19日の日曜中山メインは皐月賞トライアルのスプリングSが行われます。いまだ混戦の3歳牡馬路線ですが、土曜阪神の若葉Sと日曜中山のスプリングSで皐月賞のトライアルも終わり、同レースの出走馬も大半が決まります。現状では共同通信杯組がややリードか、といった印象です。スプリングS組がどれほどの存在感を示せるかどうか注目です。
中距離組か、マイル組か。注目のスプリングS。
このレースは1800Mで行われるので、前走で2000Mを使った馬と1600Mを使ってきた馬が混在する傾向にあります。その中で皐月賞への出走権利をかけて競い合うわけですが、ここで通用しなければクラシックを諦めてマイル路線へと向かう馬も少なくありません。今年のメンバーも中距離で実績を積んできた馬と、マイルの距離で結果を出してきた馬が混在するメンバー構成になっています。このレースの結果によっては、マイル路線や別路線へと向かっていく馬も出てくることでしょう。
先行馬が多数出走。本番さながらの厳しい流れになるか。
このレースは皐月賞TRであるので、出走権取りのために激戦が予想されます。しかも日曜中山は渋った馬場の可能性もあります。加えて逃げ・先行馬が多いメンバー構成ですので、序盤からかなり速い流れで持続的にペースが流れる可能性が高くなりそうです。
サウジアラビアRCで大逃げをして2着に残ったグラニット、デイリー杯2歳Sで逃げ切ったオールパルフェ、同コースの中山芝1800Mで逃げ切り勝ちのパクスオトマニカ、東京での1勝クラスで逃げて押し切ったべラジオオペラ・ホウオウビスケッツなど、非常に先行馬が多い今年のスプリングS。激しい先行争いが起きるのではないでしょうか。
スプリングS 注目馬紹介
セブンマジシャン - 前走は2度の不利で痛恨の3着。渋った馬場で巻き返しを誓う。
水分を含んだ馬場状態になり先行争いが激化、差し馬有利の展開になるなら、一番展開が向きそうなのがセブンマジシャンです。
2走前の黄菊賞は重馬場の中、馬群の一番外から豪快な差し切り勝ちを見せました。その勝ちっぷりから、次戦のホープフルSでは3番人気に推されましたが前半がスローだったことから展開が向かず6着まで。賞金加算を目的にレース間隔を詰めて使った前走の京成杯ではルメール騎手を迎えて万全の体制でレースに挑みましたが、直線で2度の不利を受けてしまいました。
それでも3着まで上がってきたのは地力の証明ですが、賞金加算ができなかった悔しいレースになってしまいました。皐月賞に出走するためにはここで権利を取るしかありません。前走のリベンジ含めて勝負度合いが強いのではないでしょうか。
今回は外枠ですが、不利を受けにくいこと、馬場が渋った場合は黄菊賞の再現を狙えるのでそこまで不利ではないでしょう。スムーズに回って能力を出し切れば勝ち切れる可能性は十分です。
べラジオオペラ - まだ底を見せていない1頭。真価を見せる時が来たか。
このレースは連勝馬が何頭かいますが、その中でも注目を集めているのが、べラジオオペラです。新馬戦では2番手から上り3ハロン33秒6の切れを見せて勝利。続く2戦目のセントポーリア賞でも2番手から上り3ハロン33秒9で押し切って勝利をあげました。
展開的にはスローからのヨーイドンのレースだったのでまだ能力の底を見せていないと言っていいでしょう。
今回は先行馬が多数なので先行できないかもしれませんが、鋭い末脚もあるので、仮に差しに回っても力を発揮できるのではないでしょうか。中山替わりも気になりますが、500キロを超える馬体ですので高低差のある中山コースも大丈夫のはず。2018年に開業した陣営に、初めての重賞タイトルをもたらす可能性もあるのではないでしょうか。
ホウオウビスケッツ - 新種牡馬マインドユアビスケッツの代表産駒を目指して。
ここまで2頭の関西馬を挙げてきましたが、関東馬の代表格はホウオウビスケッツでしょう。
2戦2勝と未だ無敗。加えて前走のフリージア賞は距離延長であっても逃げて好タイム勝ちでした。7番人気でややマークが薄かったことで恵まれた面があったにせよ、後半の1000Mは全て1ハロン11秒台の速い流れで進んで2着馬に1馬身半差をつける完勝ですから、能力は相当です。現3歳世代が初年度産駒の新種牡馬マインドユアビスケッツの優秀さを見せつけたと言っていいでしょう。
昨年は同じく米国血統のドレフォン産駒のジオグリフが皐月賞を制しましたが、ホウオウビスケッツの走りはそれを彷彿させるようなものでした。
