[重賞回顧]史上初の2場開催JBC、地元大井の生え抜きサブノジュニアがJRA勢を撃破!

今年で20年目を迎えたダート競馬の祭典、JBC。
大井競馬場では例年どおりにJBCレディスクラシック、JBCスプリント、JBCクラシックの3競走が行われたが、北海道2歳優駿を引き継ぐ形で新たに新設されたJBC2歳優駿の舞台は北海道・門別競馬場。
史上初となる2場開催で行われた。

例年であれば多くの観客で溢れるJBCデーではあるが、今年競馬場に入場できたのは抽選を突破したファンのみ。大井競馬場は例年とは違う場内の雰囲気で、ソーシャルディスタンスを保つことや大声を出してはいけないなど様々な制限はありながらも、ファンの熱気を感じることができた1日だった。

JBCレディスクラシック

単勝1.3倍と断然の支持を集めていたのは、前走のレディスプレリュードで2着に0.6差をつける強いレースをみせたマルシュロレーヌ。パドックでも落ち着いて周回していて、力は発揮できる出来にあるように感じた。

レースはサルサディオーネがすんなりと逃げる形となった。
淀みなくペースは流れ、直線では2番手を追走していたファッショニスタと3番手内目にいたマドラスチェックと馬体を併せた追い比べが続き、手に汗握る大接戦に。

ゴール前でわずかに抜け出したのは2番人気のファッショニスタだった。

騎乗した北村友一騎手は「馬が頑張ってくれて、最後までかわされないという闘志を見せてくれたところが嬉しかった」とコメント。ファッショニスタは一昨年、昨年と2年連続で3着という結果に終わっており、3度目の挑戦にしてようやく掴んだJBCのタイトルに嬉しさもひとしおだ。

2着マドラスチェックは、道中砂を被らないように上手く乗って、接戦に持ち込んだだけに悔しい敗戦。ゴールした瞬間、森泰斗騎手がなんとも言えない表情でファッショニスタの方に目線を送っていたのがそれを物語っていた──。

中団を追走し、末脚に賭けたが1番人気のマルシュロレーヌだったが、前走時のようには弾けず3着に終わっている。

JBCスプリント

東京盃組に加えて、今春の高松宮記念を勝利した快速馬モズスーパーフレアが参戦。
先行争いはさらに激化することが予想され、混戦模様となっていたJBCスプリントは、8番人気だった地元大井所属のサブノジュニアが大仕事をやってのけた。

予想どおりモズスーパーフレアが逃げたが、ヒロシゲゴールドやノブワイルドも応戦。
前半3Fの通過は33.4というハイペースとなった。
中団を追走していたサブノジュニアにとっては展開も向いたが、直線でもスムーズに進路を見つけて先行勢の脚色が一杯になるところを一気に突き抜けた。

ゴール板を駆け抜けた瞬間、大井競馬場に詰めかけた観客からは拍手が沸き起こった。大井でデビューした生え抜き馬が、大井開催のJBCで強豪JRA勢を撃破する。

そんな夢のようなことが現実となるのが競馬の凄さであり醍醐味だ。

騎乗していた矢野貴之騎手は「狙ってはいましたが、勝てたことは本当に信じられないです」とコメント。生産者である藤沢牧場の藤沢亮輔氏も「この仕事をやっていてよかった瞬間が今日だった」と語ったように、馬に携わる人全てにとって特別なレースであることを改めて感じることができたレースでもあった。

2着マテラスカイは3番手追走から最後までしぶとく粘っていて、スタートが決まれば簡単には崩れないというところを改めて見せつけた。3着ブルドッグボスは出遅れてしまったということに尽きるだろう。ゲートさえ決まっていれば……。

1番人気のジャスティンはスタートが一息だったことで、中団で揉まれる競馬となってしまった。4コーナーで頭を上げるシーンも見られるなど力を発揮できず8着に終わった。

JBC2歳優駿

──初代王者として名を刻むのはどの馬なのか。
注目の一戦となったJBC2歳優駿を制したのは6番人気、地元ホッカイドウ競馬所属のラッキードリームだった。

1コーナーで鞍上の石川倭騎手の手が動く場面が見られたが、道中は中団のインコースを追走。勝負どころでも早々にムチが入るなど、少しズブいタイプにも思われたが、徐々にポジションを押し上げると残り100mで先頭へと躍り出る。
ゴール前、前走のサッポロクラシックCでもハナ差の接戦を演じたトランセンデンスに差を詰められたものの、そのまま押し切った。

JRA勢はレイニーデイの3着が最高着順だったが、1番人気のタイセイアゲインは13着、2番人気のルーチェドーロは12着など、いずれも下位に沈んでしまった。
対照的に地元勢は4〜9着までも独占。地の利を活かすとともに、道営2歳のレベルの高さを証明したと言えるだろう。

JBCクラシック

このレースまでに行われたJBC3レースでは、1番人気馬がいずれも敗退。
波乱の決着が多かった2020年のJBCデーだったが、締めくくったのは単勝1.3倍と断然の1番人気に支持されたクリソベリル。ダート界の絶対的王者としての実力を見せつけた貫禄の勝利だった。

3歳ダート王者のダノンファラオがハナを切ったが、昨年の覇者チュウワウィザードはそれをピッタリとマーク。それらを見つつ、クリソベリルは離れた3番手からレースを進めた。
そしてクリソベリルをマークするようにオメガパフュームが追走。
直線に向いてこれらの4頭が横並びになったかと思ったが一気に突き抜け、2着オメガパフュームに2 1/2馬身差をつけた。

これで日本国内では8戦無敗、騎乗していた川田将雅騎手は「予定どおりの走りができました。前半力みながらの感覚があったが、その後は良いリズムで走っていきながら調整してくれて、力も抜群に残っていたので安心して乗れました」とコメント。
管理する音無秀孝調教師も「安心して見ていました」と両者から“安心”という言葉が聞かれた。

今後については、オーナーサイドと協議した上で決定されるが、目標はチャンピオンズCとのこと。
そして唯一敗れたサウジCにリベンジしたいという思いもあるようだ。もはや国内に敵なし、クリソベリルの連勝街道は続いていくだろう。

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