![[NHKマイルC]アドマイヤマーズ、カレンブラックヒル、メジャーエンブレム。NHKマイルCを制したダイワメジャー産駒たち](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2026/05/2026050701.jpg)
3歳ベストマイラーを決めるNHKマイルC。過去30年の歴史で、勝ち馬を最も多く送り出した種牡馬がダイワメジャーである。計20頭が出走し3勝、2着3回と優秀な成績。自身は皐月賞を制した後にダービーへ直行したものの、皐月賞の勝ち時計は速く、後にマイルGⅠを3勝した実績からも、出走していれば同年の勝ち馬キングカメハメハと好勝負を演じていたかもしれない。
残念ながら、ダイワメジャーは2023年に種牡馬を引退。2026年1月にこの世を去った。今回は産駒の出走がなく、最終世代となる現2歳の中から4頭目の勝ち馬が現れるか注目が集まる。
今回は、NHKマイルCを制したダイワメジャー産駒を振り返りたい。
■2019年 アドマイヤマーズ
アドマイヤマーズは、種牡馬ダイワメジャー8世代目の産駒。2017年のセレクトセール1歳市場において近藤利一オーナーが5,616万円(税込)で落札し、栗東・友道康夫厩舎からデビューを果たした。
M.デムーロ騎手を鞍上に迎えた初戦は6月末、中京・芝1600mの新馬戦で、後の重賞3勝馬ケイデンスコールにハナ差辛勝。続く中京2歳S(当時はオープン特別)は、一転して2着に3馬身差をつける完勝だった。
アドマイヤマーズの快進撃はその後も続き、3ヶ月半後のデイリー杯2歳Sで重賞初制覇を成し遂げると、年末の朝日杯フューチュリティSでは、牝馬ながら果敢に挑戦してきたグランアレグリアらを降しGⅠ初制覇。最優秀2歳牡馬のタイトルは、同じくM.デムーロ騎手のお手馬でホープフルSを制したサートゥルナーリアと争うことになったものの、重賞2勝の成績が評価されたアドマイヤマーズが受賞した。
ところが、さらなる飛躍を誓って迎えた3歳シーズンは、初戦の共同通信杯でダノンキングリーの2着に敗れ連勝が止まると、続く皐月賞も4着に敗戦。そこから中2週で臨んだのがNHKマイルCだった。
このレースでアドマイヤマーズを押さえて1番人気に支持されたのが、朝日杯フューチュリティSで3着に降したグランアレグリアだった。ディープインパクト産駒の同馬は、それ以来の実戦となった桜花賞をレースレコード(当時)で優勝。東京マイルは2戦2勝と得意にしており、休み明け2戦目の上積みも期待された。単勝オッズは1.5倍と圧倒的で、他に10倍を切っていたのはアドマイヤマーズだけ。GⅠ馬2頭による一騎討ちが、大方の見立てだった。
レースは、好スタートを切ったワイドファラオを、イベリス、クリノガウディー、プールヴィルの内枠3頭が交わし、最終的にイベリスが先頭に立った。スタート一息のグランアレグリアは4番手につけるも、挽回するために促したせいか、ややいきたがっている様子。一方、同じくスタートが決まらなかったアドマイヤマーズは、グランアレグリアから3馬身差の8番手につけていた。
前半800m通過は45秒8とミドルペースで、前から後ろまでは20馬身ほどの差。隊列は縦長になったものの、その隊列に大きな変化はないままレースは直線勝負を迎えた。
直線に入ると、逃げるイベリスにクリノガウディー、プールヴィル、ワイドファラオ、トオヤリトセイトが襲いかかった。一方、人気2頭はその後ろに位置し、坂下でスパートを試みたグランアレグリアが進路を外に求めようとした際、ダノンチェイサーと接触。ダノンチェイサーのさらに外にいたアドマイヤマーズもあおりを受けた。
それでも、M.デムーロ騎手が体勢を立て直すと、いよいよアクセル全開となったアドマイヤマーズは先行各馬をまとめて交わし、残り100mで先頭に躍り出た。そして、ゴール前では外からケイデンスコール、内からカテドラルに迫られたものの、これらの追撃を1/2馬身しのいで先頭ゴールイン。前2走の鬱憤を晴らす勝利は、新たな一面を見せての差し切り勝ちで、ケイデンスコールとのワンツーは奇しくもデビュー戦と同じ結果だった。

