68回目を迎えたハンデの重賞、日経新春杯。
同じ関西圏で行われる2月の京都記念、3月の阪神大賞典と共に、天皇賞春から宝塚記念へと繋がる、古馬中・長距離路線伝統の重賞である。過去、このレースをステップとして、ステイゴールド、ルーラーシップ、ミッキーロケット、グローリーヴェイズなどが国内外のGⅠを制覇した。

京都競馬場が改修工事のため、2021年は中京競馬場の芝2200mへと条件を変えて行われることとなった。ハンデは、最重量のダイワキャグニーが57.5kgとなり、それに対して、最軽量のレイホーロマンスとロサグラウカは51kgで、上下差は6.5kgに設定された。

出走馬は16頭のなか、1番人気に推されたのは武豊騎手騎乗のアドマイヤビルゴだった。
2017年のセレクトセール当歳で、史上2番目となる5億8000万円(税抜)の高値で落札された同馬は、ちょうど1年前にデビュー。その新馬戦を制すると、続く皐月賞トライアルの若葉ステークスも好タイムで連勝したが、陣営はそこから皐月賞に向かわず、ダービーへと照準を定めた。

しかし、続く京都新聞杯でよもやの4着に敗れるとダービーを諦め、夏場は休養に充てられた。秋は、3勝クラスのムーンライトハンデキャップから再始動して勝利し、続くリステッド競走のアンドロメダステークスも連勝。5戦4勝の成績でここに臨んできた。

一方、2番人気に続いたのは、5歳牡馬のヴェロックス。3歳時は、牡馬クラシックに皆勤し、皐月賞が2着、ダービーと菊花賞でも3着となり、GⅠタイトルまであと一歩のところまで迫っていた。

ところが、昨年2月の小倉大賞典で9着に敗れると、その後、脚部不安を発症して長期の休養を余儀なくされる。10ヶ月ぶりの実戦となった前走の中日新聞杯では、3着とまずまずの結果を残し、今回はそこから中4週で出走してきていた。

以下、人気順では、昨年の天皇賞秋で6着に好走したダイワキャグニー、オープンに昇級後3戦し、重賞での3着が2度あるサンレイポケット、2歳時に重賞を勝ち、ヴェロックスと同様にクラシックで好走実績のあるクラージュゲリエが続いた。

レース概況

全馬ほぼきれいなスタートを切ったが、わずかに、15番のレクセランスが外へ膨れ気味に出る格好となった。それでも、大外からミスディレクション、最内からダイワキャグニーが先手を取り、アドマイヤビルゴもダッシュを決めてその後に続く。

1周目のゴール板を過ぎる辺りで早くも流れは落ち着き、16頭はほぼ一団。先頭から最後方までは10馬身ちょっとの差で、レースは2コーナーから向正面へと入った。

逃げるミスディレクションが作る流れは、1000m通過が1分0秒7のスロー。その他の上位人気馬では、アドマイヤビルゴをマークするような形でヴェロックスが5番手、さらにその後ろにクラージュゲリエとサンレイポケットが付け、この辺りでは、先頭から最後方までの差が15馬身ほどに広がっていた。

その後、3コーナーを過ぎ、4コーナーとの中間点で馬群は再び固まりはじめ、逃げるミスディレクションに、ダイワキャグニーとショウリュウイクゾが並びかけ、先行集団は3頭が横並びの状態となる。

その後ろの第2集団も、アドマイヤビルゴとヴェロックス、そしてクラージュゲリエの、やはり3頭が横並びとなった。中でも、アドマイヤビルゴとヴェロックスの人気馬2頭は、絶好の手応えで4コーナーを回ったように見えた。

迎えた最後の直線。まず、先頭に立ったのはダイワキャグニーだったが、坂の途中で今度はショウリュウイクゾがそれを交わす。追ってきたのはクラージュゲリエで、直線に向くまでは絶好の手応えに見えたアドマイヤビルゴとヴェロックスは、全く伸び脚がない。

坂を上り切って、ショウリュウイクゾのリードはおよそ1馬身半となり、クラージュゲリエが追うも、なかなかその差は詰まらない。逆に、後方から追い込んできたのは、道中離れた最後方を追走していたミスマンマミーアだった。その末脚は一完歩毎に勢いを増し、残り50mでクラージュゲリエを交わして、ショウリュウイクゾにも迫る。

