新馬戦回顧、6月19日の新馬戦を取り上げます。今週と来週は東京、阪神、札幌の3場開催です。
レースプログラムを見ると、なんと早くも2歳未勝利戦も始まっています。この連載を始めてから気づく発見もまだまだありそうです。

東京5R 芝1600m アライバル 美浦:栗田厩舎

東京マイルの新馬戦を制したのはハービンジャー産駒のアライバルでした。
母はクルミナルなので、今年の牝馬クラシックで走っているククナの半弟ですね。雨が降って少し力のいる馬場を力強く差しての勝利でした。

レース概況

各馬大きく出遅れることは無くスタート。

プルパレイが先頭に立ち、外枠のカランセ、マブセレナード、ナカガワフェイスの3頭が追いかけます。その1馬身後ろにビップアクア、アライバル、レヴォルトが続き、ここまでが先頭から4馬身の位置取りになります。
シンボリックレルム、イエローブーケ、グランドラインがさらに1馬身後ろ、後方からはゼファラス、ホウオウパレード、シュシュエラブル、エルパソがいて、マイシンフォニーは後方2番手で末脚を溜めています。殿ではシンボリックレルムが既に追い出されていましたが、大きく離された馬はいませんでした。

各馬一団で4コーナーから直線に。マカランセがマブセレナードと接触して外にはじかれてしまい、アライバルはさらに外に進路を切り替えて追い出し始めます。
逃げるプルパレイに何とか追いつこうとマブセレナードが何度も仕掛けますが、残り200mで脚色一杯に。代わってアライバルが差を詰めており、その外からは後方で末脚を溜めていたホウオウパレードが差してきます。

最後はアライバルが2馬身差をつけて勝利、逃げたプルパレイはアライバルに交わされたものの、ストライドの大きな走りで先行馬群から抜け出して2着を確保、ホウオウパレードはその1馬身後ろまで差を詰めての3着でした。

勝馬・注目馬短評

勝馬:アライバル

ハービンジャー産駒らしい立派な胴回りは、直線の映像を見るとわかりやすいですね。他の馬たちよりも一回り太く、この胴回りの広さが持続力の源になるのがハービンジャー産駒の特徴です。

馬群の中で少し慌てていましたが、ルメール騎手が落ち着かせて直線で外に出してあげると最後は伸びやかに駆けており、スムーズな競馬が出来るかどうかが課題となりそうです。また、開催後半のやや重馬場も味方した印象で、良馬場の瞬発力勝負では分が悪いかもしれません。

半姉ククナは後方でしっかり溜めて一気に追い込んでくるタイプですが、アライバルは後続を凌ぐロングスパート勝負が向いているのではないでしょうか。

注目馬:マイシンフォニー

半兄はマイラプソディ、鞍上は兄と同じく武豊騎手でデビューしました。
スタートは五分に出たもののやや遅めで、無理に追わずに直線勝負を選択しましたが、残念ながら前が開かずに追い遅れてしまいました。外を回したホウオウパレードとの着差が3/4馬身なだけに、ロスが惜しまれます。

スピードに乗れたのは最後の100mぐらいで、今回は全力を出し切れなかったように見えます。
それでも上り最速の末脚で4着まで来たことを考えれば、末脚をフルに発揮できたときに勝ち上がることが出来るでしょう。

折り合いに心配がなく後方で我慢できるので、距離は伸ばしても問題なさそうです。

阪神5R ダ1200m フェズカズマ 栗東:安田隆行厩舎

阪神の開幕戦はこの世代最初のダートの新馬戦でした。
勝ったフェズカズマはドレフォンの産駒で、芝では既にハイアムズビーチが勝っています。
ドレフォン産駒の適性はまだ未知数ですが、芝ダート幅広く対応できそうですね。

レース概況

ギンノカミカザリが好スタートを決めると、それに続いてスーパーラッキー、メズメライザー、ケイティソルジャーが続いて4頭でレースを引っ張ります。
その2馬身後ろにキモンエクスプレス、ハロースクロール、マルモリスペシャル、スーパーラッキーが続く展開に。残り800m付近でフェズカズマが中段から追いついてこの集団の中でレースを進めます。

外からウォームライトが追い出し、アカノストロング、マイネルシュラークがその後ろにポジション取り。インで岩田騎手がおさえていたヒデノレインボーは末脚を発揮するため大外に導かれます。その後ろにレオインテンシブ、シュガーコルト、デルマオベロン、シルヴァンウルフの順で追走。

