「世界ランク第1位」。
この地球上でただ一つしかない称号である。この称号はどの分野でも憧れの物であり、同時にプレッシャーも掛かる「王者の証」である。
そして競馬界でも、世界第1位の称号はある。
2014年は、その世界第1位の称号を日本馬が獲得した、記念すべき年であった。
今回は「圧倒的王者」が厳しい戦いを跳ね除けた安田記念を振り返る。
2014年3月にドバイデューティーフリー(現ドバイターフ)を勝利したジャスタウェイ。その圧倒的なパフォーマンスで世界中のホースマンの度肝を抜き、レーティング1位の座を得て凱旋した。
天皇賞やドバイで見せた爆発的末脚は多くの競馬ファンを魅了し、次走に定めた安田記念でも直線コースで弾けてくれるだろうという期待感が多く感じられていた。
そんな安田記念だが、レース前からジャスタウェイ陣営に逆風が吹き始めた。
主戦の福永祐一騎手が騎乗停止になっただけでなく、当日まで降り続いた雨が馬場を湿らせ、当日の馬場コンディションは不良と、ジャスタウェイにとって経験していないようなレース条件となってしまったのだ。
この逆風を跳ね除けるべく、陣営は同馬に騎乗経験のある柴田善臣騎手を招聘した。
この年は、ジャスタウェイと同じハーツクライ産駒が、オークス・ダービーを連勝。ハーツクライ産駒による東京競馬場G1の三連勝がかかっているレースでもあった。
たくさんのニュースが飛び交った、王者の凱旋レース。多くの注目を受けながら日曜日を迎えた。
レース当日も、雨は降りやまなかった。
馬場状態は不良。泥が飛び交うレースが続いていた。
安田記念の人気は、ジャスタウェイの一本被り。
2番人気の3歳マイル王ミッキーアイルを突き放し、1倍台の支持を集めていた。
このレースはG1馬9頭と超豪華メンバーだったが、それでも人気が集中する点に、いかにジャスタウェイに王者たるレースが期待されていたかが伺える。
そして15時40分、レーススタート。
予想通り快足を飛ばしてミッキーアイルがハナを主張。
ジャスタウェイは中団につけた。
前半の3Fが35.1と、この馬場にしてはやや早い流れでレースは進み、4コーナーを迎える。
各馬が外へ外へと進路をとる。ジャスタウェイも進路を求めたが、グロリアスデイズが壁になり中々馬群から抜け出せない。
逆に外目を通った三浦皇成騎手騎乗のグランプリボスが抜け出した。
残り150m付近でジャスタウェイも2番手に上がったが、依然として差は1馬身弱。
完全に2頭の競馬となった一戦は、残り100mからの壮絶なたたき合いに。
三浦騎手、柴田善騎手の競り合いは、ほぼ同体でゴール。
ゴール前のストップモーション。
わずかにハナ差出たのは内、緑の勝負服ジャスタウェイだった。
ハナ差の死闘。
着差は無くとも、インパクトの残る凱旋レースを繰り広げたジャスタウェイ。
その姿は、王者の貫禄をも感じさせた。