JRAで2レースしかない、世代限定のダート重賞レパードステークス。
2021年で13回目と歴史が浅いレースではあるものの、第1回の覇者がトランセンド、第4回の覇者はホッコータルマエと、後にダート界の頂点に立つ馬を輩出してきた。
今年の出走馬はフルゲートの15頭で、単勝10倍を切ったのは5頭。ただ、前走オープン・重賞に出走していたのは1頭のみで、例年以上に混戦模様だった。
その中で、1番人気に推されたのはメイショウムラクモ。3走前の1勝クラスを8馬身差で圧勝すると、オープンの伏竜ステークス2着を挟んで、前走のいわき特別も7馬身差で圧勝。ここまで7戦中4戦でJRA現役最年長の柴田善臣騎手とコンビを組み、大ベテランが手塩にかけて育ててきた馬として、大きな注目が集まっていた。
2番人気はルコルセール。父はロードカナロア、母の全兄にダートのスーパーサイアー、ゴールドアリュールがいる超良血馬。芝を3戦して勝ち上がれなかったものの、初ダートの未勝利戦を8馬身差で圧勝すると、そこから一気に3連勝。ダートは無敗のまま、ここに駒を進めてきた。
3番人気に続いたのはオセアダイナスティ。こちらも、芝を2戦して勝てなかったものの、初ダートの未勝利戦を10馬身差で圧勝。2走前は出遅れが響きルコルセールの5着に敗れたが、前走は再び7馬身差で圧勝した。1勝クラスを勝ったばかりで重賞挑戦となるが、スケールが大きそうな勝ち方をしてきただけに、多くの支持を集めていた。
4番人気は、関西馬のホッコーハナミチ。前走、2勝クラスのインディアトロフィーを勝利したが、今回のメンバーで2勝クラスを勝った馬は4頭のみ。実績上位の存在で、父ホッコータルマエとの親仔制覇も期待されていた。
5番人気は、こちらも前走2勝クラスの西部スポニチ杯を勝利したハンディーズピーク。キャリア4戦3勝とほぼ底を見せておらず、今回のメンバーではやはり実績上位の存在。注目の存在だった。
レース概況
ゲートが開くと、出遅れのないきれいなスタートとなったが、中でも、レプンカムイがわずかに好スタート。オセアダイナスティがそれに並びかけようとするも、ロードシュトロームがやや強引に先手を奪いにきたため、一度3番手へと下げた。
上位人気馬では、1コーナー手前で行き脚がついたメイショウムラクモが、それを交わして3番手に上がり、ホッコーハナミチが7番手。2番人気のルコルセールは、スタート後すぐに挟まれたことが影響したか、なかなかポジションを上げられず後ろから3番手に。ハンディーズピークは、最後方からの競馬となる。
前半1000m通過は1分1秒4で、平均よりほんの少し遅いペース。向正面で、隊列は前10頭、後ろ5頭に分かれたものの、先頭から最後方までは10馬身ほどの差。3コーナーに差し掛かり、残り600mを切ったところから馬群はさらに凝縮したものの、前を行くメイショウムラクモとレプンカムイの手応えは楽なまま。2頭で後続を再び突き放しながら4コーナーを回り、最後の直線へと入った。
直線に向くと、2頭のリードは2馬身半。追ってきたのはスウィープザボードだったが、そこから4番手以下はさらに2馬身の差があり、上位争いは3頭に絞られる。そして、200mの標識を過ぎたところでメイショウムラクモが先頭に立つと、レプンカムイとの差が徐々に開きはじめ、問題は2着争いへ。
その争いは、スウィープザボードが残り50mで前に出て制したものの、メイショウムラクモは、その3馬身前で悠々とゴールイン。完勝といえる内容で、見事に重賞初制覇を成し遂げた。
