黒・桃格子・桃袖。
その勝負服は、強烈な突風をターフにもたらします。
ローマンエンパイア。
サウンドオブハート。
そして、ファンディーナ。
──そう、ターファイトクラブです。
近年の一口馬主クラブ所属馬の台頭は、「広尾TC編」で書いておりますのでここでは割愛しますが、いわゆるノーザン系以外からも十分に大物がでる可能性はあります。
ターファイトクラブと言えば、特にファンディーナの皐月賞挑戦で思い出に残っている方も多いのではないでしょうか?
POGでは隠し玉やバラエティ色も重要なファクターとなってきます。ここでご紹介した馬が、皆さんのPOG戦略に少しでも良い影響を与えられたら幸いです。
では、早速いってみましょう。
①ドリームオブジェニー2017
登録馬名レヴドゥギャルソン
牡馬 2017年3月24日生まれ
父:ハーツクライ
母:ドリームオブジェニー(9歳時出産・4連産目)
母父:Pivotal
厩舎:栗東・高野友和厩舎
生産提供:谷川牧場
主な兄弟:
2013 ナムラシングン(牡・父ヴィクトワールピサ)POG期間に2勝。皐月賞7着。
2014 ファンディーナ(牝・父ディープインパクト)POG期間に3勝。フラワーカップ勝ち。皐月賞1番人気で7着。
ターファイトクラブの看板馬といえば、やはりこの血統になります。
これは隠し玉にはならないような超メジャー血統でしょう。
馬体自体はハーツクライ産駒にしては筋肉質なタイプに映ります、色々な適性を試すことが可能なタイプなのではないでしょうか?
いかにもハーツクライ産駒らしい馬体だった全兄グランソードとは違うタイプになった印象です。
やはりドリームオブジェニーの牡馬ですので会員のみならず、期待は高い一頭だと思います。
2月20日の坂路の調教では、14.2-13.0-13.6を記録するなど、育成も順調です。
この時期にこの調教が出来ていますので、ここから脚を溜めることを教えるなど、理想的な状況になっているのではないでしょうか。
指名する場合、ホームページの近況でも発表されていますが、すでに522kgを超える大型馬である事と砂のぼりでの一頓挫があった事を念頭の上で指名する事をお勧めいたします。
ただやはりターファイトの看板血統馬。さらに血統の価値を高めるような活躍を期待しています。
②チェルビム2017
登録馬名チェルビックヒム
牝馬 2017年3月18日生まれ
父:ロードカナロア
母:チェルビム(16歳時出産・空胎明け)
母父:サンデーサイレンス
厩舎:栗東・羽月友彦厩舎
生産提供:奥山牧場
主な兄弟:特になし
7頭中3頭が勝ち上がり。各1勝ずつ。
ターファイトクラブの2019年デビュー世代では、個人的にこの馬に一番期待を寄せています。
私自身が実際に一口出資もしていることもあり、思い入れの強い一頭です。
まずは血統ですが、この組み合わせはアーモンドアイと同じ、父ロードカナロア×母父サンデーサイレンスです。
JRAデビュー馬32頭中13頭が勝ち上がっている配合で、牝馬に絞ると18頭中6頭が勝ち上がっています。
なお勝ち上がり6頭中5頭は総賞金1,000万円以上になっています。
アーモンドアイの大活躍に引っ張られてはいますが、勝ち上がれない馬も多数いるのは確かな事です。
しかし本馬の場合、さらに注目したいのは祖母のカーリーエンジェルでしょう。
祖母カーリーエンジェルは産駒14頭で通算勝利数50勝。
重賞馬オレハマッテルゼ・エガオヲミセテ・フラアンジェリコを輩出し、その中でもオレハマッテルゼはG1高松宮記念の勝ち馬です。
重賞馬の兄弟の他にも7勝馬エノク、さらに4勝馬は4頭と稀代の名繁殖でした。
その兄姉の中でモハメド殿下に購入された母チェルビムは海外で走った後に、ダーレーにて繫養されます。そしてその後、繁殖牝馬セールを経て現在の牧場にやってきています。
