新馬戦回顧、今週も東京、阪神、札幌の3場開催です。
グランプリが終わると夏競馬に移り、開催も函館、福島、中京に移ります。
今回の3レース、全て1番人気が敗れる結果になりました。前評判以上の走りをした馬たちの今後にご注目ください。
東京5R 芝1800m ジオグリフ 美浦:木村厩舎
ルメール騎手とコンビを組んだ3番人気ジオグリフが勝利しました。
これで、父ドレフォンから1800m戦の勝馬が出ましたことになります。
人気を集めていたのはセレクトセールで1億8千万の値が付いたアスクビクターモアでしたが、こちらは3着まででした。
レース概況
最後にゲートに入ったアスクビクターモアが好スタートを切りますが、その内からプチョヘンザがハナに立ちます。
2コーナーから向こう正面に入ったところで戸崎騎手が控えるようアスクビクターモアに指示を出したところで少し掛かってしまいました。前の2頭の後ろにジオグリフとアグリシュブールが控えて2列目、その後ろに内からニシノカケハシ、フレンドプリンセス、アサヒ、カメハメハタイムの順で3列目、後方にヴァプンアート、ウィンターアゲインの隊列で進みます。
3コーナーに入るあたりで、外を進んでいたアサヒ、カメハメハタイムが位置を上げ、後方にいた馬たちも手が動き始めます。前半1000mが62.9秒のスローペースで進み、最後は直線での末脚比べに。
残り400mでアスクビクターモアが先頭に立ちますが、併せてアサヒが競ってきます。2頭が競り始めたところでルメール騎手がジオグリフに鞭を入れて追撃開始、カメハメハタイムが追いかけますが前の3頭から離されてしまう形に。
残り200mでアスクビクターモアをアサヒが競り落としますが、それを待っていたとばかりに外からジオグリフが一気に差し切って勝利しました。アサヒが1馬身半差2着、アスクビクターモアは競り負けて3着に。
カメハメハタイムは4着でしたが、前の3頭とは5馬身差をつけられてしまいました。
勝馬・注目馬短評
勝馬:ジオグリフ
ドレフォンの初年度産駒は既にハイアムズビーチが芝1400m戦、フェズカズマがダート1200m戦を勝ち上がっていて、ジオグリフは産駒3頭目のJRA勝馬になりました。ドレフォンはダート短距離のG1馬ですが、母アロマティコは芝中距離で走って秋華賞・エリザベス女王杯で3着という実績があります。
ドレフォンが母系を活かすタイプの種牡馬であれば、更に長い距離でも走れる産駒が現れるかもしれません。
また、ここまで勝ち上がった3頭が全てノーザンファーム生産馬なのも見逃せません。
ジオグリフは押すでも引くでもなく好位置で競馬をして、前の2頭を見ながら自分のタイミングで仕掛けての勝利。少し頭の高いフォームが気になりますが、ここは素質をみせつけました。
注目馬:アサヒ
この馬の血統表にはウインドインハーヘアの名前があります。アサヒの母ライクザウインドはディープインパクトの2個上の半姉、日本競馬が誇る名牝系の出身です。ライクザウインドからも、孫世代ではアドマイヤミヤビ、ルフトシュトロームなど活躍馬が出ています。
父カレンブラックヒルはダイワメジャーの後継種牡馬で、キレよりは長くいい脚を使うタイプの種牡馬。
アサヒのレースも外で折り合いつつスローペースと見るや3コーナーの前には位置を取りに行き、アスクビクターモアにプレッシャーをかけて競り落としました。
最後にジオグリフに狙い撃ちされてしましましたが、折り合いに不安なく前の馬を力でねじ伏せることができるので、究極の瞬発力比べにならなければ次走でも強い走りを見せてくれるはずです。
阪神5R 芝1400m タガノフィナーレ 栗東:浅見厩舎
勝ったタガノフィナーレはエピファネイア産駒、母父ハーツクライなので今年の皐月賞を勝ちダービーでも2着に来たエピファネイアと3/4同血統。そして母タガノミューチャンはオークス馬ヌーヴォレコルトと3/4同配合という良血の持ち主。
新冠タガノファームの生産で、「タガノ」の八木オーナーの所有のため、セリなどの前情報が無かったことでレースまで人気にならず、新馬戦は8番人気の逃げ切り勝ちでした。
レース概況
スタートが決まった馬、決まらなかった馬が半々でスタートを切ると、内からニシノデフィレが前に出ますが、少し促されてタガノフィナーレがハナを奪って先頭に立ちます。内のロードマーサが3番手、クリノニーナが4番手あたり、アグリとエクロールが外から位置を上げに行き、その内にはカフジペンタゴン、レタラがポジションを確保。
前半400mを過ぎたあたりでスタートがいまひとつだった馬たちも位置を押し上げに行き、馬群が密集する展開に。その最中、後方から押し上げたキャロルがインによれ、あおりを食らったロードマーサが大きく後退してしまいます。
インコース側のごちゃつきを避けるため、後方から上がっていったキッショウ、ママコチャらは先行馬群の外に進路を取って、いざ直線に。
直線に入ったところではアグリの反応が良く先頭に立とうとしますが、松若騎手に促されてタガノフィナーレが粘り腰を発揮します。残り200m手前で鞭を受けると姿勢を低くして最後の一脚を繰り出し、逃げ切り勝ちを収めました。後方のインで我慢していたドンフランキーが最内強襲で2着、先行策からタガノフィナーレを追いかけたアグリが3着でした。
勝馬・注目馬短評
勝馬:タガノフィナーレ
逃げ先行の競馬が上手い松若騎手に導かれてスローペース逃げに持ち込み、他頭数の新馬戦らしく後方がごった返していたことで、セーフティーリードを保ったまま逃げ切ることが出来ました。
