[対談]最後の大物はいるのか?大種牡馬・ディープインパクトの産駒たち──治郎丸敬之×緒方きしん

名馬ディープインパクト急逝。
2019年に突如として舞い込んだ訃報は、日本競馬界だけに留まらない一大ニュースとなった。
果たしてディープインパクト「最後の大物」は、今年の2歳馬にいるのだろうか?
今回はその大種牡馬・ディープインパクトの産駒をテーマに語り合う。
語り手は、ベストセラー「馬体は語る」の著者・治郎丸敬之さんと、「天才のPOG青本」執筆陣の1人である緒方きしん。


緒方:さて今回のテーマは「ディープインパクト産駒」です。誰もが認める超名種牡馬で、POGとしても上位を狙うのであれば絶対に無視できない存在となります。縛りがないPOGであれば10頭ともディープ産駒を指名する猛者もいるほどです。何としてもダービー・オークスを狙える逸材を指名したいところです。

治郎丸:歴史的な名種牡馬だね。僕の馬を見る目線は、「自分が一口で出資したいかどうか」だから、手の届かない馬と思って見てしまうことが多いけど(笑)ディープインパクトは自分の個性を全面に押し出すタイプの種牡馬ではなくて、繁殖牝馬の良さを引き出している産駒が走っているから、そこをポイントとして見ていくのが良さそうかな。

緒方:良血繁殖牝馬との配合で結果を残していますからね。ディープと配合出来るレベルの牝馬はみんな良血馬と言ってしまえばそれまでですが、それにしても顕著です。世界各国からこれだけの良血繁殖が集まったのも、そうした特性によるものでしょう。

治郎丸:日本競馬界にとって、良い循環を作り出したよね。ディープ産駒の取材では「お父さん似?」「お母さん似?」と聞くようにしている。チェックしておきたいのは「お母さん似」と言われた方の馬。これまでの経験上、お母さん似の方が良い傾向にあるんだよね。お父さん似の馬は、繁殖相手の力をちゃんと引き出せていないのかもしれない。やっぱりディープ産駒は、繁殖の力を引き出してこそ。

緒方:馬体を見ていく上でも、ストームキャットの血が色濃く出ている馬を探すのがよかったりしますもんね。今年の2歳馬の父ディープ×母父ストームキャット系には下河辺牧場生産馬に良い馬が多く、サトノスバル(母コンクエストハーラネイト)やノースザワールド(母パスオブドリームズ)あたりは雰囲気があります。

治郎丸:以前、緒方くんが言ってたけど、ディープ産駒って牝馬の方が狙いやすいよね。POGならばダービー狙いの馬を指名したいところだけど、着実なポイント加算を期待できるのは牝馬だと思う。

緒方:今年のディープは、牝馬の当たり年だと思っています。超王道になりますが、サトノフラッグ全妹のサトノレイナス(母バラダセール)、アルジャンナ全妹のトレデマンド(母コンドコマンド)は大物感たっぷりで要チェックですね!あとはアパパネ×ディープインパクトのアカイトリノムスメも、アパパネ初の牝馬なんですが、これもかなり強そうです。名前、めちゃくちゃかわいいですよね(笑)クラブ馬に詳しい高橋楓さんは、社台RHの期待馬としてクライミングリリー(母コンテスティッド)を推していました。あの馬も惚れ惚れするフォルムをしています。

緒方:ただ、治郎丸さんと意見に相違があるのは、僕の場合、ディープはディープ自身の遺伝力も強いと思っているんですよね。活躍馬には明確に馬体重のボーダーラインがありますし、ダートでの活躍馬がほとんどいないというのもまさに強い「遺伝力」がある証拠だと思うんですよね。本当に繁殖の力だけをダイレクトに出すとしたら、アメリカのダート血統G1馬との間にはダート馬が生まれているはずです。

治郎丸:まあ半分はディープの血だしね(笑)でも実は、そこに落とし穴があると思っている。高額な素質馬が日本でデビューしたら、基本的には芝でデビューさせるじゃない?そこで結果を出せてしまうという点が、彼らのダート適性を見えないままで終わらせているのかもしれない。

緒方:実はサトノダイヤモンドが史上最強のダート馬だった可能性がある、というような話ですか?

治郎丸:そうそう。特にキズナなんかはあれだけ筋骨隆々だったんだから、ダート中距離で走ってみたらかなり面白かったんじゃないかなぁ。そんな意味も含めて、今年は1頭、色々と楽しみな2歳馬がいるんだよね!サラブレッドクラブライオンで募集されたブレイブライオン(母フラーテイシャスミス)。彼の個性が良い方向にいけば、歴史的名馬クラスになると思う。

緒方:ライオンRHですか!セゾンRH時代にドリームバレンチノがいたように活躍馬も多いクラブではありますが、あまり「ディープ産駒」ってイメージはないですね。

治郎丸:この馬はセレクトセールで約2億円の値がついた超期待馬だよ。生産・育成ノーザンFというのも魅力。ディープでも、ダートの大物にだってなり得る素材だと思う。仕上がりが早くて1歳の頃から調教でバシバシ動けていたから、この馬がどういう馬になるのかが興味あるな。この馬の持つ可能性は、無限大だと思う!

緒方:治郎丸さんにそこまで言わしめるとは、かなりの逸材なんですね!デビューが楽しみだなぁ……。僕はここまで牝馬ばかり紹介してきているので、牡馬も紹介するなら、シュヴァリエローズ(母ヴィアンローズ)は好きな雰囲気です。ノーザン・社台・追分以外で期待しているのは、サトノフォーチュン(母フォーチュンワード)と、フィアスプライド(母ストロベリーフェア)。どちらも馬体が良いだけでなく、底力のありそうな牝系なんですよ。治郎丸さんは牝馬で楽しみにしている馬はいますか?

治郎丸:牝馬であれば、ジェムフェザー(母オーサムフェザー)は、お母さんからアメリカ血統っぽさが馬体に伝わっていて、わかりやすい「走るディープ」かな。気性的にも安定しているし、藤原厩舎というのもいい。ミヤマザクラ級の活躍を期待したいな!ただ、どちらにせよ楽しみな馬が多すぎて、あげていくとキリがない(笑)

緒方:残り少ない世代から、コントレイル級の大物がもう1頭出てくれば面白いと思っていたんですが、サンデーにとってのディープみたいな馬だけでなく、もしかするとサンデーにとってのゴールドアリュールのような存在が出てくるかもしれないと気付かされました。頭をやわらかくしてもう一度、今年の2歳馬を眺めてみたいと思います。楽しみが広がりました!

芝だけではなくダートの大物がいるかもしれないという予想外の結論に辿り着いた今回の対談。ここであげた約10頭はどの馬も高い素質を持っていることは間違いなく、あとは無事にデビュー、そして大舞台へと向かってくれることを願うばかり。ディープ産駒について語り合える、残りの貴重な時間を堪能したい。

さて、次回はディープ後継種牡馬争いについて。ディープインパクトを「種牡馬の父」という視点で分析していく。

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