[連載・クワイトファインプロジェクト]第30回 「茶番・愚行」から「大いなる野望」へ

これは自虐でもなければ批判でもなく、でも現実として、クワイトファインプロジェクトのことを「茶番」、「愚行」だと思っている競馬サークル関係者(馬主、調教師、エージェント、マスコミ)は圧倒的に多いでしょう。そして、競馬ファンの方々の中にも、一定数は存在していると思われます。

血統の極端な偏りがサラブレッドの将来にどんな悪影響を及ぼすか、皆様決して意識がない訳ではないと思いますが、一方で、強い馬を所有したい、そして勝ちたい、という人間のシンプルな欲望と、それを満たすための現実のビジネス展開の前には、冷静で俯瞰的な議論はなかなか太刀打ち出来ないのも正直なところです。

しかしながら、クワイトファインの産駒に「走る見込みがある馬」が現れれば、それなら所有してもいい、というオーナーさんは少なからずいると思います。同じJRA勝ち上がり、同じNAR認定競走勝利でも、クワイトファイン産駒ならサンデー系などの主流血統にはない付加価値が得られると思います。

ならば、実際にそんな馬が現れるのか?

デビュー前の当歳、1歳においては、実際に走る訳ではないので、まずは馬体の良し悪しが最初の評価ポイントです。サイズの絶対値、筋肉量、骨格のバランス。クワイトファインは只でさえ産駒数が絶対的に少ないので、その中から、馬体面で数多の良血馬と同等以上の評価を得る馬を送り出すのは本当に至難の業です。しかし、まず馬体面での評価を得られなければ、流通ルートに乗って適正価格(最低限原価以上)で購入していただくことは出来ません。そして、それは生まれ持った要素が大部分です。裏を返せば、一定の水準以上の馬体を有しているなら、後は関わる人間の努力で能力をより高めていくことが初めて可能になります。

そんな中、あるツイートを目にした方も多いでしょう。

「今年産まれたクワイトファイン×バトルクウの当歳を初めて見ましたが、想像より遥か斜め上の良い馬でした」ツイート主はプロジェクトに関わりのある人ではありますが、馬を見ることに関してはシビアですし、私に忖度するような人間関係ではありません。これは本心からの評価であり、そこには多少の、いや「かなりの」驚きもあっただろうと推察します。個人的には、母バトルクウが雄大な馬体であり、お産も2度目なので元々大きい馬が出る可能性はあったと思います。しかし、ただ大きいだけでも評価されません。骨格、筋肉量など実際の馬を見ての素直な評価を私に伝えてくれました。そして、彼のこのツイートは「いいね」1,400以上を集めています。

種牡馬の価値を高めるのは、そして繁殖牝馬の価値を高めるのは、どんなメディア戦略よりも、まずは「いい仔が生まれる」こと、それに尽きます。

面白いことになってきました。

これまで白眼視してきた人達には、まずはフラットに実馬を見てもらいたい。そして、このプロジェクトが「愚行ではない」ということを、シンプルに理解していただきたいと思います。

では、この仔の姉、つまり来年デビュー予定の「カカラ」(バトルクウ2022)はどうなのか。正直、これまでは、初仔ゆえのハンディを負っている……と思っていましたが、人間の懸念はいい意味で裏切られそうです。評価という面では妹にちょっと先を越されてしまいましたが、こちらも面白いことになってきました。姉はもう1歳なので、馬体だけで評価される段階は過ぎていますが、成長度も勘案した上で、現状、人間がなしうる最大のサポートを行います。これは近々You Tube動画にて発表したいと思います。

妹の馬体面での評価が上がれば、姉、父、母の評価も上がるし、姉が今後の育成過程でいい成長曲線(馬体も能力も)を描けば、妹、父、母の評価も上がります。そして、他のクワイトファイン産駒たち(ガレットデロワの仔、イットーイチバンの仔等)にもいい波及効果を与えると思います。

バトルクウ姉妹の頑張りによって、今年の秋〜冬くらいには競馬関係者の皆様のなかで「クワイトファイン面白いよね。来年種付してもいいかもね」という会話が交わされるようになることを目指します。それが、曽祖父シンボリルドルフ、祖父トウカイテイオー、父クワイトファインにとっての「大いなる野望」の始まりです。

ですので、繰り返しになりますが、関係者の皆様には血統だけで白眼視するのではなく、是非一度、実際に馬を見ていただき、フラットな評価をお願い申し上げます。

写真:合同会社Symcreate

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