[朝日杯フューチュリティステークス]今も駆ける スター"ウマ娘"の血を引く者たち〜日曜重賞編〜

巷で話題になっているゲームアプリ「ウマ娘 プリティーダービー」。

実際の競走馬をモデルにしたこのゲーム。登場するウマ娘たちの中に現役で走っている馬をモチーフとしたキャラクターはいませんが、子供、孫あるいは親戚にあたる馬が現役で駆けている例はたくさんあります。

そういった競走馬を「ウマ娘 プリティーダービー」から競馬を持った方々にも応援してもらいたい。そんな思いからこの「今も駆ける スターの血を引く者」では、ウマ娘にも登場するキャラクターのモデルとなった競走馬と血縁関係に当たる馬を、その週のビッグレースからピックアップして紹介していきたいと思います。

今週は朝日杯フューチュリティステークスの出走馬から3頭を紹介します。

アルナシーム

おじに今年のダービー馬シャフリヤールがいる良血馬アルナシーム。祖父に1997年の朝日杯3歳ステークス(レース名は当時のもの)を制したグラスワンダーがいます。

グラスワンダーの朝日杯出走時の成績は3戦3勝。その3勝時の2着との差は初戦が3馬身、2戦目オープンのアイビーSが5馬身、3戦目京成杯3歳ステークス(レース名は当時のもの)が6馬身とクラスを上げるごとに着差を広げる圧巻の内容。この勝ちっぷりに当時は”とんでもない怪物が現れた”と話題になっていました。

その際の比較対象としてよく登場したのがマルゼンスキー。マルゼンスキーもデビューから連戦連勝。そのほとんどが2着に大きな差をつける圧勝でした。また、マルゼンスキーは持ち込み馬(母親が外国で種付けされ日本で生まれた子供のこと)であったため、当時の規定でクラシック出走権がありませんでした。そのことが外国産馬のためマルゼンスキーと同じように(当時の)規定でクラシック出走権がなかったグラスワンダーと重ね合わせた方が多かったのかもしれません。

迎えた本番朝日杯。グラスワンダーは中団からレースを進め、3コーナーから4コーナーにかけて捲っていく展開。このレースの半マイル通過タイムは45秒台とかなりのハイペース、にもかかわらず抜群の手応えで早めに上がっていくグラスワンダーに多くの人が固唾を飲んだことでしょう。

「どこまでちぎるんだグラスワンダー!」

フジテレビの三宅正治アナウンサーは4コーナーでこう実況しています。まだ残り300mほどあるにもかかわらず「勝ち方」について言及される。当時のグラスワンダーの「突き抜け具合」がよくわかる実況だと思います。

直線は当然のように抜け出して2馬身半差の快勝。勝ちタイム1.33.6。このタイムは朝日杯が行われる中山芝1600mのレコードタイムを0.4、マルゼンスキーの朝日杯の勝ちタイム(1.34.4)を0.8上回るものでした。

この怪物性をこれも当時フジテレビで実況を担当していた三宅正治アナウンサーが「マルゼンスキーの再来」と表現しています。グラスワンダーとマルゼンスキー。朝日杯の歴史上「インパクトのある勝ち方」をした馬と言えばやはりこの2頭になるのではないでしょうか?

アルナシームは前走の東スポ杯で武豊騎手でも制御できないほどの「かかり」を見せて6着に敗れています。ただ、裏を返せばそれだけパワーがあり走ることに前向きと言う捉え方もでき「かかり」さえ制御することが出来れば能力はG1でも決して引けを取らないものがあると思います。

プルパレイ・トゥードジボン

プルパレイ・トゥードジボンの2頭はいずれも今年の新種牡馬イスラボニータ産駒です。そのイスラボニータの父にあたるのが、1994年の朝日杯3歳ステークス勝ち馬フジキセキです。

ナリタブライアンが三冠を達成した1994年は競馬界にとってエポックメーキングな出来事が起こった年となりました。その出来事とは「サンデーサイレンス産駒のデビュー」。後に、スペシャルウィーク、サイレンススズカ、アグネスタキオン、ディープインパクトなど幾多の名馬をターフに送り出すことになる稀代の大種牡馬がデビューを果たしたのがこの年でした。

1994年、JRAでデビューを果たしたサンデーサイレンス産駒は32頭。そのうち62.5%にあたる20頭が勝ちあがると言う高い勝ち上がり率を誇っていました。その中身も充実しており、プライムステージが札幌3歳ステークス(レース名は当時のもの)を制したほか、オープン特別も4勝と格の高いレースでも結果を残していました。

そのサンデーサイレンス産駒の一番槍と言える存在がフジキセキでした。フジキセキは8月20日新潟芝1200mのレースで2着に8馬身差をつける圧勝でデビュー戦を勝利で飾ると、続くもみじステークスでは当時の阪神芝1600mの3歳(旧年齢表記)レコードを0.4上回るタイムで2連勝。朝日杯3歳ステークスでも1番人気に支持されていました。

その朝日杯3歳ステークスでライバルとなったのがスキーキャプテン。武豊騎手を背にフランスのG1、ムーランドロンシャン賞を制し、日本の安田記念にも出走したフランスの名牝スキーパラダイスを姉に持つ良血外国産馬で、こちらもデビュー2連勝でG1に挑んできていました。父譲りの青鹿毛で黒さが際立つフジキセキに対し、スキーキャプテンはその名の通り真っ白な芦毛馬。この年の朝日杯はそんなコントラストが際立つ2強対決でした。

レースにおいても、好位の内目を行くフジキセキに対し、スキーキャプテンは後方で末脚を溜めると言う対照的なレース。しかし、最後の直線はやはりと言うべきか内目をスッと抜け出したフジキセキに対し、大外から強烈な末脚で追い込むスキーキャプテンと2頭の争いになりました。

最後に軍配が上がったのはフジキセキ。スキーキャプテンの追撃をクビ差しのぎ切り世代チャンピオンの座につきました。

翌年、弥生賞の後フジキセキは屈腱炎のため引退を余儀なくされます。彼が離脱したクラシックでも、皐月賞をジェニュイン、日本ダービーをタヤスツヨシといずれもサンデーサイレンス産駒が制し、いよいよサンデーサイレンス時代が到来します。もしフジキセキが無事でいたなら、この2頭とどんな勝負をしたのでしょうか。

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