天皇賞ってどんなレース?
数あるG1レースの中でも、長い歴史と伝統を持つ競走です。
現在は賞金のほか、優勝賞品として皇室から楯が下賜されます。
天皇賞の歴史は1905年に横浜の日本レースクラブが明治天皇から『菊花御紋付銀製花盛器』を下賜され創設した『エンペラーズカップ』を開催したところから始まります。
翌年には東京競馬倶楽部にも御賞典が下賜され、その後、7 つの競馬倶楽部で『帝室御賞典競走』が実施されました。
1937年に各競馬倶楽部が統合されて日本競馬会(現在の日本中央競馬会・JRA)が誕生したのを機に、『帝室御賞典競走』は春が阪神、秋が東京と、年2回東西で実施されることとなりました。同年の秋の帝室御賞典競走をJRAは天皇賞の第1回としています。
1947年春に『平和賞』の名で復活。同年秋から現在の『天皇賞』に改称され、春は京都、秋は東京で実施されることとなりました。1984年のグレード制導入でG1に格付けされ、同年以降の天皇賞・秋の距離が芝3200mから芝2000mへと距離が短縮されました。
今年の見どころ
アーモンドアイが前人未到の芝G1レース8勝目を成し遂げるのか?
現在、芝のG1レースで7勝を挙げているアーモンドアイ(牝5 美浦・国枝厩舎)。
ここで勝てば、キタサンブラック・シンボリルドルフらを抜き、単独最多となる芝G1レース8勝目という快挙を成し遂げます。
ドバイターフが新型コロナウイルスのためレース自体が中止になり、帰国して初戦を迎えた5月のヴィクトリアマイル。好スタートを切ると、道中は4番手を追走。直線半ばで持ったまま先頭に立つと、ゴール前には騎乗したクリストフ・ルメール騎手が後ろを振り返る余裕がありました。それでいて、ラスト600mのタイムが32.9秒とメンバーで最速でした(2番目に速かったのはノームコアら3頭の33.2秒)。
続く安田記念では単勝1.3倍と圧倒的な支持を得ましたが、ヴィクトリアマイルとは違い、スタートでやや出遅れ。良馬場発表とはいい、土曜夜から日曜未明にかけての降雨の影響で馬場はやや緩めのコンディションの中、後方11番手で競馬を進める競馬となりました。直線では伸びましたが、勝ったグランアレグリアとは0.4秒(2馬身1/2)差の2着に敗れました。敗因は色々とあるでしょうが、初めての中2週での競馬に馬も戸惑っていたのではないでしょうか。
10月2日に美浦トレーニングセンターに戻ってからは、2週前調教では秋華賞2着馬のマジックキャッスルと、1週前には菊花賞3着馬のサトノフラッグらと調教を重ねてきました。1週前調教ではルメール騎手が駆け付け、アーモンドアイに跨り感触を得ていますから、ここまでは順調に調整過程を踏んでいると考えて良さそうです。
馬主であるシルクレーシングの規約のため、アーモンドアイは来年3月までには引退し繁殖牝馬になります。
12月13日の香港カップまたは香港マイルに予備登録をしているので、アーモンドアイの国内で走る姿は、今回の天皇賞・秋が最後になるかも知れません。
シンボリルドルフやキタサンブラックでさえも越えなかった「芝G1レース8勝」という壁。
天皇賞・秋で、アーモンドアイは快挙を達成するのか?
競馬界の注目が集まります。
アーモンドアイと初対決のクロノジェネシスが世代交代を目指すのか?