その後、秋初戦の富士Sでよもやの9着に敗れたアドマイヤマーズは、C.スミヨン騎手とのコンビで香港マイルに出走した。10頭立てながら、3連覇を目指す地元のビューティージェネレーションや、日本のGⅠ馬ノームコア、ペルシアンナイト、インディチャンプなど、非常に強力なメンバー構成ではあったものの、これらを相手に5番手から抜け出し優勝。3歳馬の優勝は香港マイル史上初の快挙だった。
実は、このおよそ1ヶ月前。近藤利一オーナーが病気のため亡くなっていた。友道調教師は、オーナーがこの日のために新調していたスーツをかわりに着てレースに臨み、ゴール後、厩舎スタッフと喜びを分かち合いながら号泣。この年の香港国際競走のハイライトといってもいいような場面だった。
結果的にこれが最後の勝利となったものの、翌年のマイルCSや香港マイルでも3着に好走したアドマイヤマーズは、その香港マイルで現役を引退。社台スタリオンステーションで種牡馬入りを果たした。すると、初年度産駒のエンブロイダリーが、桜花賞と秋華賞の二冠を制覇。アドマイヤマーズ自身は2021年から2024年まで、シャトル種牡馬として豪州のアローフィールドスタッドでも供用された。
ダイワメジャー産駒といえば、父と同じように先行して長くいい脚を使い、卓越した勝負根性を武器に粘り込むタイプが多い。ただ、晩年はそのイメージを覆す瞬発力タイプも誕生した。その「はしり」となったのがアドマイヤマーズであり、後に誕生したセリフォスやアスコリピチェーノといったGⅠ馬も、このタイプに分類されるだろう。
■2012年 カレンブラックヒル
カレンブラックヒルはダイワメジャーの初年度産駒。2009年のセレクトセール当歳市場において鈴木隆司オーナーに3,570万円(税込)で落札され、栗東・平田修厩舎からデビューを果たした。
初戦は1月京都芝・1600mの新馬戦で、逃げて2着に3馬身差をつける完勝。重馬場だったことを考慮すれば勝ち時計も優秀で、2着と3着の間には大差がついていた。
続く2戦目は同じコースでおこなわれたこぶし賞で、4コーナー先頭から押し切っての勝利、中6週で臨んだニュージーランドトロフィーは好位から抜け出し、2着セイクレットレーヴに2.1/2馬身差をつける完勝。デビュー3連勝で臨んだのがNHKマイルCだった。
これまでと同じく秋山真一郎騎手とのコンビで大一番に臨んだカレンブラックヒルは、ガンジスに次ぐ好スタートを決めると、迷うことなくハナに立った。朝日杯フューチュリティSを制したGⅠ馬アルフレードが5番手につけ、2番人気マウントシャスタはちょうど中団。ジャスタウェイをはじめとする後方4頭がバラバラで追走していたため、前から後ろまでは20馬身以上の隊列となった。
ただ、前半800m通過47秒3はミドルペース。瞬発力勝負ではやや分が悪いカレンブラックヒルにとっては、絶好の流れだった。
その後も軽快に逃げるカレンブラックヒルは、2番手レオンビスティーに対して体半分の差をキープして迎えた直線。持ったままの状態から坂の途中でようやく追い出しを開始すると、残り200mで、一気に2番手以下を4馬身も突き放した。一方、混戦の2番手争いからはアルフレードが抜け出したものの、はるか前でセーフティリードを構築していたカレンブラックヒルは、これに3.1/2馬身差をつけ先頭ゴールイン。GⅠ昇格以降初の逃げ切り勝ちは、カレンブラックヒルにとってはもちろんのこと、鞍上の秋山騎手や管理する平田調教師、そしてダイワメジャー産駒にとっても初のJRA・GⅠ制覇だった。
カレンブラックヒルはその後、秋初戦の毎日王冠も快勝しデビュー5連勝を達成。無敗での同レース制覇は、グレード制導入以降初の快挙だった。
そして、続く天皇賞(秋)で0秒4差5着と惜敗して以降はGⅠを勝利することこそ叶わなかったものの、5歳時にダービー卿チャレンジTを、6歳時に小倉大賞典を制覇。その年のマイルCSを最後に引退し、優駿スタリオンステーションで種牡馬入りを果たした。
