10月に入って最初の交流重賞は、JBCスプリントを目指す強豪が集う大井競馬場1200mのレースです。
JRAからは海外遠征からの帰国初戦となるレッドルゼル、サマーチャンピオンを使って秋2戦目のコパノキッキング、交流重賞回顧で何度も登場している充実期のリュウノユキナ、テレ玉杯オーバルスプリントから中1週での参戦サクセスエナジー、今シーズンから交流重賞に挑戦中のサイクロトロンらが参戦。
地方競馬のメンバーも、昨年同コースのJBCスプリントを制したサブノジュニアを筆頭に、距離短縮で新味を見せた3歳馬ワールドリング、大井1000mレコードホルダーのクルセイズスピリツら8頭が集いました。
関東は時折霧雨が降りましたが、本降りにはならず、稍重馬場での開催でした。
レース概況
サイクロトロンが大外枠から抜群のスタートを切りますが、韋駄天クルセイズスピリツが押して押してハナを切ります。サイクロトロンはスタートの勢いそのままに2番手、出鞭を入れてニシノレオニダスが3番手を確保し、リュウノユキナは前の馬たちを見ながら4番手でレースを進めます。
その外5番手ではサクセスエナジーが巨体を弾ませ、中団真ん中でコパノキッキングが前を追う形に。
コパノキッキングの外からワールドリングが張田騎手に促されて、コーナー入り口でインコースに進路を切り替えます。
出遅れたレッドルゼルとサブノジュニアは末脚を繰り出すタイミングをうかがいながら3コーナーへ。
直線に向いたところでリュウノユキナが抜け出そうとしますが、最内ではクルセイズスピリツが止まり、サイクロトロンも伸びが無く、外へ進路を切り替えようとして一瞬仕掛け遅れてしまいます。
その隙にサクセスエナジーが外から先頭に立ちますが、馬場の中央に進路を取ったことで内が少し空き、リュウノユキナは内に切り返してサクセスエナジーを追いかけます。
外からコパノキッキングが追いかけ、更にその後方からレッドルゼルも鋭い末脚で突っ込んできましたが、サクセスエナジーには届きませんでした。
結果的に、終始ロスなくレースを進めたサクセスエナジーが1着。
進路を探すロスがありながらもリュウノユキナが2着、レッドルゼルはクビの差で3着まででした。
コパノキッキングはレッドルゼルに交わされたものの4着を確保し、1馬身差で地方の新星ワールドリングが5着、サブノジュニアは6着でレースを終えました。
各馬短評
1着 サクセスエナジー
この秋既に3戦目というローテーションでしたが、530キロを超える大きな馬体はこの3戦で一番見栄えが良く、パドック解説でも「今日はやる気がありそうに見える」と評されていました。
サマーチャンピオン、テレ玉杯オーバルスプリントの2戦とも重賞5勝の実績があるゆえに59キロの斤量を背負い、内枠で揉まれてしまったことで結果は振るわず。
一方、今回は外の10番枠を引いた上に別定戦で斤量は57キロで走れたので、最後までロスの無いレースができ、先行抜け出しの「勝ちパターン」の走りを久しぶりに披露できました。
勝ちタイム1.10.3はスーニが持つレコードまでコンマ0.2秒差に迫る好タイムですから、これまでの敗戦は衰えによるものでは無く、使いつつ調子を戻していると見て良いでしょう。
本番のJBCスプリントは本来サクセスエナジーが得意としている1400m戦です。
揉まれた時の課題は残りますが、外枠から先行することが叶えば十分に勝ちも狙える1頭でしょう。
2着 リュウノユキナ
柴田善臣騎手とのコンビで今シーズンは5戦4勝2着1回、抜群の安定感でこのレースに駒を進めました。
同じコースで行われる春の東京スプリントも制しているので、単勝1番人気も納得です。
前に行きたい馬を行かせて直線で交わすいつものレースで最後の直線まで進めましたが、逃げてばてたクルセイズスピリツとサイクロトロンを交わすところで一瞬追い遅れてしまい、スパートをかけていたサクセスエナジーを捉えきれませんでした。
ロスがありながら、後方から追ってきたレッドルゼルやサブノジュニアを凌いでの2着で今シーズンのパーフェクト連対を継続したのですから、まだまだ充実期の真っ只中と言えます。
1400m戦ですと、リュウノユキナは未知数なところもあります。JBCスプリントで1400m戦に挑むか、1200m戦のカペラSへ向かうのかが気になるところですが、次戦もこの名コンビのレースが見たいですね。
3着 レッドルゼル
レッドルゼルの武器は鋭い末脚で、デビュー以来ほとんど崩れることなく走っています。
