[重賞回顧]クラシック戦線に向けてキタサンブラック産駒が好発進!大物ソールオリエンスの走りに衝撃が走る。~2023年・京成杯~

師走を超え、ロングラン開催も残すところあと2週。

締めに向かって走り始めた中山の舞台だが、この日は春を見据えるうえで重要な一戦、京成杯が開催された。

中山芝2000mは4月の皐月賞と同舞台。まだまだ遠い未来に思われるクラシック第1戦目だが、日付に起こしてみればもう残り3ヶ月。そう遠くない将来、風薫るこの中山で優駿たちが鎬を削ることとなる。

そんな未来を占う一戦、1番人気に推されたのはセブンマジシャン。2週間前、ホープフルSで3番人気の支持を受けながら6着。直線外目に持ち出すもキレ負け、とはいえ前2頭が完全に残っていた中での6着で、1着のドゥラエレーデとのタイム差も0.4と大きな差があるわけでもないところから、むしろのびしろが見えたともとらえられる。実績的にもデビューから2連勝、G1出走と上位クラスで、血統的にもハーツクライ系のジャスタウェイを父に持つことからゆっくりと成長していくタイプ。本番までの3か月でどこまで成長できるかの期待を込めての1番人気に支持されていた。

そして、最終的にセブンマジシャンとタイ人気に推されることとなった新進気鋭のソールオリエンス。母スキア、父キタサンブラックの牡馬は、兄にヴァンドギャルドを持つ良血。新馬戦で1.4倍の断然人気に応える競り合い勝ちを見せ、2戦目にいきなり重賞初挑戦となるこの舞台を選んできた。血統構成的に兄であるヴァンドギャルドのイメージも強い同馬にとって、2000mという距離に若干不安が残りつつ、ファンは血の持つ底力に期待を寄せた。

この2頭から少し離れた、とはいっても4.2倍の3番人気にベゴニア賞を勝利したシャンパンカラー。ベゴニア賞ではスタートから先手を取り、最後は迫るヒップホップソウルをクビ差封じ込めて連勝、無敗のまま重賞に参戦してきた。新馬は控える競馬、ベゴニア賞は逃げる競馬と、2戦ですでに全く別の脚質を経験できていえることはここでも大きな強みになるはず。父はドゥラメンテと、こちらも良血。すでに前年ドゥラエレーデ、リバティアイランドが世代の王者に名乗りを上げている中、その争いに割って入ることができるかどうか。

上位1桁台のオッズはこの3頭に絞られ、あとは10倍以上のオッズとなった。しかし10倍台も拮抗し、シーウィザード、シルヴァーデューク、グラニット、サヴォーナの4頭が差なく立ち並び、大きく離れた44倍にシルバースペード、更に離れたオメガリッチマンただ1頭が118倍というオッズ構成でレースを迎えた。

レース概況

外からグラニットが好スタートを決め、ここもやはりという感じでそのまま先手を取る。内のサヴォーナがシーウィザードにやや寄られて後方からのスタートになり、あおるような格好でゲートを出たシルバースペードも後方から。いい形でスタートを出たグラニットが機嫌よく単騎先頭の形となる一方、それにつられるような格好でやや行きたがるシャンパンカラー。それを見ながらシーウィザードが最内にコースを取った。

シルヴァーデューク、オメガリッチマンがそのすぐ後ろに位置し、1番人気の2頭はゆっくり後方から。セブンマジシャンの鞍上、クリストフ・ルメール騎手がソールオリエンスを若干見やるように1コーナーで横を向く。最後方にやや出負けしたサヴォーナ、シルバースペードが位置し、向こう正面へと差し掛かっていった。

軽快に飛ばすグラニットのリードは3から4馬身。1.02.5の1000m通過タイムはかなりゆったりしていたものの、3コーナーでややピッチが上がった。600の標識で2番手からシャンパンカラーが押し上げ、追随してシーウィザード、シルヴァーデュークも早めに仕掛けてグラニットの後ろへ。ソールオリエンスも外からまくるようにスピードを上げ、後方に待機したセブンマジシャンもそれを見て仕掛けを開始。やや開いていた馬群が一気に凝縮する形で4コーナーをカーブして直線へ向いてきた。

直線、ソールオリエンスが大きく外に振られ、あおりを食ってセブンマジシャンの前がやや狭くなる。つられてシルバースペードもかなり外へ振られ、内中外大きくばらけた格好になった。

坂の手前、粘るグラニットを外からとらえるシャンパンカラー。しかし、前で争う2頭の外から一陣の風が吹く。大外に振られ、態勢を整えなおしたソールオリエンスがただ1頭違う脚色でものすごい勢いで伸び始め、一気に先頭2頭をとらえたかと思うとそのまま後続との差をあっという間に広げてゆく。坂の登り、1馬身から2馬身、後方から追い込んでくるオメガリッチマン、セブンマジシャンらを向こうに回し、その差を詰まらせることがない。3か月後への夢を乗せて、寒空の中山から新緑の舞台に向けて、新星ソールオリエンスが羽ばたいた。

上位入線馬と注目馬短評

1着 ソールオリエンス

圧巻のひと言。4コーナーで外に振られ、伸び始めたときも内に切れ込みながら走り、そのまま伸びてゴール坂を駆け抜けるという異次元っぷり。まだまだ幼い面を見せながらの完勝に、力が1.2枚抜けているように感じた。

その姿は父キタサンブラックの同世代のライバル、ドゥラメンテの皐月賞を思い起こさせるような荒々しさ。まだまだ走りも気性も粗削りなのは間違いないが、今後クラシック戦線で台風の目になるのは間違いないだろう。

2着 オメガリッチマン

前走、ジュニアCで7着に敗れ、中9日での出走ながら2着に激走。デビュー後の最長距離、しかも4角で不利を受けながらも、2着に伸びてきた。118倍の最低人気ながらの激走。オープン2戦目で早くもクラス慣れしたか、この後の戦線過程に期待がかかる。

3着 セブンマジシャン

4角不利がありながらも3着に食い込んできた。勝ったソールオリエンスに上がり3Fこそ及ばないが、内の同じ位置にいたサヴォーナよりも脚色は勝り、不利がありながらもしっかり3着に食い込んできたのは実力の証明だろう。

総評

9頭立ての小頭数ながら、レース内容的にはかなり濃いものが見ることができた今年の京成杯。勝利したソールオリエンスは、まだ混沌を極めるクラシック戦線において、間違いなくこの後主役級に名乗りを上げる衝撃の走り。とはいえ、まだまだ若さも見られる走りで、4コーナーでは大きく外に振られる場面もあった。小頭数が功を奏した部分もあり、これが本番フルゲートの4コーナーではこうはいかないだろう。残り3か月の中、どれほど成長してこの場所に帰ってくることができるか楽しみな1頭でもある。

そしてソールオリエンスの父、キタサンブラックは昨年のイクイノックスに続いてまたもクラシック候補を輩出。自身の粘り腰、闘争心に加えて産駒は瞬発力が強いタイプも多く、祖父のブラックタイド、あるいは弟のディープインパクトのスピードが存分に受け継がれているように感じることにも注目したい。

まず狙うはクラシック一冠目、皐月賞。この後の彼の走りに、期待が高まる。

写真:shin 1

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