しかし、最後はショウリュウイクゾが4分の3馬身差しのぎきり、1着でゴールイン。2着にミスマンマミーア、そこから1馬身4分の1遅れて3着にクラージュゲリエが入り、人気のヴェロックスとアドマイヤビルゴは、それぞれ9着と10着に敗れた。

良馬場の勝ちタイムは、2分11秒8。
ショウリュウイクゾと騎乗した団野騎手にとっては、これが人馬とも初の重賞制覇となった。

各馬短評

1着 ショウリュウイクゾ

3勝クラスから果敢に格上挑戦し、見事に結果を残した。母は、重賞3勝のショウリュウムーンという良血。そのため、2歳6月に新馬戦を勝って早くから期待されたたものの、その後は勝ちあぐね、2勝目を挙げたのは1年4ヶ月後となったが、今回ついに重賞初制覇を達成した。

前々走でアドマイヤビルゴの2着となったが、0秒2差の僅差で、なおかつ当時は斤量面でもショウリュウイクゾの方が2kg重かった。今回は、逆にこちらの方が3kg軽かったものの、オッズほどの実力差はなかったのかもしれない。

2着 ミスマンマミーア

道中は、1頭離れた最後方を追走していたが、直線猛然と追込み惜敗。無論、メンバー中最速の上がりを使っており、レースの上がり3ハロンを実に1秒上回っていた。

前日に牝馬限定戦の愛知杯があったのにも関わらず、こちらに出走してきたのは、距離にこだわっていたからだろう。それもそのはずで、これまで中央芝での複勝圏内に入ったレースは、全て2200m以上の距離だった。

3着 クラージュゲリエ

勝ち馬と同様、この馬も前走は斤量が重い立場ながら、アドマイヤビルゴにクビ差まで迫っていた。3歳時は、皐月賞5着、ダービーでも6着と善戦していたが、その後、爪の不安で長期の休養を強いられていた。

現在は爪の具合も良いようで、最後に止まってしまったところを見ると、おそらくベストは2000m。キングカメハメハ産駒のため、十分に間隔を開けた上で、金鯱賞や、少し先にはなるが新潟大賞典に出走してくれば、面白い存在になるかもしれない。

レース総評

勝利したショウリュウイクゾと団野騎手は、共にこれが重賞初制覇となった。特に、団野騎手にとっては、昨年の7月、ラジオNIKKEI賞でバビットに騎乗予定だったが、当日午後のレース中に落馬して負傷。内田騎手に乗り替わった同馬が、重賞を制するということもあった(同日のCBC賞では、同期の斎藤騎手が重賞初制覇)が、それを乗り越えての重賞制覇となる。

それでも昨年は、2年目ながら62勝を挙げて全国リーディングの15位と大躍進し、重賞でも2着1回、3着2回と、あと一歩のところまで来ていた。今年も、さらなる活躍が期待される。

また、今週の中京の芝に関しては、引き続き速い時計が出る一方で、パワーも必要という特殊な馬場となっており、先週のシンザン記念でもモーリス産駒のワン・ツー決着となったが、今週は、特にロベルトの血を持つ馬の活躍が目立った。

まず、土曜日には芝のレースが5鞍あり、3着内に入った15頭中、8頭がロベルトを持つ馬で、特に後半3レースでは、9頭中6頭がロベルトを持っていた(その内の5頭は母の父シンボリクリスエス)。日曜日も同様の傾向で、日経新春杯では該当馬が2頭しかいなかったものの、その2頭が2、3着に好走し、波乱を演出した。

いうまでもなく、そもそも、中京競馬場は直線が長く坂もあるというタフなコース設定。今開催も、前開催から中1週開けただけで開催されており、いっそうパワーが必要な馬場になってきたように思う。もちろん、当週毎にしっかり見極める必要はあるものの、急に来週から、よりスピードが求められる馬場になるということは、あまり考えられない。しかも、今年の中京開催は、まだ3週間も開催が続く。

冬の中山開催が同様の傾向となることがよくあるが、こういった馬場では、ロベルト以外にも、ステイゴールドやサドラーズウェルズを持っている馬も、合わせて注目していきたい。

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