春は海外に挑戦し、G1ドバイゴールデンシャヒーンでも自慢の末脚で追い上げましたが、勝馬Zendenの逃げを差し切れず2着に敗れました。
秋シーズン始動戦の今回は川田騎手が「苦しくなったのは久々の分」とコメントしていますが、あの末脚を見てしまうと出遅れなければ差し切って勝っていたのではないか…とタラレバを言いたくなります。
東京盃のレースタイムでは3F36.2秒でしたが、本馬の上りタイムは3F35.5秒とダートでは出色の末脚を繰り出しての3着入線でした。久しぶりのレースでもこの末脚を繰り出せたなら、上々の結果ではないでしょうか。
馬場コンディションもコースも気にせず差してくれる高い末脚性能を次戦も期待してしまいますが、1周コースの経験が無いので、仕掛けどころが課題になりそうです。
4着 コパノキッキング
レッドルゼルとともにドバイゴールデンシャヒーンに挑んだ後、一足早くサマーチャンピオンから始動しましたが、2年連続の3着に敗れ、東京盃が秋2戦目のレースになりました。
2年前にこのレースを制したときは藤田菜七子騎手とのコンビで逃げ切っているので、出たなりのスピードで押し切っても良いですし、出遅れても末脚で差し切ってしまう脚力もあります。
春のリヤドダートスプリントではビュイック騎手が後方3番手あたりから追い込んでの差し切り勝ちを決めています。
今年は初コンビのルメール騎手がそつなく中団からエスコートしましたが、早めにコーナーで外を回したぶん、終いが浅くなってしまいました。
逃げ切りか追い込みかの極端な勝ち方の多い馬なので、更にスピードスターの揃うであろうJBCスプリントであれば慌てずに差しに回る方が結果がついてくるかもしれません。
小回り1400mコースは浦和開催のJBCスプリントやサマーチャンピオンで経験しているので、あとは乗り方ひとつでしょう。
5着 ワールドリング
南関スプリント路線の新星ワールドリングは、前走のアフター5スター賞が古馬相手の初挑戦でしたが見事に勝利しました。
1200m戦に舵を切ってからは2戦2勝、勢いそのままに交流重賞に初参戦しました。
流石にテンの脚が早いメンバー構成なのでいつもより位置取りは後ろになりましたが、鞍上の張田騎手がコーナー進入前にインコースに進路を切り替え、コーナーでのロスを最小限に省いての直線勝負が出来ました。
コーナー出口でニシノレオニダスが下がってきたため、直線ではレッドルゼルの位置を確認しながら外を差す進路選択をせざるを得ませんでしたが、このメンバー相手で3歳にして5着に入れるのですから将来有望です。
コパノキッキングとの着差も1馬身ですから、本格化すれば中央勢相手でも交流重賞で勝てる日が来るかもしれません。今後の成長度合いに注目の1頭です。
6着 サブノジュニア
昨年のJBCスプリントを勝ったことで、レースで背負う斤量が58-59キロになり、なかなか勝てない日々が続いていますが、大井の1200mコースでは末脚健在です。
東京スプリント2着、アフター5スター賞3着はいずれも上位上りを繰り出した結果で、今回も6着とはいえ出負けして大外を回しながらも上りタイム3F35.9秒は2着のリュウノユキナと同タイムでした。
今回も斤量は最重量の58キロを背負っての結果ですから、斤量差のなくなるG1や南関S1競争であれば、自慢の豪脚での差し切り勝ちを再び見せてくれるかもしれません。
レース総評
今回のタイトルは勝馬名から「復活成功!」と銘打ちました。
サクセスエナジーの直近2走は運の要素も多分に絡んでの敗戦だっただけに、今回の勝利は実力差での敗戦ではないことを示せた価値ある1勝でしょう。
テレ玉杯オーバルスプリントでは地方馬たちが上位を占めましたが、東京盃ではJRAの強豪たちによる決着になりました。それでも着差1秒以内で3歳馬ワールドリングが5着、昨年のチャンピオンであるサブノジュニアが6着に入っていますから、近年の地方馬のレベルアップを感じずにはいられません。
そして、今年のJBCスプリントに向けた交流重賞はこれでほぼ終わったことになります。
マイルチャンピオンシップ南部杯からの転戦馬がいなければ、これまでのレース回顧で紹介してきた人馬を中心にしたメンバーが金沢競馬場に集結しての大一番になることが予想されます。
昨年も豪華な顔ぶれが揃ったレースでしたが、今年は更にメンバーレベルが上がることが予想されます。
JRAの強豪たちはやはり強いですが、ブルドッグボスやサブノジュニアのように近年は地方所属馬にも十分勝機がありますので、どちらにも熱い声援が贈られることに期待しています。