[Rewind the race]琴乃音色~2014年・札幌記念~

夏競馬の祭典ともいえる真夏のビッグレース「札幌記念」。

夏に力をつけた上り馬、G1でも結果を残す実力馬、海外を見据えるチャレンジャーなど多くの実力馬が北の大地で激突した。今回はフランス凱旋門賞を見据えた2頭のマッチレースが繰り広げられた2014年の札幌記念について振り返っていく。


2014年。約1年の休催を経て新たな北のランドマークとして誕生した新生・札幌競馬場。待ちに待った開場とあって連日にぎわいを見せた札幌競馬場だが、その盛り上がりがひときわ高かったのが札幌記念デーだった。

JRA60周年記念として開催され、多くのイベントも行われたのだが、ファンが特に楽しみにしていたのは「2頭の勇者」による名勝負であった。

その2頭とは、ハープスターとゴールドシップ。

共に凱旋門賞を目指すためのステップレースとして、札幌記念を指名したのだ。

ハープスターは桜花賞を圧倒的な末脚で勝利。その豪脚には2歳時から注目を浴びるなど将来を嘱望される才女であった。対してゴールドシップは言わずと知れた「ヤンチャ」。絶品の捲り脚を武器に宝塚記念を制してこの札幌記念に乗り込んだ。意気揚々と凱旋門賞に向かうためにはここは負けられない。

札幌競馬場に響き渡る、生ファンファーレ。
そして割れんばかりの大歓声。
G2レースとは思えない高揚感が札幌全体を包んだように見えた。

札幌競馬場のポケット地点ではゲートインが終了。14頭が一斉に飛び出した。
まずは札幌記念連覇を目指すトウケイヘイローが先頭に立つ。続いて皐月賞馬ロゴタイプ、さらにムーンリットレイク、トウカイパラダイスなどが続いた。ハープスターとゴールドシップは揃って最後方。しかし指定席ともいえるこの位置はそれほどどよめきも起こらなかった。レースは3コーナーへ。先に動いたのはハープスター。ポジションを一つ、二つとすいすい上げていく。そして連れるようにゴールドシップも上昇を開始した。歓声が上がって間もなく、この2頭はあっという間に先団にまで取り付いた。直線に向いて抜け出したのはハープスター。川田将雅騎手の豪快な右ムチが飛ぶ。そしてゴールドシップも負けていない。離されることなくじわりじわりとハープスターを追い詰めた。ハープスターか、ゴールドシップか。2頭のマッチレースはハープスターが半馬身競り勝って勝利。

札幌記念は、才女が見事に射止めた。

あの瞬間、札幌競馬場やテレビの向こうでは2頭のマッチレースにくぎ付けになった。
日本競馬を引っ張る2頭。その直接対決は期待通り、いや期待以上の名勝負を私たちに届けてくれた。

写真:Horse Memorys

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