[連載・クワイトファインプロジェクト]第6回 年末の大井で垣間見えた微かな希望の光

「ウマフリ」読者の皆様、今年もよろしくお願いいたします。

さて、唐突で申し訳ありませんが、クイズを出します。

「21世紀になってから、日本の中央競馬の牡馬クラシック競走で、ただ1頭、父が非ファラリス系の牡馬が優勝しています。その馬の名前を答えてください」

(ヒント:2002年の菊花賞馬)

……正解はヒシミラクルです。さほど難しい問題ではなかったかと思いますが、21世紀になってから昨年までに、63回の牡馬クラシック競走でたった1勝しかしていないのです。

続いて2問目。今度は〇か×かで答えてください。

「トウカイテイオーが無敗で皐月賞・ダービーを制した翌年の1992年以降、父が非ファラリス系の牡馬は皐月賞馬・ダービー馬になっていない。〇か×か?」

……この問題、ダービー馬だけなら正解は〇なのですが、皐月賞馬まで含めると正解は×になります。1998年の皐月賞・菊花賞を制したセイウンスカイがいるからです。ちなみに菊花賞馬まで広げるとセイウンスカイ、ヒシミラクルにナリタトップロードも対象になりますが、いずれにせよその3頭(4勝)しかいません。

個人的な感覚ではありますが、私が競馬ファンになってからの30年は、まさに、「血の多様性の否定」の30年に感じます。

コミュニティページやTwitterでは何度か紹介させていただいていますが、昨年の11月にクワイトファインの繋養先を訪問した際、Vtuberの方からお声がけをいただき、クワイトファインの牧場での様子や私のインタビューを、動画としてアップしていただきました。

インタビュー動画(※)の中で、私が「平成元年から3年までの牡馬クラシック競走の勝ち馬の血統について」語っていますが、昔と違って記憶の瞬発力が衰えたのか「9レースのうち5レースは非ファラリス系の(種牡馬を父に持つ)馬が勝利した」と、正確性を欠く話をしてしまいました。もちろん後で気付いたので、動画上では「解説」で補足していただきましたが、当時の競馬を知るファンの方ならご存知の通り、平成元年皐月賞から平成3年ダービーまで8レース連続で非ファラリス系の馬が優勝しています。

平成元年がドクタースパート、ウイナーズサークル、バンブービギン、平成2年がハクタイセイ、アイネスフウジン、メジロマックイーン、平成3年がトウカイテイオー(2冠)。

──残念ながら今では、メジロマックイーン以外は現役活躍馬の血統表に名前をみることもほとんどありません。たった30年で、3大始祖という言葉は死語になりつつあります。さしづめ現代の3大始祖は「ノーザンダンサー、ヘイルトゥリーズン、ミスタープロスペクター」ということになるのでしょうか。もしミスプロ系が大成功を収めていなければ、現在の主流血統はネアルコ系だけになっていたかも知れません。

さて、最近では地方競馬の重賞レースの出走馬ですら5代血統表をアルファベットが占めることも珍しくなく、昔ながらの競馬ファンには寂しい状況が続いていますが、2021年の年末に行われた大井競馬の「東京2歳優駿牝馬」で上位人気に支持されたとある有力馬の血統を見たときは、久しぶりに心が踊りました。

4戦4勝で暮れの大一番に駒を進めたバンブー牧場生産のロマンスロード号です。

ピンと来た方もいらっしゃると思います。
ちょっと早めの伏線回収になりますが、この馬の母母父はバンブービギンなのです。

動画でも触れたとおりトウカイテイオーの血を持つ繁殖でもなかなか活躍馬を出せない中、バンブービギンを父に持つわずか9頭の繁殖牝馬のなかから、代を重ねて将来に期待を抱かせる有力馬が誕生したのです。その繁殖牝馬9頭のうち7頭は1代で終わり、1頭は後継繁殖を送り出したもののこちらも途絶えました。最後の1頭がロマンスロードの祖母リンダムヘール。リンダムヘールは2007年に繁殖としての役目を終えましたが唯一の後継繁殖がロマンスロードの母ブラックカシミールであります。まさに「バンブービギン」の名と血を残す唯一の母から誕生した孝行娘ということでしょう。バンブー牧場さんのこれまでのご努力に心からの敬意を表するとともに、サラブレッド生産の奥深さを感じずにはいられません。

残念ながら東京2歳優駿牝馬は5着に終わりましたが、掲示板を死守したことは前向きに捉えて良いでしょう。今年は交流重賞にも出てきてほしいと思います。

そして、次回コラムの予告という訳ではありませんが……メジロマックイーン後継種牡馬のギンザグリングラス、その産駒の初の中央競馬登録(美浦トレセン入厩)の日が近づいてきました。

個人的な言い訳で恐縮ですが、1月下旬から本業が繁忙期に入るためその時々の情報をキャッチアップしながらブログの内容を考えることが少し難しくなります。そして、3月上旬~中旬にはクワイトファインの2年度目の産駒が相次いで誕生する予定です。よって、2月のコラムは第1週かあるいはその次で、入厩して馬名登録もされるであろう、私の人生初の1口出資馬であるギンザグリングラス産駒のことをご紹介できればと思います。

(※)Youtubeで「トウカイテイオー後継種牡馬の馬主さんと直接対談!!」というタイトルの動画です。プロフィール欄にリンクが貼ってありますので、よければご覧ください。

写真:ウカ

あなたにおすすめの記事