コラム・エッセイ 2分20秒3の衝撃 - カランダガンが刻んだ未来への一撃 2025年12月5日 茜色に染まる東京競馬場。府中では見慣れぬ、けれど海の向こうで何度も見てきた、深い緑と燃えるような赤の勝負服が躍動する。 世界が憧れる大舞台を幾度も制してきた、アガ・カーン殿下のあの勝負服が、いま日本の直線を駆け抜けている。 ──カランダガン。 その名が日本を駆けていることに、胸が熱くなる。カルティエ賞年度代表馬に選ばれ... norauma
「名馬」を語る 小倉の空の下 - アサクサゲンキの長い旅路の終わりに寄せて 2025年12月3日 スタンドの呼吸が、ハッと詰まる。無事に飛越を終えると、溜めていた息がふうとほどけていく。 障害競走を前にするとき、スタンドにはいつもよりも少しだけ、「祈り」の成分が多く満ちるように思う。ただ走るだけでも大変なのに、幾つものハードルを飛び越えなければならない。平地以上に危険を伴うその舞台に身を投じる馬たちへ──ファンはど... norauma
「名勝負」を語る 輝きの証明。三冠馬コントレイルが見せた奇跡のような走り - 2021年・ジャパンカップ 2025年11月29日 飛行機雲がひとすじ、空に伸びていく。眩い夕陽が、影を長く引き伸ばす。秋も深まった府中の直線は、どこか哀愁と別れを予感させる。 2021年、ジャパンカップ。正直なところ、この日を迎えるにあたり、私はほんの少し、コントレイルの強さを疑っていた。 三冠馬は、特別な存在であってほしい。圧倒的な強さ。王者の風格。そんな姿を私は求... norauma
「名馬」を語る 黄金旅程の最後の焔 - マイネルヴァッサー 2025年11月29日 いつからだろう。 出馬表に彼の名を見る度に、胸の奥がかすかにざわめくようになったのは。 それはレース前の昂りでも、高まる緊張でもない。もっと静かで、もっと深い郷愁にも似た感情――「ひとつの血が、まだここに生きている」という実感だった。 ひんやりとした風が頬を撫でる晩秋のパドック、小柄な一頭の競走馬が淡々と歩いている。年... norauma
ニュース・ブログ ニュースコラム [追悼]強く、美しく、永遠に - ジェンティルドンナ 2025年11月28日 陽がすっかり沈んだ競馬場に、独特の気配が漂う。歓声と蹄音の余韻が空に溶け、風がどこか名残惜しげにスタンドの隙間を抜けていく。 カクテルライトがターフへ降り注ぐ中、ほんの数時間前にレースを終えたばかりの一頭の名馬が歩いている。師走の急いた空気と、一年の終わりの気配。そのすべてが、別れを惜しむ万雷の拍手と混ざり合い、惜別の... norauma
ニュース・ブログ ニュースコラム [追悼]白い頑張り屋さん。アオラキを悼んで 2025年11月15日 テレビに目をやる。競馬中継に映るのは秋の陽射しを浴びた、何気ない福島競馬場の向こう正面。 ふと、一頭の白い馬がゲートに進む姿が目に映る。 ──アオラキ。復帰戦だな。 そんな気持ちでゲートが開くのを見守る。小沢騎手に促され、アオラキは久しぶりの芝生を伸びやかに蹴って駆け出した。 白毛の馬は、そこにいるだけで自然と視線が集... norauma
「名馬」を語る 約束の風を、もう一度。パフォーマプロミスの勇姿を綴る 2025年11月9日 11月、アルゼンチン共和国杯の季節になると、思い出す馬がいる。 パフォーマプロミス。彼の名前を思い出すたび、どこか胸の奥が疼く。競馬を見続けていると、不思議とそういう馬が、いくつか心に棲みついていく。 芯が強くて、頑張り屋で、競走生活を終えるとあっという間にこの世を旅立っていった黄金色の駿馬。 彼は最初、派手な存在では... norauma
「名馬」を語る あの日、府中に閃いた光 - エイシンフラッシュ 2025年11月2日 端正な顔立ち、黒曜石のように艶めく馬体、鋼を彫り込んだような筋肉。 その身に流れるのは、重厚なドイツの血。静かな闘志が全身に宿り、瞳の奥に誇りと矜持が息づく。 彼の名はエイシンフラッシュ。 誉れ高き、第77代日本ダービー馬。 その名のとおりの閃光のような末脚でダービーを制し、割れんばかりの歓声が彼を包んだ。王となった彼... norauma
「名勝負」を語る 世界の扉を開いた日。フォーエバーヤングが刻んだ、日本競馬の夜明け 2025年11月2日 2025年11月2日。現地時間11月1日。深く澄みきった青空に西海岸の海風が吹き抜ける、カリフォルニア州・デルマー競馬場。 いくつもの国旗が翻り、世界中の競馬ファンが息を呑んで待つダートの頂上決戦、ブリーダーズカップクラシック。 10年前、いや5年前ですら夢物語に過ぎなかった。もしかしたら、この日を迎えてもなお、その瞬... norauma
それぞれの競馬愛 縁が紡いだ2000勝。メイショウと、牧場と、人 2025年8月29日 競馬場に一度でも足を運んだことがある人なら、その冠名を見ない日は無いはずだ。青い勝負服に桃色の襷と袖。ターフをひたむきに駆ける「メイショウ」の馬たちは、いつの時代も、どの競馬場でも、競馬の様々なシーンにその姿を見せ続けている。そしてその背後には、ひとりの馬主の揺るぎない情熱がある。 2025年8月。松本好雄オーナーはつ... norauma