[日経新春杯]勢いと斤量を味方に! 条件戦からの連勝で日経新春杯を制した馬たち

目黒記念、アルゼンチン共和国杯とともに、年に3レースしか組まれていないGⅡのハンデ戦、日経新春杯。過去10年は特に、前走条件戦出走馬の活躍が目立つ。恵まれた斤量と勢いを味方に格上馬を撃破する馬も少なくなく、とりわけ2020年の1から3着馬は、いずれも前走条件戦出走馬だった。

今回は、条件戦からの連勝で日経新春杯を制した馬たちを振り返っていく。

2004年 シルクフェイマス

1997年の宝塚記念を制したマーベラスサンデー。その初年度産駒の一頭、シルクフェイマスがデビューしたのは、阪神ダート1400mの3歳新馬戦だった。後に、中・長距離路線で活躍したことを思えば意外な選択といえるが、4戦目に同じ条件で初勝利を手にすると、初めて芝のレースに出走した東京1600mの500万条件(現1勝クラス)で2勝目をあげる。

その後、しばらく勝ち星から遠ざかったシルクフェイマスが本格化の兆しを見せたのは、1年後の北海道シリーズ。降級2戦目の湯浜特別を快勝すると、洞爺湖特別7着をはさんで日高特別から比叡Sまで3連勝を決め、一気にオープンへと上り詰めた。

そして、5歳シーズンの初戦に選ばれたのが、神戸新聞杯以来、久々の重賞出走となる日経新春杯だった。

この年の日経新春杯は、いかにもハンデ戦というメンバー構成。最終的にシルクフェイマスが1番人気に推されたものの、単勝オッズは4.5倍で、他に4頭が10倍を切る混戦だった。

また斤量に関しても、シルクフェイマスに課された55キロは前年の産経大阪杯(当時GⅡ)勝ち馬でトップハンデの58キロを背負うタガノマイバッハとわずか3キロ差。決して恵まれた斤量とはいえなかった。それでも、連勝中の勢いを味方につけるシルクフェイマスは、この逆境を跳ね返すように素晴らしいパフォーマンスを披露した。

レースは、積極果敢に逃げるキングフィデリアをタガノマイバッハが追う展開。1000m通過は59秒8と淀みない流れながら、先頭から5馬身差の好位5番手を確保したシルクフェイマスは、中間点付近から徐々に進出を開始した。

そして、勝負所の坂の下りで2番手まで押し上げて迎えた直線。内回りとの合流点で早くも先頭に立ち、そこから馬場の中央に持ち出されると、あとは後続を突き放すばかりの独壇場となった。

ハンデ戦とは本来、出走全馬が横一線でゴールできるよう、実績のある馬や近走好調馬が重い斤量を背負い、実績の乏しい馬や近走低迷している馬が軽い斤量を背負うレースである。しかし、この時のシルクフェイマスは、4コーナーで2番手に位置していたにもかかわらず、上がり最速をマークしたのだから後続はひとたまりもない。まるでハンデ戦とは思えないほどの大楽勝となり、終わってみれば2着マーブルチーフに6馬身差、タイムにして1秒差をつける圧勝は、日経新春杯がハンデ戦に戻った94年以降では圧倒的な最大着差で、初の重賞タイトルを楽々と手中に収めたのである。

その後、惜しくもビッグタイトル獲得こそ叶わなかったものの、シルクフェイマスは続く京都記念で5連勝を達成すると、同年の宝塚記念で2着、天皇賞(春)と有馬記念も3着に好走。さらに、翌年以降は怪我や脚部不安に悩まされながらも、7歳時に出走したアメリカジョッキークラブCで3度目の重賞制覇を成し遂げ、10歳で現役生活を終えるまでGⅠやGⅡには欠かせない名バイプレーヤーとして人気を博した。

2018年 パフォーマプロミス

父は01年の日経新春杯覇者で大種牡馬のステイゴールド。おばに00年のオークスを制したシルクプリマドンナがいるパフォーマプロミスは、初戦からいきなりの3連勝。育成時から体質が弱く、デビューは3歳9月と遅れたものの、既走馬相手にいわゆる「スーパー未勝利」を一発でクリアし素質の片鱗を見せた。

その後、よもやの3連敗を喫するも、所属する藤原英昭厩舎や生まれ故郷ノーザンファームの手厚いバックアップもあり、徐々に体質は強化。使い込むことが可能となり、7戦目の熊野特別で久々の勝利を手にした。

そして、1600万条件(現3勝クラス)も4戦で卒業し、6歳シーズン初戦にして重賞初挑戦の舞台となったのが日経新春杯だった。

シルクフェイマスと同様、昇級初戦ながら1番人気に支持されたパフォーマプロミス。ただ、このレースには他にも、前年の日経新春杯勝ち馬で当年の宝塚記念を制することになるミッキーロケットや、重賞未勝利ながらオープン3勝のモンドインテロ。さらには、GⅡ金鯱賞で2着の実績があるロードヴァンドールと骨っぽいメンバーが集結した。

それでも、体質強化で充実期を迎えたパフォーマプロミスは、初コンビのM・デムーロ騎手とともに重賞初挑戦とは思えないほど堂々としたレース運びを展開する。

レースは、ほぼ揃ったスタートからロードヴァンドールが先手をとり、前走1000万条件(現2勝クラス)の特別を逃げ切ったガンコが続く展開。パフォーマプロミスは、ミッキーロケットやカラビナとともにその直後につけた。

