[重賞回顧]母の誕生日に、百合の花束を~2026年・スプリングステークス~ 

皐月賞へのトライアルレース、スプリングステークスは中山競馬場芝1800mで行われる。弥生賞と同じく上位3頭に皐月賞への優先出走権が与えられるが、10頭立てで行われた弥生賞に対し、こちらは16頭が参戦。また出走メンバーの多くが逃げ・先行タイプの脚質で、どの人馬が主導権を握るのかにも注目が集まった。

1番人気に推されたのはクレパスキュラー。札幌の新馬戦を勝ち上がった後、1勝クラスのひいらぎ賞を1分32秒9の高速タイムで制し2連勝。この日のメインレース、ターコイズステークスの決着時計よりも速い走破時計だった。なお2着のリゾートアイランドは年始のジュニアカップで4頭ハナ差の激戦を制しており、レースレベルの高さも示している。

2番人気はアスクエジンバラ。今回が7戦目と経験値の多さが武器だ。近走は岩田康誠騎手が騎乗馬につきっきりで稽古をつけるスタイルを取っており、アスクエジンバラもここへ向けて入念に乗り込まれてきた。その成果を発揮し、クラシックへとつなげることが出来るだろうか。

3番人気以下も、中山での勝利経験を評価するか、出走レースの内容を評価するかで人気が割れており、どの馬にもチャンスがありそうなメンバー構成だ。

皐月賞を目指す人馬の戦いは、レース前から激戦が予想された。

レース概況

川崎競馬から参戦したロードレイジングは初芝でダッシュがつかなかったが、対照的にスタートを決めた各馬は序盤から主導権争いを展開した。

1コーナーで先手を取ったのはフレイムスター。2番手にジーネキング、直後にテルヒコウが続き、その内にマカナアネラとラストスマイルが並ぶ。その1列後ろにミスターライト、マイネルシンベリン、ガリレアが控え、逃げ争いには加わらず中団で流れに乗った。

その後ろからクレパスキュラーが一気に先行ポジションまで押し上げる。アクロフェイズはこれについていかず後方待機。アクロフェイズの後ろにはアスクエジンバラ、サウンドムーブが続き、その2馬身ほど後ろにタイキルッジェーロ、サノノグレーター、アウダーシアが3頭横並び。離れた最後方をロードレイジングが追走した。

クレパスキュラーが押し上げたことで、1000m通過は59.3秒。序盤から脚を使ってポジションを取りに行った馬たちは息を入れる間もなく、3コーナーへ入る苦しい展開となった。

まずクレパスキュラーを捉えに動いたのはミスターライト。さらにその後ろからは差し馬たちが馬群の外を回しながら直線へ向かう。

3コーナーで先頭に立ったクレパスキュラーは直線に入っても先行馬たちを振り切って先頭。ルメール騎手が後続を確認しながら粘り込みを図るが、内からラストスマイル、外からアクロフェイズとアスクエジンバラ、さらに大外からアウダーシアが追い込んでくる。

残り200mまで先頭にいたクレパスキュラーが坂を上がって手応え一杯になると、アクロフェイズとアスクエジンバラが横並びでこれを交わす。そこへ大外からアウダーシアも一気に並びかけた。

最後の数完歩、ダイナミックなストライドで2頭を交わしたアウダーシアが勝利。競り合ったアクロフェイズとアスクエジンバラはハナ差でアスクエジンバラが先着し、この3頭が皐月賞への優先出走権を手にした。

各馬短評

1着 アウダーシア 津村明秀騎手

道中最後方から大外を回り、メンバー最速の上がりで中山の坂を駆け上がったアウダーシア。前走まで騎乗していたルメール騎手がクレバスキュラーに騎乗したため、今回は津村明秀騎手との初コンビとなったが、鞍上は中山金杯、フェアリーステークス、共同通信杯に続いて年始から重賞4勝目と絶好調。アウダーシアにとっては追い風となる乗り替わりだったのかもしれない。

