日本では2レースのみ行われる、短距離G1。
その中でも秋に行われるスプリンターズステークスは秋のG1戦線の開幕戦、さらには香港スプリントにつながる重要な一戦として国内外から多く注目されるレースである。
そして2013年に行われたスプリンターズステークスは、その注目度をより一層上げるレースだった。
能力の高さを世界中に知らしめ、そして父として今日でも日本競馬を支え続ける名馬、「龍王」ロードカナロア。今回はロードカナロアが圧巻のパフォーマンスを見せた2013年のスプリンターズステークスについて振り返っていく。
2012年のスプリンターズステークスでG1初制覇を果たしたロードカナロア。彼はそのままの勢いで香港スプリントも制覇する。そして初めてのG1勝利からわずか4か月で、世界の頂まで上り詰めた。
王者として迎えた2013年も快進撃は続く。
3月の高松宮記念を制覇するとマイルG1である安田記念をも勝利。
スプリントとマイルの2階級制覇を果たしたのだ。
──もはや単距離戦線では負けなしとなったロードカナロア。
しかしながら他の短距離マイスターも虎視眈々と王者を狙っていた。
王者逆転の急先鋒となったのは「個性派逃走者」ハクサンムーン。
3月の高松宮記念では10番人気3着と穴をあけた同馬は夏の間に急成長を遂げていた。
CBC賞で2着、アイビスサマーダッシュで重賞制覇とメキメキと力をつけ、サマースプリントチャンピオンを目指してセントウルステークスにコマを進めた。
ロードカナロアも出走したセントウルステークスは、スプリンターズステークスの前哨戦としての位置づけ。本番レースを占う上では重要な一戦である。そのレースはハナを奪ったハクサンムーンが意地の逃げ切り。ロードカナロアを振り切って「王者」に初勝利を挙げたのだ。
本番レースに向けて仕上げてきた夏の上り馬に二度も逆転を許すわけにはいかないだけに、ロードカナロアの真価が問われるスプリンターズステークスとなった。
レース当日。中山競馬場には4万人を超えるお客様が詰めかけた。
人気の中心はもちろんロードカナロア。
そのオッズ、何と1.3倍。
どれほどのファンの期待がこの馬に注がれたかが、オッズからでもうかがえる。
そして2番人気にハクサンムーン。単勝オッズ一桁台はこの2頭だけと、まさに一騎打ちの様相だった。
中山競馬場の3コーナー付近に置かれたゲートに続々と各馬が収まり、レーススタート。
スタートは揃ったがダッシュが効いたハクサンムーンがやはり先頭。ハナは譲らなかった。
先行集団は混戦の中、フォーエバーマークやパドトロワ、サクラゴスペルあたりが続いた。ロードカナロアは5番手辺り、ちょうどこの先行集団の後ろに付けてレースを進めた。
迎えた直線。
ハクサンムーンはここで2馬身のリードを取った。
後続は横に広がり、マヤノリュウジンやロードカナロア、外からはマジンプロスパーが先頭を追う。
残り200m。ハクサンムーンの脚が鈍ったとみるや一気に王者が襲い掛かった。
「世界のロードカナロアだ! ゴールイン!」ゴールの瞬間アナウンサーの実況が響いた。
これが世界の脚。王者の座は譲らなかった。
このレースで5つ目のG1タイトルを獲得したロードカナロア。
予定通り香港スプリントに出走し、見事連覇達成。スプリントG1完全制覇を達成し現役生活に幕を閉じた。
しかしながら引退後も、そのポテンシャルは産駒たちにしっかりと引き継がれている。
アーモンドアイやサートゥルナーリア、ダノンスマッシュなど多くの名馬が活躍。まさにロードカナロアは日本競馬界の宝と言えるだろう。
世界の頂を知る名馬はこれからも私たちを楽しませてくれるはずだ。
写真:Horse Memorys