今年の宝塚記念と昨年の秋華賞を制し、G1レースを2勝しているクロノジェネシス(牝4 栗東・斉藤崇厩舎)。1歳年上のアーモンドアイとは初めての対決となります。
他にも京都記念を制し、G1の大阪杯では僅差の2着に入るなど牡馬を相手に好走しているクロノジェネシス。
前走の宝塚記念では稍重馬場ながらも、直前に降った雨のため、見た目以上にタフな馬場となりました。そんな中で道中7、8番手を追走すると、3コーナーから4コーナーではまくり気味に進出し、直線は独走状態に。
2着のキセキに1秒(6馬身)差を付ける圧勝を演じました。
ラスト600mのタイムが36.3秒と最速(2番手はキセキの37.2秒)のタイムを出すなど、圧巻のパフォーマンスに驚いた方も多かったでしょう。
今回、アーモンドアイが最も得意とする東京競馬場でのレースとなるため、クロノジェネシスの東京コース適性が問われるところです。しかし、クロノジェネシスも東京コース実績はあります。デビュー2戦目のアイビーステークス(芝1800m)とクイーンカップ(芝1600m)を制覇。芝2400mのオークスでもラヴズオンリーユーから0.4秒差の3着に入る健闘を見せました。特にアイビーステークスで見せた瞬発力は秀逸で、ラスト600mのタイムが32.5秒と2歳馬のレースとしては驚異的な瞬発力を披露しました。
10月1日に栗東トレーニングセンターに戻って以降は順調に調整を進めています。1週前調教では北村友一騎手が跨り、こちらも順調そう。
サンデーサイレンス、キングカメハメハの血を持つ種牡馬が台頭する中、クロノジェネシスや現2歳世代ではサウジアラビアロイヤルカップを制したステラヴェローチェを送り出し、存在感を増してきた父のバゴ。バゴ自身は凱旋門賞を2分25秒で制するなどスピードとパワーを秘めた馬でした。
今の東京競馬場は雨の影響もあってか、スピードよりもパワーが重視します。打倒アーモンドアイに向けて現在の東京競馬場の馬場は、クロノジェネシスにとって有利になるかもしれません。
フィエールマンがキタサンブラック以来の天皇賞春秋連覇を達成するのか?
天皇賞・春を昨年、今年と制したフィエールマン(牡5 美浦・手塚厩舎)。
2017年のキタサンブラック以来の天皇賞春秋連覇を目指し出走します。
秋初戦を予定していたオールカマーは発熱のため回避。天皇賞・春以来、半年ぶりのレースとなります。ただ、この馬の場合は、休み休みで使っていて結果を残している馬なので、不安は少ないはずです。
芝3200mの天皇賞・春を連覇、芝3000mの菊花賞を制するなど長距離で結果を残している馬なので、芝2000mの距離適性を疑う声も聞こえます。ただ、芝1800m戦の新馬戦、山藤賞(旧500万下・現1勝クラス)を制し、同距離のラジオNIKKEI賞でも0.1秒差の2着に入るなど実績もありますから、芝2000mの距離短縮を苦にする馬ではないと思います。
3着に敗れた札幌記念(芝2000m)でも、直線が短い札幌で追い込み、ラスト600mのタイムでは最高のタイムを披露しました。
ルメール騎手がアーモンドアイに騎乗するため、今回は福永祐一騎手が騎乗します。
大舞台での乗り替わりとなりますが、初騎乗のルメール騎手で菊花賞を制し、凱旋門賞帰りの有馬記念では池添謙一騎手が跨り見せ場十分の4着と、乗り替わりで結果を残しています。
新馬戦以来の東京競馬場のレースとなりますが、不安はないでしょう。
切れ味を得意とする馬が多いとされるディープインパクトの子供が多い中、同じディープインパクトの子供のフィエールマンはじわじわと加速するタイプです。直線が約400mある京都競馬場・外回りの天皇賞・春や菊花賞で結果を出しているフィエールマンにとって、更に直線が長い(約530m)東京競馬場では歓迎だと思います。
キセキが「奇跡」の復活劇を演じるのか? その他の馬にも要注目!
一昨年の天皇賞・秋で3着に入ったキセキ(牡6 栗東・角居厩舎)。
前走の京都大賞典では若干スタートで出遅れる競馬を見せましたが、後方から徐々に進出する競馬を見せ2着入線。今度は乗り慣れている武豊騎手騎乗ですから、一変する可能性を秘めています。
ここ最近は芝2200m以上のレースを走っていましたが、昨年の大阪杯で2着など芝2000mでは4戦して2勝2着1回、3着1回と安定しています。天皇賞・秋を6勝挙げている武豊騎手とのコンビで、面白い存在になりそうです。
その他にも昨年の香港カップを制したウインブライド(牡6 美浦・畠山厩舎)。昨年の天皇賞・秋で2着に入った2017年の朝日杯フューチュリティステークス馬ダノンプレミアム(牡5 栗東・中内田厩舎)。一昨年の有馬記念を制したブラストワンピース(牡6 美浦・大竹厩舎)と、G1ホースが7頭も集まる豪華なメンバー構成となりました。また、G1レース未勝利馬ながらも、ポテンシャルはG1ホース級のダノンキングリー(牡4 美浦・萩原厩舎)も、悲願のG1レース制覇を目指して出走を予定しています。