[連載・クワイトファインプロジェクト]特別編 能登震災から50日にして思う~復興のために競馬ができること~(前編)

 読者の皆様、なかなか定期的にコラムをアップできず申し訳ありません。

 2月5日と、本業を挟んで10日、11日と石川県に行ってきました。すでにX(旧Twitter)では書いていますが、5日には金沢市の子ども食堂関係者に物資の支援を行うとともに、金沢競馬場で関係者と面会してきました。競馬場の案件については後日YouTubeでなんらかのご報告ができると思います。

 本業で別の県に移動したのち石川県に戻り、週末には自分で被災地の現状を見ておきたいということで、支援関係者の迷惑にならないようレンタカーは使わず、公共交通機関で行ける範囲ということで七尾市、津幡町、内灘町を訪ねました。

 このコラムは競馬ファンの皆様がご覧になるコラムですし、被災地の状況はネットニュースやYouTubeなどでも見ることはできますので詳しくは書きませんが、七尾市は訪問時(2月10日)でも、市街地でも全壊した家屋の多くがそのままにされていました。生活の匂いを残したまま潰れてしまった家屋を目の当たりにし、私はスマホの手を止めました。とてもではないですが写真や動画を残す気持ちにはなれませんでした。ただ、1月1日ここに暮らしていたであろう人たちがどうかご無事であってほしい、そう祈るだけでした。

 七尾駅前の市街地は私が訪問した時点では断水が続いており(町によっては復旧しているところもあります)、市民の方々は不自由な生活を余儀なくされていました。地元の有名な酒造店を訪ねたところ、家屋などは幸い大きな被害はなかったものの、水がなければ酒造りを再開できないので今は在庫の範囲で販売をしていますとのことでした。飲食店もほとんど休業しており、唯一駅前の喫茶店がミネラルウォーターを使ってコーヒーだけの営業を再開していました。そこのご主人と少しだけ話をしましたが、震災後の市民の方々にひと時でも憩いの時間を作りたいとの心意気に私も胸を打たれ、ささやかですがこちらのお店にも応援の品を送りました。そして、Xでこのお店の元常連さん(今は転居して別の県にいらっしゃる)とも繋がることができましたので、また七尾に行った際には改めてゆっくりと語りあいたいと思っています。

 内灘町や津幡町でも、全域というわけではありませんが場所によっては大きな被害が出ております。そして、私のXでプロジェクト初期から相互フォローになっている方から、今も避難所生活をされているというリプライをいただきました。プロジェクトを応援していただいた方が被災されていたとは想像だにしていなかったので、月並みな言い方しかできないのですが本当に心が痛みました。

 ところで、読者の皆様は、いま日常のなかでどの程度、能登半島地震のことを思っていらっしゃるでしょうか。

 私は、クワイトファインが金沢という地に本当に助けられ、その甲斐あって種牡馬入りすることが出来た、その恩は返さなければならないという思いから、チャリティー物販や個人としてのふるさと納税などできる範囲のことをしています。しかし、私にも生活があり、生きていくためにはもちろん本業も真面目にしなければなりませんし、かつプロジェクトの運営もあります。どちらにも責任はあるので、私も毎日24時間のすべてを石川県や能登半島のために費やしているわけではありません。でも、1月1日から今まで、被災地のことを意識しないで過ごすことはありません。情報収集も含め、自分に何ができるかを常に考えています。

 しかし、ここはあえてお叱りを承知で書くのですが、東京を含めた被災地以外の世の中の多くの方々にとって、震災の記憶は少しずつ薄れていっているのも事実です。政治や芸能界やスポーツ関連のニュースになる話題はどんどん新しく更新されていきます。競馬ももう少しで春のG1シーズンが始まりますし、楽しいことはたくさんあります。自分の故郷でもない日本のどこかの知らない人のためにお金と時間を使うより、自分の好きなことのためにお金と時間を使いたいと思うのは(肯定するつもりはありませんが)仕方ないことです。私だって、石川に親戚がいるわけでもないですし、正直なところクワイトファインが金沢にお世話になっていなければここまで震災のことを強く思うことはなかったでしょうから、そんなに偉そうに言える立場ではありません。

 でも、こうも言えると思うのです。

 楽しいこと、自分の好きなことにお金と時間を使って、それが被災地のお役に立てるなら、一石二鳥じゃないか、と。

 それが、競馬に関わることならば、二鳥どころか、一石三鳥ですよね。

 競馬ファンにとって、勝馬投票券を購入し、一獲千金の夢を見ることは競馬の醍醐味です。また、実際に競馬場に足を運んで、生でレースを、馬を見て感動したい方も多いでしょう。その夜に、たとえ馬券で勝っても負けても、その土地の美味しい肴と酒で友と語り合う、最高じゃないですか。それで、自分もいい思い出が残るし、かつ、地元の経済に貢献できるわけです。

そして…その競馬場で、自分が応援した馬の血を引く仔がデビューするかも知れないとなれば、こんな心躍ることはないでしょう。

(後編に続く)

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