直線に入ったところで逃げていたギンノカミカザリがばてたので、ケイティソルジャーが抜け出して先頭に立ちます。その真後ろで待機していたフェズカズマが川田騎手に追い出され、内からはマルモリスペシャルも上がってきました。

既に鞭が入っているケイティソルジャーに対してフェズカズマはノーステッキで外から交わすと、外から追ってきたメズメライザーに並ばれることなく1着でゴール。最内でロスなく運んだマルモリスペシャルが3着、差が無く中段から伸びて来たハロースクロールが4着、先に抜けていたケイティソルジャーと大外から追い込んだヒデノレインボーが5着争いでした。

勝馬・注目馬短評

勝馬:フェズカズマ

ゴールまで余裕のある走りで人気に応えての勝利でした。母系にはクラフティワイフの名前があり、カンパニー、トーセンジョーダン、トーセンスターダムなど古馬になっても長く活躍した馬たちの名前があります。

今回はスタート直後に接触があったり、コーナーで進路が狭くなったりと決して楽なレースではありませんでしたが、最後までやめずに走っていた姿を見ると、精神力も強いようです。

川田騎手が序盤から追って位置を上げも折り合いに問題が無く、距離は伸ばしても対応できそうです。

注目馬:メズメライザー

父ディスクリートキャットが来日してから2年目の産駒です。母父パイロ、おばには全日本2歳優駿勝馬サマリーズがいますので、ダート向きの血が濃い馬ですね。

スタートをきちんと出てからは逃げ馬に付き合わず番手の競馬を選択し、最後の直線でも余裕をもって仕掛けることが出来ましたが、先に抜けていたフェズカズマが1枚上手でした。

福永騎手らしいレースを教えながらの競馬でしたが、終始手が動いて促したり誘導しながらのレースでしたので、今回は少し忙しかったかもしれません。掛かることは無く最後も勝った馬が強かったゆえの敗戦なので、次走もそつなくこなせれば勝ち上がれるでしょう。距離は伸ばしても対応できそうです。

札幌5R 芝1200m(牝) ポメランチェ 栗東:牧田厩舎

札幌競馬場の短距離戦はとにかく逃げ先行馬がそのまま押し切るレースが続いていますね。
今回の新馬戦もポメランチェが逃げ切り、鞍上は同じコースの函館スプリントステークス(今年は札幌開催)も逃げ切った藤岡祐介騎手、先週のトーセンサンダーのレコードタイムをさらに更新する1分7秒9!

レース概況

ばらついたスタートの中からダッシュ良くポメランチェが先頭に。
ポメランチェを追いかけてニシノタマユラ、ユメコイ、ナムラリコリス、コスモツカサが先行集団を形成しますが、その間を縫うようにフリートオブフットが2番手に位置を上げます。

先行集団の後ろからはロジマギーゴーが押されながら進み、これを追う形でワンエルメス、ミウィが中段で続きます。ここから後方まで7~8馬身空いて3コーナーへ。
ポメランチェがコーナーに入るまでにスピードを緩めなかったことで前半600mは33.6秒を計測、後続の馬たちはポメランチェを捉えるべくコーナー途中から仕掛け始めます。

しかし、コーナーに入ってもポメランチェのスピードは緩まず、コーナーの出口でスピードを上げて後続を引き離します。2番手で追いかけていたフリートオブフットが一杯になったので、外からナムラリコリスが交わして追いかけますが、ポメランチェの影さえも踏むことができませんでした。

フリートオブフットは後続の末脚をしのいで3着、4着には中段から末脚を使ったロジマギーゴー、5着はロジマギーゴ―の後ろから上り最速で差してきたミウィでしたが、先頭のポメランチェはノーステッキだっただけに、ここでは力及ばず完敗でした。

勝馬・注目馬短評

勝馬:ポメランチェ

場体重392キロの小柄な馬体に、短いしっぽが気になる馬ですが、すばしっこさは特筆するべき存在でしょう。
決着タイム1分7秒9は先週の函館スプリントステークスのタイム1分7秒6とわずかに0.3秒しか変わらず、2歳新馬戦としては破格のタイムです。しかも最後は軽く促すだけでノーステッキでゴールする余裕がありました。

ポメランチェはチェコ語で「みかん」の意味だそうで、母オレンジティアラ、祖母オレンジブロッサムから続く馬名です。オレンジブロッサムの全姉は4歳牝馬特別の勝馬オレンジピール、3/4同じ血の半姉は札幌3歳ステークスを勝ったメローフルーツがいます。
母オレンジティアラも小倉2歳ステークス3着の実績があるので血統は良いのですが、先述の通り小柄な馬体であることや、きょうだいが勝てていないことから、社台RHの2次募集でも埋まらず最後まで出資枠が残っていたそうです。

