「名馬」を語る スポットライトのすぐ傍で…。条件不問、重賞5勝のバイプレイヤー、マイソールサウンドの走りを振り返る 2025年1月4日 競馬は群像劇だ。しかしその中には、ひときわ輝く『主役』が確かに存在する。 純然たる実力、胸躍る冒険活劇、そして次代を創る父母として――多くの人が『主役』と認めた馬は、その時代の象徴となり、多くの言葉とともに後世に語り継がれる。そしてその傍らを駆けたライバルたちは………多くのファンにとっては、数多の物語の一部に取り込まれ... norauma
「名馬」を語る ノースフライト - みんなが恋したマイルの女王 2024年11月17日 筋肉の鎧を纏うスプリントの絶対王者が、すべてを薙ぎ倒すように抑えきれない手応えで淀の坂を駆け下りる。その直後に迫るのは研ぎ澄まされたマイルの女王。場内のボルテージが上がる。一転、2頭の周りは静寂に包まれる。2頭だけの世界、これが最後の戦い──。 馬体を合わせた2頭はそこから数十メートル。互いの力を確かめ合うように、力の... norauma
「名馬」を語る 信念が引き寄せたいたずら - クィーンスプマンテの2009年エリザベス女王杯を振り返る 2024年11月10日 密集した馬群が淀の坂を駆け上る。蹄音が大地を揺らし歓声と溶け込む。日本とアイルランドの名牝がじわりと進出を始める。 しかし、ファンの視線は遥か前方に向けられている。馬群の遥か前方をひた走る2頭は残り1000mを切ってもなお、大きなリードを保っていた。 驚愕の結末を予感し、スタンドがにわかにざわつき始める。 さまざまな声... norauma
「名馬」を語る 風の歌が聴こえたあの日 - 2006年菊花賞・ソングオブウインド 2024年10月20日 あらゆるものは通りすぎる。誰にもそれを捉えることはできない。 僕たちはそんな風にして生きている。 ──村上 春樹. 風の歌を聴け(講談社文庫)から引用 多くの人々と同じように、私は村上春樹が綴る豊かで奥深い言葉に感受性を刺激され、そのニヒルで達観し、繊細で刹那的な登場人物たちが織り成す世界観に魅了された。 通りすぎるも... norauma
「名馬」を語る ワンアンドオンリー - ”唯一無二”にして”もう一つ”の輝き 2024年9月21日 『すべては、この熱き日のために』 その舞台に辿り着くことは、それ自体がサバイバル。幾多の関門を乗り越えて誉あるゲートに辿り着いた18頭は、灼熱の府中で全力を尽くして勝利を争い、たとえその後の全てを投げうつことになろうとも、たった一つの栄光に手を伸ばす。 ──それがダービー、それがホースマンの夢である。 私たちが過去を思... norauma
「名馬」を語る その思い出はポケット一杯に - タスカータソルテ 2024年8月18日 それはもう、15年近く前のこと。最初は、その名前に惹かれた馬だった。その荒削りな走りに、心を奪われた馬だった。その気まぐれな走りに、もどかしさを感じた馬だった。 タスカータソルテ。 その名の意味は「ポケット一杯の幸せ」。心温まるネーミングだ。ダービー馬、ジャングルポケットの初年度産駒にして、その想いを受け継いだ1頭。 ... norauma
「名馬」を語る 故郷に錦を。マイネルミラノと丹内祐次の函館記念 2024年7月14日 「マイネルミラノ、丹内祐次! 地元函館で重賞勝利!」 曇天の空に実況アナウンサーの声が響き、黄金色のたてがみをなびかせながら一頭のステイゴールド産駒が悠然と駆け抜けていった。 その背にはマイネルの勝負服を着た一人の男。満面の笑みを浮かべながらぐるりとコースを一周し、詰めかけた地元ファンの前で何度も天に拳を突きあげている... norauma
それぞれの競馬愛 [追悼・藤岡康太騎手]藤岡康太騎手が魅せてくれた景色と、これからの日々を歩み続けるということ 2024年4月12日 2024年4月10日午後7時49分。 多くのファンに愛された藤岡康太騎手が私たちの前からいなくなってしまった。 享年35歳。 文字にするのも辛いほどの、大きくて深い喪失感と悲しみ。世代が殆ど同じで、誕生日も近い私にとって、同じ時代を生きてきた彼の訃報は耐えがたいものだった。訃報の届いたその日、私はそれが誤報であることを... norauma
「名馬」を語る 笑顔を振りまき、多くの幸せをもたらした名馬。みんなが『待っていた』ヒーロー、オレハマッテルゼ 2024年3月22日 「今日も来てや! 俺は待ってるで!!!」「買うてへんねん……今日は待ってへんで……」 2000年代前半、淀や仁川でこんな言葉遊びをするおっちゃんファンがいたとかいないとか…。 そのきっかけとなったのは一頭の異才。その馬は明るい尾花栗毛を持ち、緑、白玉霰、白袖赤二本輪のメンコを着け、お馴染みの小田切有一オーナーの勝負服を... norauma
「名馬」を語る 世界を夢見た砂上の韋駄天 - レッドルゼル 2024年3月3日 2024年2月25日。世界を股にかけた砂の上の韋駄天が現役引退を発表した。 彼の名はレッドルゼル。父ロードカナロア、母フレンチノワールの牡馬。 競走馬としての現役生活に別れを告げた彼が手にしたタイトルはJBCスプリント、東京盃、根岸ステークスの3つ。しかしこの馬の場合、3つ"も"ではなく3つ"しか"と一種の物足りなさを... norauma