ここまで血統背景のわりに目立った活躍馬はだせていませんが、環境が変わりロードカナロアを付けた事で、活躍馬をだしてもなんら不思議のない血統背景を持っています。
また、厩舎に関しては栗東・羽月友彦厩舎。
ターファイトクラブにおいては、クラブの至宝インカンテーションが所属し6頭中3頭が勝ち上がりかつ2勝以上を上げている懇意の厩舎です。
そして提供先の奥山牧場にもご注目を。
最近では約20頭の繁殖牝馬の中からキングハート(牡・G3オーシャンステークス)、ラブカンプー(牡・G1スプリンターズステークス2着)、他にもJRAでの複数勝利馬を何頭も輩出している牧場で、今第注目の生産牧場の1つです。
今までは矢沼ステーブルなどを経由しクラブに提供してきましたが、ターファイトクラブ会員の皆さんが生産牧場に直接足を運んだり交友を深める中で、クラブのために馬を提供してくれるようになったというエピソードもあるとか。
そして、その記念すべき第一号が本馬・チェルビックヒムなのです。
来年にはドゥラメンテの初年度産駒の牡馬を惜しげなくクラブへ提供してくださっている姿からも、その本気度合いが伺えます。
指名する場合のリスクとしては、ホームページの近況でも発表されていますが、OCD(剥離性骨軟骨炎)で内視鏡手術を行っていることがあげられます。
③ナチュラルナイン2017
登録馬名クロンダイク
牝馬 2017年4月18日生まれ
父:エピファネイア
母:ナチュラルナイン(7歳時出産・空胎明け)
母父:ダイワメジャー
厩舎:美浦・田村康仁厩舎
生産提供:丸幸小林牧場
主な兄弟:特になし
半兄ナチュラルシンジュ(牡・父オーケンブルースリ)はJRAで6戦0勝掲示板1回を経て、大井で2勝し掲示板に何度ものっています。パッと見た時にダイワメジャー産駒に見間違えたほど、母父の影響が色濃く出た牝馬です。
父は新種牡馬のエピファネイア。新種牡馬の取捨選択はもちろん、その年度のPOG成績にも影響を与えます。
エピファネイアの場合、2014年のジャパンカップの印象が強いですが、POG期間でも3勝をあげ、皐月賞とダービーをそれぞれ2着。
母のシーザリオ産駒は2歳時からしっかりと走れる産駒が多いですから、エピファネイア産駒もPOG期間からしっかりと走れる産駒がでることが期待できるでしょう。
また、本馬の魅力の一つは血統内のクロスにもあります。
サンデーサイレンスの3×4
シアトルスルーの4×5
ノーザンダンサーの5×5×5
ヘイルトゥリーズンの5×5
ゲーム的な表現をするならば、サンデーサイレンスの「奇跡の血量」が成立しています。
また、ノーザンダンサーの重圧な血に、シアトルスルーのスピード感溢れる血という組み合わせも、魅力のひとつです。
田村厩舎は年間30勝前後の成績をあげクラブ馬への理解も深い厩舎ですし、生産者の丸幸小林牧場はデビューしたターファイト提供馬8頭中3頭が勝ち上がる成績を残しています。
馬体は先にも書きましたように、ダイワメジャーの色が強く出ていますが、走らせてみると、力強くパワーのある走りをする事から、父エピファネイアの血もしっかりと受け継いでいるようです。
つなぎの形を見ると個人的にはダートもこなせそうに見えますので、POG期間中に出走回数を稼ぎつつ勝利を目指すには面白い1頭だと思っています。
④ボロンベルラルーン2017
登録馬名アウェイクニング
牝馬 2017年2月4日生まれ
父:キングヘイロー
母:ボロンベルラルーン(7歳時出産・初仔)
母父:スペシャルウィーク
厩舎:栗東・佐々木晶三厩舎
生産提供:三石川上牧場
今年のPOGにてターファイトの「隠し玉」はこの馬だと思っています。
はっきりと「短距離でただひたすらに前へ前へ」という意図がある配合という印象です。