小柄であるがゆえにコーナリングも巧く、脚の回転が速い走りを可能にしているので、この持ちタイムで次走も走れれば連勝の可能性はもちろんのこと、距離を伸ばして走れれば桜花賞まで期待できる存在になりそうです。

注目馬:フリートオブフット

スタート時点でポメランチェと2馬身差、そこから果敢に追いかけて2番手で進めて最後も粘って3着でした。この馬のゴールタイム1分9秒0であれば、先週の新馬戦で僅差の勝負になる時計ですが、今回は勝馬が7馬身先にいました。今日のレースの敗因は「相手が悪かった」ことに尽きると思います。

父キンシャサノキセキ、母はCBC賞勝馬のシーイズトウショウなので、今後もこの距離で走ることになるでしょう。攻める競馬の結果外からナムラリコリスに交わされたとはいえ、鞍上の泉谷騎手は減量で2キロ軽かったので、それ以外の後続に追いつかれなかったことを評価したいです。

札幌6R ダ1000m アーリーレッグ 美浦:伊藤圭三厩舎

札幌は6Rも新馬戦、ダートの1000m戦に8頭の少頭数で行われました。
札幌ダート1000mコースはスタートしてすぐにコーナーに入り、最後の直線は264.3mしかありません。
勝ったアーリーレッグはコーナーを出るまでロスなくレースを進めて、粘り切る走りを見せてくれました。

レース概況

ゲート内でよそ見をしていたエムティゲランがやや出遅れた以外はまとまったスタートを切ります。
中でもダッシュのついたアドレマピュスがハナに立ち、押してアーリーレッグが2番手で追いかけます。
ストリッパーズが3番手、出遅れたエムティゲランが追い上げて4番手、タマモベローナが5番手、ニシノフウジンが6番手、ミュージアムピースとアイノビューティーが並んで後方から進めます。

逃げるアドレマピュスにアーリーレッグとエムティゲランが並んで直線の攻防に入ります。
直線でアーリーレッグが仕掛けてエムティゲランを突き放し、勢いよくゴールを目指します。先に脚を使っていたエムティゲランも最後まで差を詰めましたが、先に抜けた分のリードを守ってアーリーレッグが勝利しました。エムティゲランは半馬身差の2着、5番手で末脚を温存していたタマモベローナが最後にアドレマピュスを交わして3着に入りました。

勝馬・注目馬短評

勝馬:アーリーレッグ

五分のスタートから横山武史騎手に追われて2番手に位置取り、直線に入ると軽いアクションで一気に抜け出して見せました。最後はエムティゲランに詰められましたが、一瞬の脚で交わしたリードを守り切ることができました。

マジェスティックウォリアー産駒にはベストウォーリアやエアアルマスなどダート短距離戦の活躍馬を輩出し、アーリーレッグの母ピッチシフターは地方競馬で重賞含めて12勝をあげています。
本馬のきょうだいからはまだ活躍馬が出ていませんので、まずは2勝目を目指してのレースになるでしょう。

注目馬:エムティゲラン

父バンブーエールはマイナー種牡馬ですが、産駒には昨年の大沼Sを勝ってオープン勝ちをおさめたダンツゴウユウや、佐賀競馬で牡馬相手でも力負けしないパワーを武器に佐賀三冠を圧勝した女傑スーパージンガを世に送り出しました。

ゲート内で左右を見ている間に扉が開いてしまい、やや出遅れ気味のスタートになりました。道中も頭がコーナー側に寄った状態で長く走っていて、まだまだ荒削りな印象です。
それでも、完歩が広く推進力のある走りで一完歩ごとに差を詰めており、レース慣れすればスピード能力で勝ち上がれることでしょう。

最後まで脚が鈍っていないところを見ると距離は1200や1400でも対応できそうです。

総評

19日の新馬戦で勝利した4頭はいずれも母系に活躍馬がいる馬たちでした。
また、ダートの新馬戦が始まったことで、ゴールドアリュール系の馬たちやA.P.Indy系の種牡馬など芝の新馬戦ではあまり見かけない血統の馬たちも見ることになるでしょう。

札幌開催では先週のトーセンサンダーのレコードがわずか1週間で更新されたことに驚きました!
トーセンサンダーとポメランチェの対決、舞台は函館2歳ステークスでしょうか。勝ち馬の激突にも注目です!

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