米国血統らしく、スピードとパワーを兼備し、持続力に優れた走りをするなら中山芝1800Mは寧ろ向きそうです。ゲートが速いので先行して良い位置につけて、持続的に長くいい脚を使えば自然と勝ち負けできるような走りができるのではないでしょうか。
パクスオトマニカ - 前走は同コースで好タイム勝ち。その再現を狙う。
今年のスプリングSは非常に混戦ですし、展開や馬場もどうなるか判断がつきにくいレースであるのは確かです。そんな状況ですから、同条件を少しでも経験している馬も気になります。
前走、同コースの若竹賞を勝ったパクスオトマニカは今回その経験がいきそうです。前走の若竹賞は、単にスプリングSと同じ中山芝1800Mというだけではなく、馬場状態も近かったように思えます。今回は多頭数なので全く同じ条件というわけではありませんが、キャリアが少ない3歳馬にとって大きなアドバンテージを得ていると言っていいでしょう。
若竹賞では逃げて前半800Mをスローに落とし、残り1000M地点から残り200Mまで1ハロン11秒台の速い流れで進んで押し切りました。タイムも優秀ですので、今回も同じだけ走れるのであれば、好勝負は可能でしょう。逃げられるかどうかは分かりませんが、レース中盤から長く良い脚を使う展開には出来ると思うので、あとは相手次第というところではないでしょうか。
オールパルフェ - 唯一の重賞勝ち馬が、改めて力を見せつける。
今回のスプリングSは皐月賞TRではありますが、今年のメンバーで重賞勝ち馬がオールパルフェのみという点からも、3歳牡馬路線はいまだに混迷な状態と言えるでしょう。
1勝クラスを勝った馬たちの真価を判断する場ではありますが、重賞勝ち馬であるオールパルフェに対して力関係はどうなのか、という点は考えておかなければいけません。
デイリー杯2歳Sではダノンタッチダウンを負かしていますが、同馬は朝日杯2着。もしダノンタッチダウンがスプリングSに出ていたらおそらく上位人気になったことでしょう。未知数さにおいては連勝馬や1勝クラス勝ちの馬に劣りますが、能力の比較では互角以上に戦えていても不思議ではありません。
オールパルフェは朝日杯では6着に敗れてしまいましたが、前半800Mを45秒7のHペース(後半800Mは48秒2)で逃げる形になった事と、直線で向かい風が厳しかった事が重なって失速してしまいました。
今回も先行馬が多いのでHペースに巻き込まれる可能性もありますが、スローで流れた時はすんなり先行して後続を完封する可能性もありそうです。地力は上位ですし、中山のコース実績はあるのであとは距離延長に対応できれば…というところでしょう。
アイスグリーン - 1番人気5着だった新潟2歳S。悔しい敗戦から立て直し、再び重賞の舞台へ。
前走の小倉芝2000Mのあすなろ賞を勝ったアイスグリーンも面白い存在です。
小倉芝1800Mの未勝利戦を勝った次に新潟2歳Sに1番人気で臨みましたが5着。レースの前にテンションが上がり過ぎて消耗してしまったようです。続く前走のあすなろ賞でもテンションが高かったですが、レースでは後方の外目を進んでレース中盤から前に押し上げていき、早め先頭に立つ競馬。直線では外から2着馬に一旦交わされましたが、しぶとく差し返して勝利をあげています。ここでは力が一枚上でした。
やや重馬場で、1000M通過後からペースが速くなるという展開でしたが、そんな流れの中で外から位置を上げて長くいい脚を使ってしぶとく勝ち切りました。小倉の適性が高いのは確かですが、長く良い脚を使えますし、この馬の持つしぶとさと勝負根性は今回の舞台と展開に向きそうです。
重賞出走が少ないメンバー構成で、重賞1番人気に推された素質の高さに期待したいですね。
さて、未だ勢力図が見えない3歳牡馬クラシック路線ですが、今週の若葉SとスプリングSで皐月賞トライアルは終了です。
混迷のままクラシックを迎えるのか、それとも遅れてきた大物がここで圧勝して主役になるのか──。
権利取りを目指して激しい戦いが繰り広げられれば、きっと面白いレースになるのではないでしょうか。
また、このレースを境にしてクラシック路線へ進む馬、マイル路線へ進む馬と別れていく分岐点のようなレースです。走りをしっかりと見届けて、今後の参考にしていきたいですね。この記事が皆さんの参考になれば幸いです。
写真:かぼす