[重賞回顧]競り合い断ち切る豪脚炸裂!~2026年・京成杯~ 

中山競馬場芝2000m。年末の2歳G1ホープフルステークス、そして春のクラシック一冠目・皐月賞と同じ舞台で行われるのが、3歳重賞・G3京成杯だ。

1月に行われるこの一戦は、近年になって後の活躍馬が目立つようになってきた。
2023年には、大外から豪快に捲ったソールオリエンスがそのまま連勝で皐月賞を制覇。
6着に敗れたシャンパンカラーも、後にNHKマイルカップを勝ち、2頭のG1馬を輩出した。
2024年は、のちのダービー馬ダノンデサイルと、菊花賞馬アーバンシックによる直接対決が繰り広げられた。
2025年も例外ではない。2着だったドラゴンブーストは年末のディセンバーステークスを制してリステッド競走を勝利。10着に敗れたゲルチュタールも、距離が短かった印象の京成杯から一転、菊花賞4着を経て、今年初戦の日経新春杯を勝利、長距離G1戦線へ名乗りを上げている。

2026年の京成杯にも、将来の飛躍を目指す15頭が集った。
1番人気に推されたのはフィエールマン産駒のソラネルマン。母母ブエナビスタという良血馬で、中山の新馬戦では勝ち馬とタイム差無しの2着。その後、東京の未勝利戦を逃げ切って勝ち上がり、3戦目で重賞に挑む。
2番人気はスワーヴリチャード産駒のグリーンエナジー。鈴江崇文オーナーにとって、個人名義で所有する初めてにして、現時点で唯一の重賞挑戦馬だ。前走東京の未勝利戦では2番手から上り32秒9の末脚を披露。初の中山コースで、その切れ味を再び発揮できるかが注目される。
続く人気はキセキ産駒のアクセス。現時点でJRAで勝ち上がっているキセキ産駒2頭(アクセスとサイン)は、いずれも父と同じ石川達絵オーナーの所有馬だ。夏の上り馬として菊花賞へ進んだ父よりも早く、クラシック戦線に名を連ねることができるだろうか。

上位人気馬の父を見渡すと、いずれも2010年代後半以降に現役生活を送っていた世代。
出走馬の血統表からも、確かに“次世代”の足音が聞こえてくる。

晴天の中山競馬場。
春に向けて名乗りを上げるべく、新進気鋭の3歳馬たちによる京成杯が、いま幕を開けようとしていた。

レース概況

スタートではパラディオンが後手を踏んだが、その他の各馬はおおむね五分の発進。斎藤新騎手が押してジーネキングがハナを主張し、これをマテンロウゲイル、ソラネルマンが追走する構えを見せる。3頭は内埒沿いに寄りながら前へ。2枠のステラスペースは最内枠のブラックハヤテの位置を確認しつつ先行集団に加わった。

5番手付近にショウグンマサムネ、ポルフュロゲネトス、エリプティクカーブ、アクセスが中団を形成。後方にはブラックハヤテ、アメテュストスが続き、後方4-5番手にタイダルロックとグリーンエナジー。さらにアッカン、パラディオン、ポッドクロスが最後方で1コーナーへ向かう。

向こう正面ではジーネキングが淡々としたペースで逃げ、ソラネルマンがぴたりとマーク。2-3馬身差でマテンロウゲイルが3番手につけ、ポルフュロゲネトスがコーナーワークを利して早めに位置を押し上げる。前半1000mは59秒9。大きく隊列は動かず、3コーナーへ入った。

隊列が崩れない中、外からアクセス、アッカンが仕掛けるが、前では粘るジーネキングを残り200mでソラネルマンがとらえ、その外からマテンロウゲイルが前に出る。先行勢2頭の競り合いで勝敗が決するかに見えたが、残り100m付近、馬群の内からグリーンエナジーが一気に脚を伸ばして差し切った。

4コーナーでは後方3番手付近にいたグリーンエナジーは、各馬が外へ動く中で空いた最内をロスなく通過。直線では一度、前で粘るステラスペースの外へ出すために我慢し、残り200mで進路が開くと戸崎騎手のアクションに応えて一気に加速した。

2着には先行策を選んだマテンロウゲイル、競り合いの中で目標にされたソラネルマンが3着。4着には外から空いたスペースを懸命に追ったタイダルロック、5着には最内を立ち回ったステラスペースが粘り込んだ。先行馬3頭が掲示板を確保する中で、グリーンエナジーとタイダルロックの末脚は鮮やかだった。

各馬短評

1着 グリーンエナジー 戸崎圭太騎手

道中は後方寄りで脚を溜め、勝負どころまでじっくりと構える競馬。前走は2番手追走だったが、今回はマテンロウゲイル、ソラネルマンが好走する先行有利の展開の中、末脚性能でねじ伏せてみせた圧巻の走りだった。
4コーナーでは各馬が外へ動く中、空いた最内をロスなく回れた戸崎騎手の判断が大きい。

