関西で唯一の2歳限定GⅡ・デイリー杯2歳S。朝日杯フューチュリティSや阪神ジュベナイルフィリーズへのステップとして出走する馬が多いが、一方で数は少ないながらも、ホープフルSのステップとして出走する馬もいる。2017年の勝ち馬ジャンダルムは、本番でも2着と好走した。
例年、少頭数で争われるこのレース。2021年は、その近年においても最も少ない7頭がエントリーした。ただ、文字どおり少数精鋭のメンバー構成で、単勝オッズ10倍を切ったのは4頭。その中でも2頭が少し抜け、わずかに1番人気となったのはセリフォスだった。
セリフォスは、6月2週目の中京で行なわれた新馬戦を勝利しデビューを飾ると、続く新潟2歳Sも連勝。重賞初制覇を飾った。新馬戦で2着に降したベルクレスタは、その後、出世レースのアルテミスSも2着。2歳戦に強いダイワメジャー産駒という点も、大きな注目を集める要因となった。
2番人気に続いたのは、牝馬のソネットフレーズ。8月新潟の新馬戦を、2着に3馬身半差をつける完勝。勝ちタイムも優秀だった。今回はそれ以来の実戦となるものの、ルメール騎手が継続騎乗するのは心強い材料。父エピファネイアに母の父キングカメハメハという黄金配合で、血統面でも大きな注目を集めていた。
3番人気に推されたのがプルパレイ。イスラボニータの初年度産駒で、初戦は2着に敗れたものの、その後、未勝利戦と1勝クラスのアスター賞を連勝。こちらは、デムーロ騎手が一貫して手綱をとり、コンタクトは十分。父の産駒として初の重賞制覇、そして出世頭となるべく、このレースに臨んでいた。
少し離れた4番人気にスタニングローズ。デビューから5戦目とキャリア豊富で、重賞挑戦も今回が3度目。前走のサウジアラビアロイヤルCでは、大物と噂される1、2着馬と僅差の3着に好走していた。血統面では、いわゆる「バラ一族」の出身という良血。5着、3着と着順を上げており、今度こその重賞制覇が期待されていた。
レース概況
ゲートが開くと、ウナギノボリが出遅れ。後方からのレースを余儀なくされた。
先手を切ったのはスタニングローズで、1馬身差の2番手にドグマ。プルパレイとソネットフレーズが続き、2馬身間隔でカワキタレブリーとセリフォスが追走する。さらに5馬身離れた最後方に、ウナギノボリという展開となった。
早くもペースは落ちて、最初の400mを通過したところでプルパレイが2番手に。その後、先頭に立った。
前半600m通過は35秒9で、スローな流れとなったものの、先頭から最後方までは、およそ10馬身と縦長の隊列。ここでペースはさらに落ち、後方3頭が前との差を詰め、中間点ではほぼ一団となる。4コーナーで一気にペースが上がり、セリフォスが各馬をねじ伏せるように外に進路を取ったところで、最後の直線勝負を迎えた。
直線に入ると、プルパレイが逃げ込みを図って、後続との差は1馬身。そこから坂下まで懸命に粘ったものの、残り200mで先頭に躍り出たのは、藤岡佑介騎手の鞭に反応したセリフォス。一方、プルパレイはやや脚色いっぱいで、かわりにソネットフレーズが内から末脚を伸ばす。そこからゴールまでの100mは、完全に2頭のマッチレースとなった。
しかし、終始わずかにリードしたセリフォスが前に出ることを許さず、クビ差だけ前に出て1着でゴールイン。2着にソネットフレーズが入り、内を突いたカワキタレブリーが、プルパレイとの3着争いを制した。
良馬場の勝ちタイムは、1分35秒1。GⅢ、GⅡと着実にステップアップしたセリフォスが、GI制覇に王手をかける3連勝を果たした。また、この勝利により、中内田充正調教師は2歳マイル重賞完全制覇となった。
各馬短評
1着 セリフォス
新潟2歳Sの回顧で、本来得意とするのは持久力勝負のはずと述べたが、今回も合わせると、考えを改めたほうが良さそう。ダイワメジャー産駒にしては珍しく、瞬発力タイプのようだ。
順調にいけば、次走は、レース前からの予定どおり朝日杯フューチュリティSとなるはず。懸念材料は2つで、1つ目は、出走頭数が大幅に増えること。2つ目は、今回と一転して、淀みない流れとなったときに、対応できるかだろうかということ。ただ、後者に関してはダイワメジャー産駒のため、ペースが流れても戸惑うことなく、こなす可能性は十分にあり得る。
2着 ソネットフレーズ
残り250mで外に出そうとしたが、プルパレイが僅かに外に寄れて進路がなくなり、内に切り替えざるを得なかったのが最後に響いた。それでも、牡馬トップクラスにいるセリフォスとはクビ差の接戦。敗れても、能力の高さを十分に証明した。
次走は、阪神ジュベナイルフィリーズとなるだろうか。もしそうなれば、牝馬で再びの西下がどう出るか。また、ピリピリしやすいエピファネイア産駒で、大幅な頭数増となったときに、揉まれないかが懸念材料となる。
3着 カワキタレブリー
大きく離れた7番人気だったものの、その評価を嘲笑うような激走。ただ、ライバルが道中遊びながら走っていたり、力んで走ったりしたことにより力を発揮しきれなかったことに乗じた面もある。
そのため、次走1勝クラスに出走しても、確勝レベルとまでは言い切れないだろう。それでも出世レースで3着と好走したことは事実で、次走は注目して見守りたい。
レース総評
前半800mが48秒7で、後半の800mは46秒4。完全な後傾ラップで上がり勝負となり、勝ち時計自体は平凡だった。そのため、10月のサウジアラビアロイヤルCと同様、レース内容自体を高く評価することはできない。
ただ、1、2着馬に関しては、少なくとも今回のメンバーでは、やや抜けた実力を持っていたといって間違いない。特にセリフォスは、藤岡佑介騎手がレース後「4コーナーで脚がありすぎてオーバーランしちゃいました」と語っているように、最終的な着差は僅かでも、まだ余裕があった様子。
ともに次走が、同じコースで行なわれる年末のGIだとすると、考えられる懸念材料は上述した通り。ただ、セリフォスを管理するのは中内田充正調教師である。11月14日現在、全国リーディングトップのトレーナーで、特に2歳戦で強さを発揮している。ソネットフレーズを管理する手塚厩舎も、関東リーディングトップで全国でも3位。ともにトップの中のトップトレーナーであり、無策でGIの舞台に臨んでくることは考えられない。
それぞれが課題を克服した上で2歳GIの舞台でも好勝負を演じたら、このレースの価値も一気に上昇することだろう。
写真:RINOT