先述の通り、皐月賞馬エフフォーリアと3/4同血統で、ボトムラインにはアンブライドルドやストームキャットの名前もあります。この最近の血統トレンドをしっかり押さえた配合の馬なので、気の早い話ですが繁殖での活躍も期待できそうです。
次走以降はペースが上がった時に対応できるかがポイントでしょう。
同系多数のレース、もしくは後ろから競られたときに応戦できるかが、2勝目に向けた課題とります。
注目馬:ママコチャ
阪神ジュベナイルフィリーズと桜花賞を勝ったソダシの全妹ですが、鹿毛の馬です。偶然かはわかりませんが、白毛は代を重ねると白毛の確率が下がるのか、この世代の白毛馬は府中の新馬戦を勝ったハイアムズビーチしかいません。
大外枠からスタートがいまひとつで後方外目を回らなくてはならず、さらには逃げ馬のペースで終始レースが進んでしまった展開も合わなかったようで、最後に追って上り2位の末脚を繰り出すも8着まででした。
ドンフランキーが上り最速の末脚でインコースを強襲した結果2着でしたので、枠と展開に泣かされた結果と言ってよいでしょう。
毛色を含めどうしてもソダシと比較されてしまう存在ではありますが、次戦で仕切りなおせればそのまま出世街道を駆け上がる可能性もあります。シラユキヒメ一族はダートの活躍馬も多いですが、ママコチャはソダシ同様に今後も芝で走れるでしょう。
札幌5R 芝1200m キングエルメス 栗東:矢作厩舎
8頭立てのレースを勝利したのはキングエルメスでした。矢作厩舎&坂井騎手と、師弟コンビでの新馬勝ちとなります。
母は函館2歳ステークスを勝ったステラリード、3/4同血の半姉は秋華賞4着のパラスアテナです。
広尾レースの勝負服に所縁の血統で、一口1.6万円で2000口募集されていました。
レース概況
外枠のヴォルケニック、キングエルメスが好スタートを切りますが、内から小沢騎手が押して押してカルネアサーダがハナに立ちます。キングエルメスは2番手、ヴォルケニックが3番手に控え、徐々にロータスペトルが追い上げて4番手、インコースにはエルバリオが5番手で控えます。
グランジャンプ、ヒルノショパンが後方で、前の7頭から7~8馬身ほど離れてセイウンプラチナが殿から追走。
3コーナーから4コーナーにかけて最後方のセイウンプラチナが大外からスパートをかけ、先行集団に追いついたところでロータスペトル、エルバリオなど前にいた馬たちも仕掛けます。
内外の各馬が仕掛ける中、キングエルメスは楽な手ごたえのまま直線に向くと、残り200mに入って坂井騎手が追い出します。小沢騎手がカルネアサーダに鞭を入れて応戦しようとしますが、キングエルメスの余力が勝りました。ノーステッキで、2馬身差の快勝です。
逃げたカルネアサーダが2着、内にいたエルバリオが3着、先行策で粘ったヴォルケニックが4着、外から捲ってきたセイウンプラチナは上り2位の末脚でしたが5着まででした。
活躍馬・注目馬短評
勝馬:キングエルメス
スタートの出が良かったこともあり、内から出てきたカルネアサーダを見ながら2番手でレースを進めることが出来ました。
コーナーでの手ごたえも良く、直線に向いて残り200mでカルネアサーダを交わして楽な手ごたえのまま勝利。内外に馬がいても折り合いに問題が無く、操縦性が高そうに見えます。
今回は全力を出さずに勝ってしまったので、次走で好タイムを出している馬たちと当たった時に更に能力が発揮されることでしょう。
注目馬:セイウンプラチナ
ウマ娘のヒットで、セイウン冠号と西山オーナーの勝負服が一段と注目を集めるようになりました。
父ミッキーアイルはディープ産駒の短距離代表で、今年のクラシック戦線をにぎわせたメイケイエールの父でもあります。ディープインパクト系らしい末脚に加えて、短距離戦で活きるスピード、前向きさが武器である一方、メイケイエールのように前向きすぎる性格が難しいこともあります。
スタート後にダッシュがつかず、コーナーに入る前に勝浦騎手に鞭を入れられて捲りに行き、最後まで脚を使っての5着でした。ロータスペトルを交わす際に一瞬外へ振られてしまい、直線インを攻められなかったのが惜しまれます。
開催中天気の良かった札幌芝コースは逃げ先行馬で決まるレースが多く、馬場も追い込み脚質に合わなかった中ですが、ラストの末脚はしっかり使えています。距離を伸ばして新潟のマイル戦あたりで見てみたいですね。前が止まる展開になれば後方から末脚に乗じて更に上の着順が目指せるはずです。
総評
土曜新馬戦の3レースで勝った馬たちはどの馬も人気は他馬に譲ったものの、勝ち方はそれぞれの持ち味を活かしたものとなりました。
既に新馬戦3勝のドレフォン、ロードカナロアがリーディングサイアー争いで一歩リードしています。
特にドレフォン産駒は東京芝1400m、東京芝1800m、阪神ダート1200mと3勝異なる距離で勝馬が出たので、今後の産駒にも更に期待が集まるのではないでしょうか。特にジオグリフの新馬戦勝利はドレフォン産駒が一介の短距離種牡馬ではないことを示すことができた好例になるでしょう。
意外なことに、ディープインパクト産駒はコマンドラインの1勝、キングカメハメハ産駒もポメランチェと未勝利戦を勝ち上がったスタニングローズの2勝と、差は開いておりません。こちらも有力馬はまだまだこれからのデビューなので、産駒たちの動向にも注目しましょう。
写真:俺ん家゛