[エッセイ]冬の札幌競馬場で思いにふける。

ふと思い立ち、真冬の札幌競馬場に行ってみた。

札幌在住とはいえ、久しぶりの札幌競馬場。予報で最低気温-8.9℃と言っていたが、実際、朝は凍える寒さだった。今年の札幌は根雪になったのが遅かったが、降り積もりがドッと来て一気に街は白一色になっていた……。いつもの札幌の冬景色になった。

札幌競馬場の駐車場に車を止めてドアを開けた瞬間、ほぼ無風だったが冷たく乾いた真冬の空気がボクのカラダを包む。コロナ前には多くの"馬券アスリート"たちが予想紙を持って訪れていたであろう札幌競馬場の入口へ向かう駐車場からの通路に、ボクのブーツの靴音だけが響く。その靴音を立てる事さえ許されないくらい、訪れている人が少ない。カラダは寒いけど頭の中でイメージするレース展開に、いつもなら熱くなるのだか……久しぶりに訪れた今日は、外の寒さがとてもツラくて、そんな勝負魂さえも凍えさせる。

今年の札幌は寒い……。

競馬場の入口には、今年からプロモーションキャラクターに起用されたお2人の巨大なポスターが貼ってありボクを優しく迎えて入れてくれた──気がした。

このご時世のスタンダード、アルコール消毒などの感染対策をして競馬場の中へ。通常開催時にはたくさん設置されていた座席やマークカードをマークする為のテーブルもなく、今はガラーンとしている。

「座席がないと、こんなに広いんだ」と思いながら、ターフビジョンとゴール前の直線コースが見れるガラス張りのスマートシートの場所まで行く。間隔を開けているせいもあるのだろうけど、競馬場全体になんとなく落ち着いた空気が流れていた。「前のめりでレース観戦!」という方々が本来は多いハズだが……ボクも座席に座りすぐさま週末の熱い馬券アスリートの勝負師モードに変換。勝負師モードのテンションになるのは、寒い冬でも関係なく早いものだ……。

レースコースは当然深い雪に覆われていて、そこだけ見たら競馬場のコースだと思えない。雪の下になっているコース上の芝生は大丈夫なのだろうか? 札幌と函館の2場は寒冷な気候に強い洋芝が使われている。西洋芝と呼ばれていて暖地型と寒地型があり、札幌の芝は寒地型で寒さに強く冬でも青い芝生を保てて低い気温の下でも育つが暑さには弱い。ゴルフ場のフェアウェイにも使われているケンタッキーブルーグラス類、競技場の芝などでも使用され乾燥にも強く丈夫な芝のトールフェスク類、冬の葉色が綺麗で成長が早いが寿命が短く踏圧に弱いペレニアルライグラス類などの雪の下に埋まる芝生たち……。

今年は雪が多いが、大丈夫かい? キミたちの成長を楽しみにしている。

今年こそ夏空の下、キミたちの深く濃い緑が見たい。その上を元気いっぱい走るサラブレッドの姿を見たい。
ボクには聞こえたよ! その日の為に成長している芝生たちの鼓動が……。

冬の空気は、限りなく透き通っている。

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