新しい引退馬支援の姿〜角居先生との交流を通じて見えたこと〜

ウマフリ読者の皆様、こんにちは。
『一般社団法人 馬と歴史と未来の会』理事長の上田優子です。
以前ウマフリに掲載していただいた引退馬の再デビュー支援をはじめ、様々な角度から「新しい引退馬支援」に取り組んでいます。

先日、同じく引退馬支援をする『サンクスホースプラットフォーム』の代表であり、調教師としても数々の栄冠を手にしてきた、角居勝彦先生とお話をする機会がありました。
そこで改めて感じたことがありましたので、筆をとらせていただきます。

私たち『馬と歴史と未来の会』は、馬ふん堆肥の活用や、農業と福祉の連携をはじめとした「馬と異業種を繋ぐ、持続可能な生産サイクルを」作り出すための取り組みにチャレンジしています。

皆さんは「馬と異業種を繋ぐ、持続可能な生産サイクル」と聞いて、どういう状況をイメージされるでしょうか?

私は、農業や医療をはじめとした様々な業界を巻き込みながら、馬のみに収束しない、双方にメリットのある活動が出来る状況だと考えています。

引退馬の活用として『乗用馬』だけで利益を得て馬を生かすには、限界が来ているのではないでしょうか。
だからこそ、馬と今まで接点のなかった業種を繋ぐことが打開策になるはずです。

そしてそのサイクルを作り上げるメリットは、走れなくなった馬や乗用馬を引退した馬、高齢馬などの居場所をつくることだけでなく、そこにかかわる人の雇用の創出、さらには地域産業の活性化・観光資源に繋がるものだと考えています。

10年20年先……さらにはその未来にある引退馬支援を見据えると、そうした新しいサイクルの必要性を感じます。
そして私たちは、未来に向けて新しいサイクルを作り上げるために、馬ふん堆肥栽培の加工食品ブランド『FUMIER PROJECT』を立ち上げました。

そして、角居先生もまた、同じような考え方をしてらっしゃいました。

今回、角居先生が遠い関西から盛岡まで足を運んでくださったキッカケは、『馬と歴史と未来の会』がクラウドファンディングをしたことでした。
以前からお付き合いをさせていただき活動にも共感をいただいていましたが、このタイミングで、応援のためにお越し下さったのです。

角居先生は、地方の限界集落に馬の終の棲家と、人を癒す環境、地域を動かすエコサイクルを実現させようとして活動中です。
引退馬の現状を変える活動を始められたのは、社台グループの創業者吉田善哉氏の「馬で稼いだものは馬に恩返しせよ」という言葉に感銘を受けたことだそうです。

今では引退馬支援における旗手の一人として広く知られる角居先生ですが、活動を開始した当時は決して簡単な状況ではなかったでしょう。
競馬界でも乗馬界でも、引退後の行方を追うことがタブーとされてきた時代に、引退馬の処遇改善を唱えるのは大変だっただろうなぁ……と、今でも思います。

角居先生は、馬っこパークの取り組みなど施設見学をしながらお話して、再デビューを果たしたナグラーダにも、激励をいただきました。

マッシュルームの生産地見学では、ジオファーム八幡平にお連れして生マッシュルームも召し上がっていただきました。
やはり興味は馬ふん堆肥のできる工程や運用のようで、マッシュルーム堆肥(馬ふん堆肥栽培したマッシュルームを収穫した後の菌床土であり、有機栽培に高い効果のある堆肥)についても、ご紹介しました。

角居先生と話していて盛り上がったのは、引退馬支援活動は、自立しながら互いに連携していくべきということ。
引退馬支援を独力でやり遂げるには、いくつもの高いハードルがあります。
長く続けていくのであれば、なおさらです。

それを「馬と異業種を繋ぐ、持続可能な生産サイクル」を作り出すことで、人も馬も地域も、まとめて幸せにして、ハードルを全て解決──そんなことを、夢見ています。

少しずつみんなプラスになるシステムを作るにあたって、「農業と福祉は相性が良い」というのは、私と角居先生の共通認識。

馬が生きていることで価値を提供できる「意義」が、馬を支援する人たちを支えられるだけの収益を生むからです。それは引退馬支援システムを継続させるために不可欠なことでしょう。

その実現に向けて、一歩ずつ進んでいけたらと思っています。

一方で、私は、孤軍奮闘している個人や小さい牧場さんの自立に向けたサポートも(たとえ、ささやかだとしても)していきたいとと思っています。
その一環として、農家さんが引き取った元競走馬のいるところで作った馬ふん堆肥栽培作物を、加工食品にするため買い取る形で間接的に支援しています。

私の考える、未来を見据えた引退馬支援は「馬と異業種を繋ぐ、持続可能な生産サイクル」を中心に広がっていきます。
モデルケースを作るためにも、角居先生を含めた様々な方と連携しながら、皆さんのご理解いただけるよう、精一杯活動していきたいと思います。

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