父キングヘイローと母父フォーティーナイナー系という配合ですと、同じターファイト出身の韋駄天・フレイムヘイローがいます。
母のボロンベルラルーンはカワカミプリンセスの半妹。
カワカミプリンセスの父はキングヘイロー。
何とも複雑ですが、血のロマンも感じる配合ですね。
なにより本馬の魅力は2月頭の段階で坂路15-15を記録している程の仕上がりの早さがあげられます。
初仔でサイズは若干小さいですが、当歳時募集開始から怪我もなくしっかり順調そのもので、すでにこの仕上がりっぷりには、短距離路線での隠し玉にはもってこいだと思っています。
管理調教師の佐々木晶三調教師も20勝前後で安定した成績を残してらっしゃいますし、本馬を視察した際もやんちゃながらスピードある走りにご満足だったようですので、ぜひ新馬戦開始のタイミングから、開幕ダッシュを期待したいと思います。
⑤キーポケット2017
登録馬名ジャストポケット
牝馬 2017年2月4日生まれ
父:ジャスタウェイ
母:キーポケット(13歳時出産・3連産目)
母父:デヒア
厩舎:栗東・松下武士厩舎
生産提供:村下農場
主な兄弟:
キーナンバー(2013年・牡デュランダル)25戦4勝で現在1,600万下。
初勝利こそ名古屋でしたが、3歳5月で500万下、6月に1,000万下を連勝した快速馬です。
はっきりと適性距離が1,200mまでですので母同様短距離適性が伺えます。
ターファイトでの2019年デビュー一番乗りは、もしかするとこの馬かもしれません。
父ジャスタウェイは初年度産駒から仕上がりの良さが目立ち、順調な滑り出しを果たしたと思っています。
まだまだ傾向はつかめませんが、マイル~2,000mまでが現状産駒としては良いように感じます。
母のキーポケットは、地方競馬を中心に38戦17勝した快速馬。そのスピードを活かし、地方競馬のグランダム・ジャパンの第一回古馬部門を優勝しています。
グランダム・ジャパンとは地方競馬の牝馬限定のポイントシリーズで、JRAファンの方には牝馬限定のサマーシリーズとお伝えすると分かりやすいのかもしれません。
その栄えある第一回古馬部門チャンピオンの母は初年度産駒にデュランダルを迎えキーナンバーを輩出し、そのスピード能力が確かだった事を証明しました。
今回そこに父ジャスタウェイを迎えた事で、期待は高まるばかりです。
現状は森本スティーブルにて調整をされ、BTCにて乗り運動をこなしています。
2月の間に坂路にて馬なりで14.5-14.1を記録しているように仕上がりも順調です。
管理する松下武士調教師は2015年開業の新鋭の調教師で、見学にいらした際には「良い馬」というコメントを残したことも心強いです。
桜花賞を意識したローテーションで堂々と戦って欲しい一頭になります。
さて、ここまで5頭ご紹介いたしましたが、いかがでしたでしょうか?
ターファイトクラブはノーザン系社台系クラブと比べ、勝ち上がり率は決して高くありません。
過去の実績順でお調べになれば分かる事ですが、直近5年間の勝ち上がり率は全21一口クラブにて最下位という厳しい数字です。
しかし、2018-19年のクラシックロードにおきましては、勝ち上がり率25.0%(サンデーTC33.7%、社台TC26.1%)の9位と健闘し、1頭当たりの獲得賞金平均は一口クラブ21クラブ中で全体の第5位の数字まで上昇してきています。
今、ターファイトは確実に変革期の中にいます。
2019年の募集馬22頭の中にも、確実に原石はあると思っています。
過去のターファイトクラブと侮らず、ぜひ全馬に目を通して見てください。
皆さんのPOG戦略にお役立て出来れば幸いです。
※情報は2019年4月現在のものを元にしています。
写真:ターファイトクラブ