アネモネステークスは、関東で唯一行われる桜花賞のトライアルレースで、2着馬までに桜花賞への優先出走権が与えられる。

今年の出走頭数は15頭。

例年通り人気は割れたが、1番人気に推されたのは、関西馬のルチェカリーナだった。今回のメンバーで2頭しかいない2勝馬のうちの1頭で、実績は上位。ここまで5戦2勝で2~4着が1回ずつと、安定感も魅力だった。

僅差の2番人気に続いたのは、ベッラノーヴァ。

昨年10月に新馬戦を勝利し、そこから臨んだ前走のフェアリーステークスでは、上がり最速の末脚で3着に健闘。重賞3着の実績もここでは上位であり、さらにはその時の舞台が今回と同じ中山1600mだったため、注目が集まった。

3番人気に推されたのはアナザーリリック。ここまで2戦1勝。前走は、やはり同じ舞台で行われた1勝クラスの菜の花賞を、タイム差なしの2着と好走していた。

そして、4番人気に推されたのがトゥルーアート。この馬も、未勝利戦を勝利した舞台が同じ中山1600mだったことと、上位人気3頭と同じく、キャリアに傷が少ない点でも注目を集めた。

レース概況

ゲートが開くと、レッジャードロが後方からの競馬となり、グローリアスカペラも少しあおるようなスタートとなった。

ジネストラが内から先手を奪おうとするところ、カイトゲニーが外から交わして先頭に立つ。さらに、スイートクラウンがジネストラを交わして2番手に上がり、ここまでが先行集団。以下、スンリ、リュクスフレンドの順で続いた。

上位人気馬では、ベッラノーヴァが中団の7番手で、それをマークするようにトゥルーアートが直後の8番手。そして、アナザーリリックが後ろから4番手、ルチェカリーナはその直後をそれぞれ追走していた。

序盤から縦長の隊列となり、先頭から最後方まではおよそ15馬身。そして、その隊列が表すように、前半600m通過は33秒9、800m通過も45秒6と、重馬場としてはかなりのハイペースとなった。

しかし、そこからは少しペースが落ち、残り600m標識を過ぎてからは後続が殺到。15頭がおよそ5~6馬身差の一団となり、2番手以下がずらっと横に広がるようなかたちで4コーナーを回った。

迎えた直線。逃げるカイトゲニーが坂の手前で力尽き、ジネストラが変わって先頭。そのまま坂を駆け上がって、一時はリードを2馬身半ほどに広げる。

しかし、2番手まで上がってきていたアナザーリリックが、残り100mから猛追して一完歩ごとに差を詰め、ゴール寸前で差し切って1着でゴールイン。

4分の3馬身差の2着にジネストラ。そこから3馬身離れた3着に、1番人気のルチェカリーナが入った。

重馬場の勝ちタイムは1分34秒8。桜花賞への優先出走権を獲得したのは、アナザーリリックとジネストラの2頭だった。

各馬短評

1着 アナザーリリック

序盤は後ろから4番手に構えていたものの、残り800mを過ぎてからまくり気味に進出開始。4コーナーでは前から4番手のところまでとりつき、最後の最後で粘る2着馬を差しきった。

母の兄に、目黒記念を連覇し、GⅠで2着が3回あるポップロックがいる血統。そのポップロックは父がエリシオだったため長距離で活躍したが、本馬は、父がリオンディーズで母の父がサクラバクシンオーという血統構成となる。

今年の桜花賞は混戦模様だが、桜花賞はもちろん、NHKマイルカップでも面白い存在になるかもしれない。

2着 ジネストラ

ハイペースを3番手で追走しながらゴール寸前まで粘り通しす競馬。最も強い内容を見せたと言っても良いだろう。

今回は4ヶ月の休み明け。馬体重を14キロ増やしていたが見た目も全く太くなく、順調に成長しているようだ。

母は重賞勝ち馬のハッピーパスで、兄姉にも重賞を勝ったコディーノとチェッキーノがいる良血。両馬は、ともに父がキングカメハメハだったが、本馬はロードカナロア産駒で4分の3同血といえる。

さらに、それ以外にもキングカメハメハを父に持つ半兄が2頭いるが、いずれも3勝クラスとオープンまで出世している。距離に限界はありそうだが、この馬も順調にいけば、オープンまで出世する可能性は高い。

3着 ルチェカリーナ

今回も善戦して3着。桜花賞の出走権は獲得できなかったが、十分、次に繋がるレース内容を見せた。

父のディスクリートキャットは、ストームキャット系の種牡馬。自身が現役時そうだったようにダート専用種牡馬のイメージがあったが、2021年3月14日時点で、ダート11勝に対して芝も6勝と、両方で頑張っている。

同じストームキャット系の種牡馬といえば、現在の日本のダート界を牽引しているヘニーヒューズが思い浮かぶ。しかし、その代表産駒のワイドファラオは、3歳時にニュージーランドトロフィーを制している。さらに同じく代表産駒のアジアエクスプレスも、2歳時に朝日杯フューチュリティステークスを制したように、早い時期であれば十分に芝でも活躍する。

ディスクリートキャット産駒も、時期的には春競馬が終わるまで、距離面では1400mまでなら、芝で走る馬が何頭か出てくるのではないだろうか。

レース総評

2着までに優先出走権が与えられているとはいえ、例年アネモネステークス組は、本番の桜花賞で苦戦を強いられている。

ただ今年は、阪神ジュベナイルフィリーズの1、2着馬が本番へ直行予定。さらに、日曜日に阪神で行われたフィリーズレビューや、先週行われたチューリップ賞を見ても混戦は必至である。

アネモネステークスで厳しい流れのレースを経験したこの2頭は、おそらく本番でそれほど人気はしないが、出走してきた際は、相手候補に加えておきたい。

あなたにおすすめの記事