[重賞回顧]若武者とのコンビで大金星~2021年・金鯱賞~

金鯱賞は、創設当初と比べて施行時期や条件が度々変わってきたが、2017年に大阪杯がGⅠに昇格してからは、その前哨戦として3月に行われるようになった。また、同年から、1着馬に大阪杯への優先出走権が与えられている。

今年の出走頭数は10頭と少なかったものの、GⅠ馬が4頭も出走。豪華なメンバーが集結したが、中でも注目は、2020年の牝馬三冠馬・デアリングタクトだった。

昨年10月、秋華賞で史上初となる無敗での牝馬三冠を達成すると、史上最高のメンバーと言われたジャパンカップでも古馬相手に3着と好走。今回は3ヶ月半ぶりの実戦となったが、前哨戦とはいえ、目標の大阪杯に向けて負けられない一戦でもあった。

一方、2番人気に推されたのはグローリーヴェイズ。
こちらは、2019年の香港ヴァーズを制したGⅠ馬で、デアリングタクトと同様、前走はジャパンカップに出走して5着に健闘。ゴール前、残り100mまでは大いに見せ場作っていただけに、今回も大きな注目が集まった。

単勝オッズで10倍を切ったのは以上の2頭で、キセキ、ブラヴァス、サトノフラッグ、ポタジェの順で、人気は続いた。

レース概況

ゲートが開くと、特に出遅れのないきれいなスタートが切られた。
ギベオンがハナを奪った一方で、3年ぶりにミルコ・デムーロ騎手が騎乗するキセキは、出遅れなかったものの後方に控えた。

逃げるギベオンに続いたのはサトノフラッグで、3番手は、ブラヴァス、グローリーヴェイズ、ポタジェの3頭が併走。デアリングタクトはその2馬身後方に構え、1コーナーから2コーナーを回った。

向正面へ入る前にはペースは落ち着いており、先頭から最後方まではおよそ10馬身ちょっとの差。前半1000mの通過は1分1秒4のスローとなったものの、折り合いを欠くような馬はいなかった。

3コーナーに入ると、ポタジェとグローリーヴェイズがやや仕掛け気味に前との差を詰め、その光景を前に見て、デアリングタクトもポジションを上げる。さらに、離れた最後方にいたキセキが、4コーナー手前から差を詰めて10頭がほぼ一団となり、レースは最後の直線へと入った。

迎えた直線勝負。

逃げるギベオンが、2番手のサトノフラッグとの差を1馬身半に広げ、坂を駆け上がる。追ってきたのは、グローリーヴェイズ、ポタジェ、デアリングタクトの3頭だったが、依然としてギベオンの粘りはしぶとく、差が詰まりそうでなかなか詰まらない。

むしろ、残り100mで、一度その差は2馬身に広がったが、ようやくエンジンがかかったデアリングタクトが2番手争いに決着をつけ、さらに一完歩ごとにギベオンとの差を詰める。

そして、最後は2頭が馬体を併せてゴール板を通過したものの、ぎりぎり粘り通したギベオンがクビ差先着。2着にデアリングタクト、3着には半馬身差でポタジェが続いた。

重馬場の勝ちタイムは、2分1秒8。

勝ったギベオンは、通算4勝目で重賞2勝目。同じ、中京2000mで行われた2018年の中日新聞杯以来、これが2年3ヶ月ぶりの勝利となった。また、金鯱賞には3年連続出走していて、三度目の挑戦で初制覇となった。

各馬短評

1着 ギベオン

3歳時にNHKマイルカップで2着となり、GⅠでの連対実績はあったものの、上述した中日新聞杯以降は、3着以内もなかった。そのため、今回の豪華メンバーの中では、最低人気でも仕方なかったが、それに反発するような大激走。

中京競馬場の芝のレースは、瞬発力よりも持久力が問われることが多く、今週は雨で馬場が渋っていたため、その比重はさらに高くなっていた。

また、初騎乗ながら、逃げて結果を出した西村騎手の好騎乗も見逃せない。

2着 デアリングタクト

まずは、パドックでのイレ込みが注目されたが、そういった場面は見られず、レース中も折り合いを欠くようなところはなかった。

ただ、ギベオンの作戦勝ちだったとはいえ、エピファネイア産駒は、中京芝の1600m以上は大の得意で、この馬の実績も合わせて考えると、やや物足りない結果と言える。

ジャパンカップでも少し気になったが、今回も4コーナーでやや置かれるようなシーンがあった。右回りの桜花賞や秋華賞でそういった点は見られず、もしかすると、左回りのコーナリングが少し苦手なのかもしれない。

次走は、香港のクイーンエリザベスⅡ世カップを予定している。
右回りということもあり、良い結果が期待できるのではないだろうか。

3着 ポタジェ

連勝が止まり、初めて連対も外してしまった。
それでも、初の重賞挑戦で三冠牝馬と半馬身差の3着は大健闘といえる内容だ。

半姉に重賞4勝のルージュバックがいて、自身も2018年セレクトセール1歳市場で税込2億円を超える値段がついた、画に描いたような超良血馬。次走以降も、動向が注目される。

レース総評

日経新春杯や先週の弥生賞など、2021年は"デビュー5年以内の若手騎手"の積極的な騎乗が、芝の中距離重賞で好結果に繋がっている。

今回、初めて重賞を制した西村騎手はデビュー4年目。レース後の勝利騎手インタビューでは、既に3名が重賞を勝っている一つ下の世代を意識しているような発言もあったが、西村騎手も、2年連続で50勝以上を挙げているホープである。

これまでは、特にローカルでの活躍が顕著だったが、間違いなく関西を代表する騎手の一人になっていくだろう。

一方、デアリングタクトにとって、2021年の初戦はやや残念な結果になってしまったが、決して悲観するような内容ではなかった。左回りのコーナリングは課題かもしれないが、言うまでもなく、この馬もコントレイルと同様に、現役最強馬になる資質は十分に備えている。

まずは、順調に香港遠征を敢行し、余すところなく、世界にその実力を見せつけてほしい。

写真:にわかトレーナー(牡)

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