[重賞回顧]内にこだわり末脚一閃!尾張の地で、2つ目の重賞タイトルを獲得~2022年・京都金杯~

中山金杯とともに中央競馬の開幕を告げる京都金杯は、前年に引き続き、2022年も中京競馬場での開催となった。

ハンデ戦とはいえ、GI勝ちのある実績馬から、オープンに昇級したばかりの馬まで16頭がエントリー。ハンデの上下差は6kgに設定されたものの、過去5年で4頭だった57.5kg以上を背負う馬が5頭も出走。これが、2022年の京都金杯の大きな特徴だった。

それもあってか人気は割れ、単勝10倍を切ったのは5頭。その中で、エアロロノアが1番人気に推された。

ここまで14戦して、掲示板を外したのはわずか1回のみという堅実派。2021年のマイラーズCでは、1番人気に推された実績もある。前走はリステッドのリゲルSを快勝し、オープン初勝利。騎乗する岩田望来騎手とともに、重賞初制覇のチャンスが巡ってきていた。

少し離れた2番人気にカイザーミノル。こちらも重賞は未勝利ながら、マイラーズCと京王杯スプリングCで3着の実績がある。前走の天皇賞・秋は、さすがに超一線級の壁に跳ね返されたものの、勝ったエフフォーリアとは1秒4差。今回のメンバーでは実績上位とされ、エアロロノアと同じく重賞初制覇が懸かっていた。

僅差の3番人気に続いたのがルークズネスト。5走前、同じ中京競馬場で行われたファルコンSでは、GI馬のグレナディアガーズを破っている。前走の阪神カップでは17着と大敗したものの、そこから意欲の連闘策。巻き返しが期待されていた。

4番人気に推されたのはシュリ。エアロロノアと同様、掲示板を外したのが前走のエプソムCのみという堅実派。前年の京都金杯では1番人気ながら5着と敗れており、今回はそれ以来となる武豊騎手とのコンビ。雪辱なるか、注目が集まっていた。

そして、5番人気に推されたのがバスラットレオン。6走前のニュージーランドトロフィーは、2着に5馬身差をつけて圧勝したものの、続くNHKマイルカップでスタート直後に落馬。競走を中止すると、以後は4戦連続で二桁着順が続いている。今回は、1年前に3着と好走したシンザン記念と同じ舞台。復活なるか、注目されていた。

レース概況

ゲートが開くと、ザダルとルークズネストの4枠2頭が、やや立ち後れた。

先手を切ったのは、バスラットレオンとサトノフェイバーの2頭。そこから3馬身離れた3番手をダイワキャグニーが追走し、さらに2馬身差で、ヴィジュネルとカイザーミノルが続く。

一方、1番人気のエアロロノアは中団直後を追走。ルークズネストとシュリは、それぞれ後ろから3番手、2番手に控え、レースを進めていた。

前半600m通過は34秒1で、800m通過が46秒1の平均ペース。スタート直後は縦長だった隊列も、勝負所の3~4コーナー中間でやや凝縮。12馬身ほどの差となったものの、前の並びはほぼ変わらないまま、レースは最後の直線勝負へと入った。

直線に向くと、逃げ込みを図るバスラットレオンとサトノフェイバーに、ダイワキャグニーが襲いかかり、残り200mを切ったところで先頭へ。さらにそこへ、内からダイアトニック。馬場の中央からザダルとカイザーミノルが末脚を伸ばし、勝負圏内は4頭に絞られるも、残り50mで、グイっと前に出たザダルがそのまま押し切り1着でゴールイン。

1馬身差の2着にダイワキャグニー。そこからアタマ差の3着にカイザーミノルが続いた。

良馬場の勝ちタイムは、1分32秒9。エプソムC以来、7ヶ月ぶりの勝利となったザダルが、2つ目の重賞タイトルを獲得した。

各馬短評

1着 ザダル

上位3頭の中で、唯一後方から追込んで勝利したところに大きな価値がある。

デビューから2戦は中山で連勝したものの、オープンに昇級してからは、すべて左回りで勝利。2020年の中山金杯以来、実に2年間、右回りコースを走っていない。

6歳を迎えたものの、まだキャリア13戦。おそらく使い減りはほとんどなく、さらなる活躍が期待される。

2着 ダイワキャグニー

こちらは、現役屈指のサウスポーとして知られている存在。

年齢を重ねたせいか。さすがに近走は不振で、2020年の毎日王冠以来、7戦連続して4着以下に敗れていたものの、8歳を迎えた初戦で、再び2着と好走した。

これが33戦目で、まさに無事是名馬と呼ぶに相応しい馬。少しでも長く、そして無事に現役生活を続けて欲しい。

3着 カイザーミノル

重賞では、3度目の3着。上位2頭は左回りが得意なのに対し、こちらは、右回り左回り、そして、内回り外回り関係なく、様々な条件で好走している。

2走前の毎日王冠でも0秒3差の5着と好走しているように、マイル前後のGⅡ、GⅢであれば、いつ勝っても不思議ではない。今後の動向が注目される。

レース総評

前半800m通過は46秒1で、後半800mが46秒8。やや前傾ラップとなったものの、2、3着馬は3、4番手でレースを進めていた馬。それだけに、スタートでやや立ち後れながら、後方一気で差し切ったザダルの強さは際立っていた。

騎乗した松山騎手は、開催初日からいきなり4勝。10レースの万葉Sでも、最内を突いてマカオンドールを勝利に導いたが、金杯でも、4コーナーでザダルを外に出さず、内にこだわって末脚一閃。素晴らしいコース取りで勝利に繋げ、2020年の京都金杯、2021年の中山金杯に続き、これで金杯は三連覇となった。

57.5kg以上の重い斤量を背負った馬が5頭も出走した、2022年の京都金杯。GI馬で、58kgを背負ったステルヴィオこそ、外枠が響いたか8着に敗れたものの、57.5kgを背負った4頭のうち3頭が、1、2、4着と好走。ほぼ実力どおりの決着となった。

前述したとおり、上位に入線した馬の中でも、唯一後方から末脚を伸ばして勝利したザダルのレース内容は秀逸。6歳ながらまだこれが13戦目で、今後、春のマイル王を目指して安田記念に向かうのか、その動向が注目される。

写真:バン太

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