最初の1000m通過は1分2秒0と遅かったものの著しく折り合いを欠くような馬はおらず、出走12頭は10馬身以内とほぼ一団。そこから坂を上って下り、残り600mを切っても隊列にほとんど変化はないまま直線勝負を迎えた。

直線に入ると、逃げ込みを図るロードヴァンドールにガンコが迫り、外からパフォーマプロミスとミッキーロケットが接近するも、直線半ばでミッキーロケットが脱落。上位争いが3頭に絞られると、残り100mを切ってからパフォーマプロミスのギアがもう一段上がり、そこから猛烈な末脚を繰り出した。

その姿はまるで、引退レースの香港ヴァーズで絶望的な位置から前を差し切った父ステイゴールドを彷彿とさせるもの。そんな父譲りの闘争心がパフォーマプロミスに火をつけたか、一完歩毎に前との差を詰めると、粘るロードヴァンドールを図ったように差し切ったところがゴールだった。

遅れてきた素質馬が、待望の重賞挑戦で出した一発回答。あまりにも見事な初タイトル獲得劇は同時に、ステイゴールドとの父仔制覇が達成された瞬間でもあった。

そして、この勝利をきっかけにもう一つ上のステージを目指したパフォーマプロミスは、目黒記念3着、宝塚記念9着をはさんで、秋にはアルゼンチン共和国杯も優勝。3つあるハンデGⅡのうち2レースを制した。

ところが、翌春の天皇賞3着後に骨折が判明すると、復帰戦として予定されていた京都記念の直前に骨膜が出て、やむなく同レースを回避。結果、休養期間は1年以上に及んだものの、今度こその復帰戦となった鳴尾記念で、前年のオークス馬ラヴズオンリーユーとの激闘を制し優勝。前走から中404日での重賞勝利は、グレード制導入以降3番目に長い記録だった。

残念ながらその後、パフォーマプロミスは21年2月のダイヤモンドS後に骨折が判明し引退。乗馬になる予定であったものの、同年4月に再び骨折し、長い闘病生活の末にこの世を去った。

それでも、体質の弱さや一度限りのスーパー未勝利、ケガによる長期休養といった逆境をことごとく乗り越え、父譲りの闘志あふれる走りでファンを魅了したパフォーマプロミス。その勇姿を、我々は決して忘れない。

2013年 カポーティスター

ジャスタウェイやリスグラシューに代表されるように、本格化すると手がつけられないほどの強さを発揮するハーツクライ産駒。13年の日経新春杯を制したカポーティスターもまた、GⅡという決して低くない壁を、前走条件戦勝利からクリアした馬だった。

二代母が96年の年度代表馬サクラローレルの半姉というカポーティスターは、10年のセレクトセール1歳市場において税込4095万円で落札された。その後、栗東・矢作芳人厩舎からデビューを果たすと、初戦が2着、2戦目は3着と惜敗したものの3戦目で初勝利。さらに続く新緑賞も快勝し、連闘で青葉賞へと駒を進めた(9着)。

その後は休養に充てられ最終週の小倉で復帰すると、復帰4戦目の北野特別(1000万条件)を快勝。再び3ヶ月の休養をはさみ格上挑戦で出走したのが、4歳シーズン初戦の日経新春杯だった。

このレースで、初勝利を手にしたとき以来、久々に高倉稜騎手とコンビを組んだカポーティスターに課されたハンデは52キロ。これは出走16頭中2位タイの軽量で、トップハンデのメイショウカンパクとは5.5キロの斤量差があった。

さらに、引いた枠番は1枠2番と、開幕2週目の京都では絶好といえる枠。これら2つの恩恵を活かさない手はなかった。

レースは、エナージバイオがわずかに出遅れるも、ほぼ揃ったスタートからホッコーガンバが逃げ、トップゾーンが続く展開。カポーティスターは先頭から4馬身差の5番手を確保した。最初の1000m通過は1分0秒4のミドルペースで、この流れを考慮すれば絶好といえる位置取りだった。

その後、坂の上り下りでもペースはさほど変わらず、縦長の隊列が凝縮して迎えた直線。高倉騎手が思い切って内ラチ沿いに馬を誘導すると、カポーティスターもこれに応えて矢のような末脚を発揮。あまりにも鮮やかな抜け出しが決まり、残り200の標識を前に早くも先頭へと躍り出た。

追ってきたのはトウカイパラダイスとムスカテールの実績馬2頭で、前との差を懸命に詰めようとするもカポーティスターの末脚は衰えることなく、最後は高倉騎手の派手なガッツポーズとともに1着でゴールイン。前走1000万条件からの下剋上ともいえる勝利で、一気にGⅡの壁を突破してみせたのである。

結果的に、これがカポーティスターにとって最後の勝利となったものの、正確なデータが残っている1986年以降、古馬の平地GⅡを勝利した馬はのべ839頭で、前走が2勝クラス(1000万条件)以下だったのは、そのうちわずか11頭。期間内の日経新春杯では、カポーティスターが唯一である。

さらに、2026年1月12日現在、前走2勝クラス出走馬による古馬GⅡ勝利は、この時のカポーティスターが最後。当時、デビュー4年目の高倉騎手とカポーティスターが起こした鮮やかな「下剋上勝利」は、歴史的な偉業だった。

写真:s1nihs

あなたにおすすめの記事