[重賞回顧]悲願花、結実の時〜2022年・京成杯オータムハンデ〜

いよいよ秋競馬が開幕。これまで続いていた北海道開催、小倉開催が終わりを迎え、10月頭まで続く中山、中京開催がスタート。中京ではセントウルSが、中山では京成杯オータムハンデと、それぞれサマーシリーズの最終戦が行われた。

ハンデ戦らしく毎年ほとんど激しい叩き合いが演じられるこの競走、本年の1番人気には5歳牡馬のファルコニアが推されていた。

前年夏、OP復帰後初戦となるエプソムCで3着と好走して以降、重賞級で惜しいレースを何戦も続けてきた同馬。前走の中京記念でも後一歩のところまで迫りながらも、僅かに届かず3着となった。そろそろ悲願の重賞タイトルが欲しいところなのは間違い無く、ここで重賞初制覇を決めたいところ。

続く2番人気に、こちらもファルコニアと同世代のダーリントンホール。3歳時に共同通信杯を制してからはしばらく低迷していたものの、昨秋の富士S以降は着実に調子を上げてきた。前走のエプソムC、前々走のダービー卿CTと連続3着。こちらも善戦続きにピリオドを打ちたい。

3番人気のミスニューヨークは得意の中山コースで重賞2勝目を狙い、4番人気ベレヌスはサマーマイルシリーズ逆転優勝へ万全の体勢で臨む。ここまでが単勝オッズ一桁台。さらには新進気鋭、古馬と夏から戦い続けてきたコムストックロード、春先に波乱の立役者となったクリノプレミアムなど個性派も数多く、どの馬が勝ってもおかしくないメンバーが揃っていた。

レース概況

本馬場入り後シュリが左前脚跛行のため競走除外となり、13頭立てと変わった京成杯オータムハンデ。ポケット地点からゲートが開くと7番ルークズネストがやや立ち遅れるほかは綺麗なスタート。好発から最内枠の利も活かしてベレヌスがそのまま先頭に立ち、コムストックロードが2番手、ファルコニアがそれに続く3番手。

このまま落ち着くか──と思われたのも束の間、外から岩田康成騎手跨るミッキーブリランテが一気の進出を仕掛け先頭へと変わっていった。スローになること、そして今の中山の馬場状態を読み切った進出により、一気に単騎先頭の座をもぎ取った。

後方に位置したタガノディアマンテとルークズネストの2頭がやや離れて位置する以外は馬群ほぼ一団で過ぎて行く。

800m地点でやや馬群のペースが上がったか、外に位置していたクリノプレミアム、レインボーフラッグが進出。逆にインのコムストックロードは若干手応えが悪くなったか行き脚が鈍い。しかしそのまま先団の様相が大きく変わる事はなく直線へ。

奇襲を仕掛けたミッキーブリランテの脚は鈍る事なく、依然インコースで先頭。外から同枠オレンジ帽のファルコニアが並びかけてくるが譲らない。

外から進出してきたクリノプレミアムがベレヌスを捉え3番手に上がってくるが、前を行く2頭に比べやや脚色は鈍い。先団で間を突こうとするミスニューヨーク、後方から突っ込んでくるダーリントンホールもじわじわとした伸びで、先団に追いつくには遠い。先頭争いは完全にミッキーブリランテとファルコニアの一騎打ちとなった。

内で復活を賭して粘るミッキーブリランテ、外から悲願の重賞制覇を賭けて一完歩ずつ確実に脚を伸ばすファルコニア。

300m続いた両者の争い……軍配が上がったのは外、ファルコニアだった。

1年間オープンクラスで培ってきた経験と実績が、ついに花開いた瞬間だった。

上位入線馬と注目馬短評

1着 ファルコニア

今回の勝利で重賞初制覇を成し遂げた。この1年間の奮闘が身を結んだ結果でもある。兄のトーセンカンビーナも重賞で惜しい競馬が続いており、兄弟にとっても悲願の重賞タイトルが手に入った形となった。

これまでのレースでは好位追走からとらえきれないというレースが続いていたが、今回は最後まで伸び切って先頭をとらえた。ミッキーブリランテが外から伸びてきた際も動じる事なくどっしりと構えられていたのは、西の舞台で成長を見せたメイケイエール同様、昔見せていた若さも抜け大人になった証を見せてくれたという事だろう。

距離を伸ばしたローテーションも視野に入ることから、今後マイルから中距離路線でどう活躍を見せていくか期待したい。

2着 ミッキーブリランテ

今春の東風S以来となる好走。今回は今までのレースとは違い積極的に前を狙いに行く競馬を見せてくれた。スローペースと読み切って前へと出していった岩田康成騎手の手腕も見事。今回のこの走りが復活の大きなきっかけとなってくる可能性も十分にあり、今後の走りに期待は高まる。

3着 クリノプレミアム

春に大波乱を巻き起こした場所で再び好走。牡馬を交えた戦いは年明け初戦の京都金杯以来だが、その時も5着に好走していて、十分にこのクラス相手でも通用することを改めて見せてくれた。コーナーの多いコースでの好走は今後のレース選択にも幅が出たと言える。G1初挑戦のヴィクトリアマイルこそ東京ワンターンマイルで苦戦したという事もあるが、コーナリングが多くなる阪神でのエリザベス女王杯、マイルCSなどでは注意が必要な存在になってくるのではないだろうか。

総評

勝利したファルコニアを管理する高野友和調教師は、前日にも紫苑Sをスタニングローズで勝利。秋競馬の開幕とともに、重賞連勝を果たした。スタニングローズ、ファルコニアともに、春は後もう一歩のところで悔し涙を飲んだ2頭。夏を超え、充実の秋を迎えた今、タイトル獲得に向けて大きな一歩を踏み出した。

そして、これで今年のサマーマイルシリーズもフィナーレを迎えた。この勝利でファルコニアは累計ポイントを15とし、2位の座に輝いている。1位こそ米子S・関屋記念を連勝したウインカーネリアンに明け渡したものの、ファルコニア自身もこの夏でかつて見せた気性の悪さはなりを潜めたように、秋の大舞台に向けて確かな成長を見せてくれた。

夏を超え、いよいよ聞こえ始めた秋の足音は、もうすぐそこまで迫っている。ひと夏を越した上がり馬達か、春の実績馬がその挑戦を弾き返すのか……見据える大舞台に向け、戦いの火蓋が切って落とされた。

写真:だいゆい

あなたにおすすめの記事