カレンブラックヒル自身は、4歳初戦のフェブラリーSで生涯唯一となるダート戦に出走し15着と敗れた。ただ、産駒は芝31勝、ダート107勝と、どういうわけかダートでの勝利数が圧倒的に多い(2026年5月4日現在、JRAのみ)。JRAの重賞勝ち馬はいまだ誕生していないものの、アザワクやナムラマホーホ、オヌシナニモノらは、いずれも地方重賞を複数勝利している。

■2016年 メジャーエンブレム
牝馬メジャーエンブレムは、カレンブラックヒルら初年度産駒の活躍を見て種付けされたダイワメジャー5世代目の産駒。美浦・田村康仁調教師の管理馬となった。
この年、JRAに移籍したC.ルメール騎手を背に臨んだ初戦は6月東京・芝1800mの2歳新馬戦で、2着プランスシャルマンに1.1/2馬身差をつけ快勝。そこから3ヶ月の休養を挟んで出走したアスター賞も勝利し、デビュー2連勝とした。
3戦目は重賞のアルテミスSで、ここは序盤ひっかかったことが影響し、最後の最後で伏兵デンコウアンジュに差されて初黒星を喫したものの、この敗戦を糧に臨んだ阪神ジュベナイルフィリーズを2馬身差で完勝。メジャーエンブレムにとってはもちろん、ルメール騎手にとっても移籍後初のGⅠ制覇で、文句なしに2歳女王の座に就いた。
そして、年明け初戦のクイーンCは好スタートから逃げ、最後は2着に5馬身差をつける圧勝。勝ち時計の1分32秒5は、3歳馬が2月にマークしたとはおおよそ考えられないような驚愕のタイムで、桜花賞馬の座は当確かと思われた。
ところが好事魔多し。単勝オッズ1.5倍と断然の支持を集めた桜花賞で、スタート後すぐに躓いたメジャーエンブレムは、中団からレースを進めたものの、直線でキレ負けし4着に敗戦。そこから中3週で臨んだのがNHKマイルCだった。
このレースでも1番人気に推されたメジャーエンブレムは、スタートで好ダッシュを決めると、迷うことなく先手を切った。1馬身後方にシゲルノコギリザメがつけ、3番人気のイモータルは7番手を追走。GⅠホープフルSで2着の実績がある2番人気ロードクエストは後ろから2頭目に控え、末脚にかけていた。
前半800m通過は46秒0のミドルペースで、前から後ろまでは20馬身以上の隊列。この中間点付近でシゲルノコギリザメが並びかけてきたものの、メジャーエンブレムはそれをプレッシャーに感じず軽快に逃げ脚を伸ばし、レースはそのまま直線を迎えた。
直線に入ると、メジャーエンブレムは馬なりのまま2番手以下を徐々に引き離しはじめ、坂上で2馬身半のリードを取った。瞬発力勝負では分が悪いメジャーエンブレムにとって、淀みなく流れた道中は理想の形。2番手以下の各馬がいずれも決定打を欠く中、残り100mを切ったところで、ようやく大外からロードクエスト、真ん中からレインボーラインが末脚を伸ばしてきた。
それでも、メジャーエンブレムは最後までこの追撃をしのぎ切り1着ゴールイン。2着ロードクエストとの差は3/4馬身でも、その着差以上の強さで実力の高さを改めて証明し、見事2つ目のビッグタイトル獲得に成功したのだった。

ところが、メジャーエンブレムにとって、これが最後のレースとなってしまった。7月に放牧先で左後肢を痛め秋の予定が白紙になると、その後に左前肢の蹄も痛め、原因が特定できないまま年明けに競走能力喪失の診断が下るという、今までに無い形での突然の幕引きだった。
ただ、繁殖としては非常に仔出しが良く、ルーラーシップとの間に産まれた初仔プレミアエンブレムから8年連続で産駒が誕生している。自身と肩を並べるような産駒はいまだ誕生していないものの、8頭中5頭が牝馬で孫も誕生しており、一族は枝葉を伸ばし続けていくだろう。
カレンブラックヒルと同じく、スピードを武器に先行してそのまま押し切るメジャーエンブレムのスタイルは、勝負所で前を塞がれるといった不利を受けることも少なく、「速さ=強さ」を体現した競走馬の理想的な形だった。わずかキャリア7戦での引退は残念だったものの、彼女の強さはこの先も語り継がれていくことだろう。
写真:Horse Memorys、はねひろ(@hanehiro_deep)
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