[フィリーズレビュー]春のトライアルからG1の花を咲かせた名牝たちを振り返る。

中央競馬では春のクラシックに向けトライアルのチューリップ賞・弥生賞が行われ、いよいよ春の訪れを感じます。これまでに重賞や2歳G1を勝利して「トライアル仕上げ」で挑む人馬もいれば、優先出走権を獲得するためにトライアルに全力投球する陣営もいます。

今回は春のクラシックに向けたトライアルレースの中から牝馬クラシック桜花賞への登竜門、フィリーズレビューの活躍馬を振り返りましょう。

フィリーズレビューという名称となったのは2001年ですが、それ以前の報知杯4歳牝馬特別の時代も含め、活躍馬を多数輩出しているレースです。今回はフィリーズレビューに改称される以前の馬も含めて3頭をチョイスしてご紹介致します。

1986年 メジロラモーヌ「魔性の青鹿毛」完全3冠達成の第一歩。

1986年、史上初の牝馬三冠を達成するメジロラモーヌが、桜花賞の前哨戦として阪神4歳牝馬特別に出走しました。現在ではアーモンドアイやデアリングタクトのように、トライアルレースを使わない牝馬3冠馬もいますが、メジロラモーヌは現時点でただ一頭のトライアル全勝「完全3冠」牝馬です(2022年現在)。

メジロラモーヌは3歳時点で4戦3勝、テレビ東京賞3歳牝馬ステークス(現在は年明け1月のフェアリーステークスですが、当時は12月開催)を勝って最優秀3歳牝馬に選出され、クラシックシーズンを迎えます。

メジロラモーヌは引退後に繁殖入りし、子どもの代では活躍馬が出なかったものの、代を重ねて活躍馬が出現。第2仔メジロリベーラの孫に交流G1川崎記念を勝利したフィールドルージュ、第11仔メジロルバートの孫に海外G1香港ヴァーズを2度制したグローリーヴェイズがいます。

フィールドルージュは土佐黒潮牧場で穏やかな余生を過ごしていて、牧場で大事にされている様子をTwitterで見ることが出来ます。

メジロルバートはメジロラモーヌとメジロライアンの産駒なので、メジロ牧場が無くなりレイクヴィラファームになった今でも、その血を引き継ぐ可能性に懸けたいところです。

1997年 キョウエイマーチ 芝ダート問わぬ快速牝馬の系譜。

史上屈指の快速牝馬との呼び声高いキョウエイマーチは、97年の阪神4歳牝馬特別まで4戦3勝、主戦は「牝馬の松永」で知られる松永幹夫騎手でした。現在はレッドディザイアやラッキーライラックなど牝馬の活躍馬を輩出する調教師としてもおなじみですね。 

キョウエイマーチはここを制した勢いのまま桜花賞も勝利しますが、続くオークスでは11着と惨敗。しかしその後も、秋華賞やマイルCS、南部杯などで2着になるなど、多方面での活躍を収めました。

キョウエイマーチは4頭の産駒を残して2007年に亡くなり、唯一の牝駒であったヴィートマルシェがキョウエイマーチの血を繋ぐ唯一の繁殖牝馬となります。しかしその血は四半世紀の時を経てなお活躍しています。
ヴィートマルシェの2番仔サンブルエミューズは、産駒ナミュールがチューリップ賞を快勝するなど大活躍。

更に2016年に産まれた6番仔マルシュロレーヌは、2021年に牝馬交流重賞を3勝の実績をひっさげて渡米し、日本馬初のアメリカダートG1ブリーダーズカップディスタフ制覇という大偉業を達成。2022年のサウジカップをもって引退、繁殖入りを果たしました。

2007年 アストンマーチャン その名のごとく快速飛ばしG1制覇。

ウマ娘への登場で再び脚光を集めるアストンマーチャン。こちらは、イギリスのスポーツカーブランドアストンマーチンと、戸佐眞弓オーナーの愛称「まーちゃん」から名付けられました。
愛らしい顔立ちと、グラマラスなボディー、ピッチ走法による健気な走りでファンの多い名馬ですね。

名は体を表すという言葉がありますが、アストンマーチャンはピッチの早い走法を武器に、未勝利戦、小倉2歳ステークス、ファンタジーステークスを連勝。ファンタジーステークスの勝ち時計1.20.3はメイケイエールに破られるまで14年間レースレコードでした。そして勢いそのままに1番人気で阪神ジュベナイルフィリーズに挑みます。

アストンマーチャンは新設された阪神外回りコースを5番手のインで回り、直線では最内から抜け出し先頭へ。直線でピッチが速くなり、このまま押し切るか──と思いきや、外からダイナミックなフォームで駆けてくる馬がいました。ゴール前クビ差だけ差し切られたその馬の名前はウオッカ。これが後の日本ダービー馬との初対決でした。

3歳クラシックシーズン、チューリップ賞はウオッカとダイワスカーレットの名勝負で決着し、この2頭に挑むべくアストンマーチャンはフィリーズレビューへ向かい、快勝。桜花賞で敗れるとスプリント路線に舵を切り、秋にはスプリンターズSを制覇しました。

アストンマーチャンは現役中に亡くなっているので、直接その血を繋ぐ馬こそいませんが、全妹のジャジャマーチャンの産駒には阪急杯で最内から差して2着に入ったトゥラヴェスーラがいます。これからも活躍馬が出てきそうな血統です。

※メジロラモーヌとキョウエイマーチの章では旧馬齢表記、アストンマーチャンの章では現在の馬齢表記でまとめています。

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