![[連載・クワイトファインプロジェクト]第46回 タイキポーラとニホンピロスワン、そして2013年4月へと続く因縁](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2022/05/D8iRJGFUwAA44Wc.jpeg)
ウマフリ編集部さんより、タイキポーラの訃報によせてコラムの執筆依頼をいただきました。ですが、実はタイキポーラのことは当コラムの第10回(1999年エルフィンステークス1,2着馬のライバル物語)で書いているのです。我ながらまあまあ良くかけた文章だと思うので、ぜひそちらもご覧になってください。
で、改めてタイキポーラの戦績を振り返ってみると、デビュー戦は小林徹弥騎手だったのですね。残念ながら若くして鬼籍に入られました。その後に騎乗した騎手も、25年という月日の中でほとんどが現役を引退し、JRAの現役としては(その時は)短期免許で騎乗していた当時22歳のミルコ・デムーロ騎手だけです。とは言え、わざわざ「JRAの現役」と書いたことでお気づきかもしれませんが、園田競馬の現役ジョッキーである川原正一騎手、小牧太騎手も騎乗しています。改めて、このお二人は本当に凄い。まさに鉄人ですね。
タイキポーラ自身、重賞競走にはGⅠエリザベス女王杯も含め10回出走しているのですが、いわゆる「馬券圏内(3着以内)」に入ったのは唯一の勝利である2001年マーメイドSだけです。だから、このレースがまさしく「一瞬の輝き」だったのかもしれません。そのマーメイドSも昨年度2024年でその名称に幕が下ろされました。これも時代の流れでしょうか。
2001年のマーメイドS、タイキポーラ以外の8頭の顔触れは以下の通りです。
2着 ヤマカツスズラン(2000年阪神3歳牝馬S勝ち、のちに2001年クイーンS、2002年マーメイドS、全日本サラブレッドC等)
3着 サファイヤコースト
4着 ミツワトップレディ(のちに2002年クイーンS勝ち)
5着 ニホンピロスワン(2000年ローズS勝ち)
6着 マルカキャンディ(のちに2001年府中牝馬S勝ち。ベルシャザールの母)
7着 ラティール(ヒットザターゲットの母)
8着 ヒシピナクル(1999年ローズS勝ち、ヒシアマゾン全妹)
9着 フサイチユーキャン
GⅠ勝ち馬1頭、GⅡ勝ち馬2頭、のちの重賞勝ち馬2頭というメンバーなので、当時のGⅢとしてはレベルは決して低くなかったと思います。レースぶりも、逃げた1番人気ヤマカツスズランを2番手マークし直線突き放して3馬身半ですから完勝と言っていい。
一方、2番人気に支持されながら5着に敗れたニホンピロスワン。タイキポーラの1歳下で、ニホンピロウイナーの姪ですがこの馬自身はマイルから中距離で活躍しました。年齢の違いもあってタイキポーラと戦ったのはこの1戦だけでしたが、牡馬相手の朝日チャレンジCで3着に入るなどタフな活躍を見せてくれた馬でした。
そして、このニホンピロスワン、実はクワイトファインと浅からぬ因縁があるのです。中央のGⅡ馬とクワイトファイン、一見接点はなさそうなのですが、私も調べてみて驚きました。ここからは、タイキポーラと全く関係ないニッチな話題になり申し訳ありませんが、競走馬の歴史を振り返るとこんな因縁もあるよ、という話としてお読みいただければ幸いです。
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マーメイドSの出走馬たちはいずれも繁殖牝馬となり、マルカキャンディとラティールからは重賞勝ち馬も誕生しました。もちろんニホンピロスワンも繁殖入りし、貴重なニホンピロエバートの血の後継者として大いに期待されたと思いますが、結果として5頭の産駒を残した(うちデビューできたのは4頭)だけでした。デビューが叶った産駒としては最後となったのが、4番仔のニホンピロナデシコという牝馬です。この名前を見たとき、私の頭のなかで12年前の記憶がすぐに蘇りました。
忘れもしない2013年4月5日、クワイトファインが私の所有となって名古屋での初戦を迎えたレースで、一番人気に応え勝利したのがこの馬なのです。この馬は次走も連勝し(2歳時に中央登録があったため)中央復帰も可能となったのですが、それにも関わらずその後は勝ち星を挙げることなく、名古屋所属のままで競走生活を終えています。クワイトファインが南関移籍を勝ち取った10月のレースでは共に走りましたが、好調期を過ぎてしまったのかクワイトファインに先着を許しました。
父サクラバクシンオー、母ニホンピロスワンという血統面をみれば申し分のない馬ですが、繁殖牝馬として血を残すことはありませんでした。サラオク等の流通手段が活発な今なら、繁殖目的での所有も含めいくらでも買い手がついたでしょうが、それも時代の流れなのかなと思います。
それに、こうやって血統から過去のライバルたちの足跡を追えるのも、競馬の楽しみの一つなのかも知れませんね。
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写真:かず