良馬場の勝ちタイムは1分51秒3。騎乗した柴田善臣騎手は、55歳0ヶ月10日での重賞制覇。これは、岡部幸雄元騎手が記録した、54歳0ヶ月31日を上回るJRA最年長重賞勝利。一方、管理する和田勇介調教師は、開業5年目で嬉しい重賞初制覇となった。
各馬短評
1着 メイショウムラクモ
前走、2勝クラスを勝利した馬は4頭いたものの、7馬身差で圧勝してきた実績は、やはり一枚上。それを見せつけるようなレース内容で、世代トップクラスの実力を証明した。
近4走は3勝2着1回となり、柴田善臣騎手とのコンビでは5戦4勝2着1回とほぼ完璧な成績。今回は、直線で鞍上が鞭を落としてしまったということだが、それでいての3馬身差。
次は、古馬オープンクラスとの戦いとなるが、その壁にぶち当たって大敗するようなことは、よほどのことがない限り考えにくい。
2着 スウィープザボード
中枠より内が強い傾向にあるレパードステークスだが、メイショウムラクモとともに8枠を克服。道中、徐々に徐々にポジションを上げ、最終的に2着争いを制した。
前走、1勝クラス勝ち馬が多数出走していたが、3歳限定の1勝クラスを勝ってここに出走してきたのは、本馬とテイエムマジックのみ。3歳限定のダート1勝クラスはレース数が少ない分、そこを勝ってきた馬のレベルは高い。
来年以降も、前走条件戦の出走馬が多い組み合わせとなった際は、この組に注目するべきかもしれない。
3着 レプンカムイ
わずかでも、好スタートを切ったことが非常に大きかった。前走、ホッコーハナミチに敗れたとはいえ、やや早いペースを2番手で追走しての2着は、ほぼ勝ちに等しい内容だった。そのため、ある意味、今回は実力どおりの走りを見せたともいえる。
賞金を上積みできなかったのは痛いが、次走2勝クラスに出走すれば確勝レベルで、まだまだ伸びしろもありそう。
レース総評
前半の800mが48秒8で、12秒6を挟み、後半の800mは49秒9。前傾ラップだったものの、このコースらしく、後方に控えた組には厳しい展開となった。
この土日は、ダート1800mのレースが計6鞍行なわれ、大外の8枠15番が3勝2着2回と大活躍。1着馬3頭は上位人気だったが、2着馬2頭は15番人気と8番人気。そして、レパードステークス2着のスウィープザボードも8枠14番。もしかすると、外枠有利の馬場になっていた可能性があり、改めて、今週以降の傾向はしっかり見極めたいところ。
とはいえ、メイショウムラクモの実力は、今回のメンバーでは1枚も2枚も上手だった。序盤から楽に先行し、直線で、さあこれからというときに鞭を落としてしまったものの、それでいて3馬身差の勝利は強いの一言。
当レースの前走条件戦組の勝利は、13回の歴史の中で、トランセンドとインカンテーションのみ。このコンビで、さらに大きいところが狙えるのではないだろうか。
また、メイショウムラクモの父は、今年3月に惜しくもこの世を去ったネオユニヴァース。産駒デビュー2年で、3頭のクラシック勝ち馬を輩出した種牡馬も、最近はすっかりダートが主戦場となっている。函館のエルムステークスでは、同産駒の9歳馬ウェスタールンドが4着に好走したが、こちらはせん馬。話は早いが、メイショウムラクモには、後継種牡馬となることへの期待も高まる。
これは、2着のスウィープザボードにもいえることで、スウェプトオーヴァーボード産駒は、この世代がラストクロップ。後継種牡馬には、パドトロワとレッドファルクスがおり、現役馬には総大将ともいうべきオメガパフュームがいる。
ただ、GⅠ勝ち実績のあるフォーティナイナー系のダート専用種牡馬は後継があまりいない。もちろん、オメガパフュームの実績は十分だが、スウィープザボードにも、今後、大レースでの実績を期待したい。
写真:かずーみ