直線では粘っていたステラスペースを交わすために我慢し、残り200mで進路が開けると一気に加速。
先行勢が崩れない展開を、スイッチが入った瞬間の鋭い末脚でまとめて差し切った内容は鮮やかだった。

ジーネキングとソラネルマンがペースを緩めなかったことで、実質的には本番さながらの流れ。その中で追走し、最後に進路さえ確保できれば一気に抜け出せる力を証明した。上り3ハロン33秒8は、この舞台ではなかなかお目にかかれない数字だ。
皐月賞、そしてダービーへ。能力を発揮できれば、大舞台でも末脚で観る者を魅了してくれそうだ。

2着 マテンロウゲイル 横山和生騎手

グリーンエナジーが前走よりも位置を下げる選択で結果を出した一方、マテンロウゲイルは逃げるジーネキング、追いかけるソラネルマンを明確な目標に定めて運んだ横山和生騎手の判断が光った。
実際に直線ではソラネルマンとの競り合いを制しており、この内容であれば、勝ったグリーンエナジーの末脚を素直に称えるほかない。

逃げ馬を射程に入れた正攻法の競馬を選択し、最後は差し馬に屈したものの、先行力と粘り強さは十分に評価できる。これまでの3戦はスローペースからの抜け出しが中心だったが、今回のようにペースが上がっても対応できた点は、皐月賞に向けて大きな収穫と言えるだろう。

デビューから4戦、中京の新馬戦に始まり、阪神、京都、そして中山と競馬場を問わず安定した走りを見せてきたレースセンスも魅力だ。現時点で2着以下がなく、まだ底を見せていない点も含め、今後の路線選択に注目したい存在である。

3着 ソラネルマン ルメール騎手

父は中長距離で強烈な末脚を披露したG1競走3勝馬フィエールマン。馬体にも父の面影はあるが、極端な長躯短背ではなく、逃げるジーネキングをぴったりと追いかけられるピッチの利いた走法が印象的だった。
そのジーネキングを明確にマークし、好位から正攻法の競馬。向こう正面でもプレッシャーをかけ続け、粘り合いの展開へと持ち込んだ。

直線では一度先頭に立つ場面もあり、能力の高さは十分に示した。ただ、その分マテンロウゲイル、グリーンエナジーにとっては格好の目標となり、最後は差し込まれる形に。展開の厳しさを考えれば、着順以上に評価できる内容だったと言える。

ホープフルステークスでもフィエールマン産駒のフォルテアンジェロが2着に好走しており、中山2000mを現時点で走り切るために、父が示したスタミナと持続力の血が味方しているのかもしれない。時計の単純比較はできないが、ソラネルマンの未勝利戦の勝ち時計2分00秒0は、翌日にフォルテアンジェロが同距離の百日草特別で記録した時計を上回っている。

皐月賞へ向けてもう一戦走るとすれば、持ち時計の速さに加え、逃げ馬をマークしながらレースを組み立てられる巧さは大きな武器になる。どこかで権利をつかみ、クラシックの舞台に挑んでほしい一頭だ。

レース総評

3歳1月という時期ながら、この京成杯はレース全体の完成度が高かった。
ホープフルステークスでも2番手で運んでいた逃げ馬ジーネキングを、今回は明確なペースメーカーとして捉え、主導権を握る競馬を見せたソラネルマンのレースセンスは特筆すべきものだろう。展開を作りながら自らも勝ちに行く、その判断力はこの時期の3歳馬としては完成度が高い。

そのソラネルマンを追いかける形で、実際に直線で競り合いに持ち込んだマテンロウゲイルと横山和生騎手の立ち回りも巧みだった。逃げ馬を射程に入れた正攻法の競馬で、ペースが緩まない中でも力を発揮できた点は、今後のクラシック戦線を見据えても大きな収穫と言える。

普通であれば、この2頭の競り合いがそのまま着順に反映されても不思議ではない流れだった。しかし、そこに強烈な末脚で割って入ったのがグリーンエナジーだ。展開を待ち、進路を見極め、最後に一気に勝負を決めてしまう走りは、能力そのものが一段上であることを示していた。

ホープフルステークスを制し、次走に共同通信杯を予定しているロブチェンが、唯一のワールドプレミア産駒の勝ち馬として注目を集めているが、グリーンエナジーはオーナーにとって現状唯一の所有馬という背景も興味深い。血統、戦歴、立場の異なる馬たちが、それぞれの個性を持ってクラシック戦線に集ってくる可能性を感じさせる一戦だった。

もちろん、これからトライアルレースが続き、さらに大物が現れる可能性は十分にある。それでも、今回の勝ち時計1分59秒3は、京成杯が中山芝2000m戦となった1999年以降で過去2番目の好時計。
今年もまた、京成杯組が本番で存在感を示しても何ら不思議ではない。そう感じさせるだけの、ハイレベルな一戦だった。

写真:ぼん、@QZygbdf8L1kEB9U

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