、最後は各馬の脚が止まってしまうようなスタミナ比べの消耗戦になる可能性があるのではないでしょうか。

スタミナ豊富な馬を育てることに定評のある友道厩舎所属のシャザーンの大物感と、彼が持つ潜在的なスタミナに期待が集まります。父はロードカナロアではありますが、母が16年のエリザベス女王杯を勝ったクイーンズリングの血統。初戦は2着でしたが、2戦目の中京芝2000Mの未勝利戦を勝利しています。この時は重馬場でしたが、直線で外を回して勝利。3戦目のすみれSはスタートで躓いて出遅れながらも、上り3ハロン33秒1の切れを見せての勝利でした。

まだ強敵と戦っていないので、このメンバー相手に力関係がどうか、という面がありますが、速い上りを出せる脚を持ち、重馬場にも対応できる点が魅力です。馬場が徐々に乾いて外差し馬場になれば条件的にピッタリの馬と言えるのではないでしょうか。

ショウナンバシット - 馬場適性を味方につけて。

土曜中山芝の7,9Rでは差し・追い込みの競馬、血統的にディープインパクト系、近走で2000Mより長い距離を使っている馬が好走する傾向でした。その条件を満たしているのがショウナンバシットです。

新馬戦では今回出走するべラジオオペラに敗れてしまいましたが、2戦目で初勝利。3戦目は中京の芝2200Mのレースで重馬場でしたが勝利をあげています。

続くすみれSではシャザーンの2着に敗れてしまいますが、前走の若葉Sでは逃げてしぶとかった2着馬を交わしての勝利。やや重馬場でしたので改めて渋った馬場の適性を示しましたし、しぶとい先行馬を交わしたのは今回に向けて良い練習になったと言えます。

注目度は低いですが、5戦して3勝、2着1回、3着1回とまだ馬券圏内を外していないですし、騎乗するデムーロ騎手は土曜中山7Rで1頭離れた最後方から差し切って勝っているので土曜の中山の馬場を掴んでいると言っていいでしょう。レース間隔が詰まっているのがネックですが、土曜の中山のレースの傾向からはこの馬をピックアップします。

主役がいないまま始まってしまった3歳牡馬クラシック路線。どの馬が来てもおかしくないメンバーですし、開催最終日で水分を含んだ馬場と非常に難解な皐月賞になりそうです。

展開的にもグラニットが何が何でもの意識で逃げていくでしょうし、他の先行馬がついていく可能性が高いことからHペースが濃厚です。タフな馬場と展開で最後はどうなるのか全く想像できません。

10回レースをすれば10回とも結果が違ってしまうようなレースを楽しみたいですし、インパクトのある結果を期待したいですね。この記事が皆さんの参考になれば幸いです。

写真:水面、宮内宮、あぼかど、かぼす、shin 1

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