トライアルよりもペースが上がる皐月賞に向けて、前を追いかけながら最後に確かな末脚を繰り出して勝てたことは大きな収穫だ。母リリーノーブルに似た胴の奥行きがある馬体でもあり、折り合いのつく展開ならさらに距離が延びても対応できそうだ。

2着 アスクエジンバラ 岩田康誠騎手

2歳秋のサウジアラビアロイヤルカップから岩田康誠騎手とコンビを組むアスクエジンバラ。
今回は後方に控えて末脚を伸ばす形を選び、直線ではアクロフェイズとの攻防を制して2着で皐月賞への切符を手に入れた。

2歳夏のオープン競走コスモス賞をキング騎手と勝ち、岩田騎手に替わってからも京都2歳ステークス2着、ホープフルステークス3着と、
出走メンバー中で最も豊富な重賞実績を誇る。
実践での積み重ねがあったからこそ、ここ後方待機の競馬を試せたことは大きな収穫だったと言える。

ペースが緩めば前へ、今回のように流れが速くなれば控えて末脚勝負へ。
レースの幅が広がったことで、本番でも展開に応じた立ち回りが期待できる存在になった。

3着 アクロフェイズ 西村淳也騎手

新馬戦こそダート1800mで結果が出なかったが、芝2000mの未勝利戦で勝ち上がり、前走の若駒ステークスでも2着。その内容も1000m60秒の流れを後方から早めに捲って2着に残す強い競馬で、能力の高さは十分に示していた。

今回はクレパスキュラーが先に動いたところで無理に追いかけず、待つ選択をしたうえで3コーナーから進出。アスクエジンバラと併せる形で最後までしぶとく脚を使った。クビ差、ハナ差の3着だったが、初の関東遠征をこなして皐月賞の権利を獲得。本番でも流れひとつで上位進出があっていい走りだった。

7着 クレパスキュラー C.ルメール騎手

中山マイルのひいらぎ賞を高速タイムで勝った実績を評価され、1番人気に推されたクレパスキュラー。今回は距離延長で折り合いに難しい面を見せたが、自らポジションを押し上げて流れを厳しくしながら、残り200m過ぎまで先頭で踏ん張った内容は見どころ十分だった。

勝ち馬アウダーシアとは0.4秒差。着順以上に地力の強さとスピード能力を感じさせる一戦だった。目標をNHKマイルカップに定めるのであれば、そのスピードは大きな武器になるはずだ。

レース総評

皐月賞トライアルとして行われた今年のスプリングステークスは、多くの先行馬が揃った顔ぶれ通り、序盤からポジション争いが激しくなった。そこにクレパスキュラーが押し上げていったことで1000m通過は59.3秒。決着タイム1分46秒0はレースレコードで、早い段階で脚を使った馬たちには厳しい展開となった。

そんな流れの中で最後にダイナミックな脚を使ったのがアウダーシアだった。アスクエジンバラは控える競馬で新味を見せ、アクロフェイズも待つ競馬からしぶとく脚を使って権利を獲得。クレパスキュラーもまた、自ら流れを厳しくしながら残り200m過ぎまで先頭で踏ん張っており、着順以上に内容のある一戦だったと言える。

そして3月15日は、勝ち馬アウダーシアの母リリーノーブルの誕生日でもある。アーモンドアイ、ラッキーライラックと名勝負を繰り広げた強い牝馬だったが、残念ながら昨年6月にこの世を去った。その母から受け継いだ力で皐月賞への切符を掴んだことにも、特別な意味を感じずにはいられない。

母は牝馬クラシックで名を残した馬。ならば息子は牡馬クラシックで、その先へ辿り着けるか。
リリーノーブルを知る者にとっても、アウダーシアのこれからがますます楽しみになる勝利だった。

写真:ぼん(@Jordan_Jorvon)

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