JBC競走。
日本で唯一、1日に3レースものJpn1競走が行われる、地方競馬界の一大イベントである。
開催場が毎年違うため、その年によって違った顔を見せてくれる競走という点からも、お祭り感が満載の1日となる。
今回はそんなJBCの歴史から、個人的に思い入れ深い1日についてご紹介していく。
2014年JBC競走の舞台は岩手県・盛岡競馬場。Jpn1南部杯のコースとしても有名で、地方競馬場で唯一の芝コースを併設した競馬場だ。この年は競馬組合発足50周年記念と東日本大震災の復興を祈願して行われ、多くのお客様がこのお祭りに足を運んでいた。
そうして、盛岡JBCの1日は幕を開ける。
JBC1レース目は、JBCレディスクラシック。2014年当時で4回目とまだ若いJpn1であり、12年前の盛岡JBCではなかった砂の女王決定戦だ。このレースは、ワイルドフラッパーが1倍台と断然の人気を得ていた。前哨戦の大井でのレースを勝っていたワイルドフラッパーには、Jpn1初制覇へ大きな期待が寄せられていた。
コーリンベリーがゲートで座り込むなど少し雲行きが怪しい中、レースがスタートする。
大本命ワイルドフラッパーはゲートで遅れてしまい、後方からの競馬を余儀なくされる。3コーナーから進出をしたものの、少し苦しい競馬となってしまった。
対していい流れで競馬を進めたのが、2番人気のサンビスタであった。
しっかりと先行勢にとりつき、進出したワイルドフラッパーを見る形で競馬を進めた。そして直線でそのワイルドフラッパーを差し切って1着。断然人気のワイルドフラッパーを破っての初Jpn1制覇であった。
2レース目はJBCスプリント。
こちらは言わずもがな、短距離の王を決める1戦だ。ここは実力が拮抗したメンバー構成ではあったが、注目はこの年の高松宮記念を制したコパノリチャードの参戦だった。芝の短距離王者がJBCに挑むとあって、ノーザンリバーやドリームバレンチノといったダートの実力馬との対戦が非常に注目された。
スタートは各馬きれいに揃う。
向こう正面で徐々に馬群がばらけ、タイセイレジェンド、サトノタイガー、コパノリチャード辺りが馬群を引っ張った。その後ろに、人気のノーザンリバーとドリームバレンチノが控えていた。
4コーナーで、注目のコパノリチャードが失速。
代わってドリームバレンチノが押し上げて直線に入る。逃げ粘るタイセイレジェンドとサトノタイガーが競り合うところに、ゴール板寸前でドリームバレンチノが猛追。横一線での決着は大外のドリームバレンチノに軍配が上がった。ドリームバレンチノは昨年の同レースで2着と惜敗を喫しており、見事リベンジ達成となった。
2着は地方馬のサトノタイガーと大健闘。当時のダート短距離界の構図を体現したような大混戦であった。
3レース目は、JBCクラシック。
何とここには6頭ものG1/Jpn1馬が出走するなど非常に豪華なメンバー構成であった。その分人気もばらけ、ベストウォーリア、クリソライト以外のJpn1馬が休み明けということもあり、前哨戦の日本テレビ盃を勝ったクリソライトが1番人気となった。
レースがスタートすると、豪華メンバーを引っ張ったのは唯一のJRA・G1を勝っているコパノリッキーだった。
前走の帝王賞ではリズムを崩しての敗戦だっただけに、しっかりと先行した形だった。3コーナーで控えていた後続が接近し、4コーナーではホッコータルマエやクリソライトなどのJpn1馬が横一線に並んだ。ここから二の脚を使って踏ん張るコパノリッキー。クリソライト以下が追走するもみるみる差が開いてゴール。
楽勝で3つ目のJpn1タイトルを獲得した。
波乱の冬を演出した同馬は、完全に王者の風格をまとったレースであった。
秋の盛岡で行われた、JBC3競走。
これら3つのレースで勝った馬や好走した馬には共通点がある。それはこのレースの後も一線級で活躍したということだ。
レディスクラシックを勝ったサンビスタはその後G1チャンピオンズカップを制し、JRA・G1のタイトルまで獲得。
スプリントを制したドリームバレンチノは約3年にわたってスプリント戦線をけん引し、2着のサトノタイガーはカペラSでも中央馬とそん色ない力を見せた。
そしてクラシックを制したコパノリッキーは何とJpn1/G1を11勝と、まさにダートの王として無類の強さを見せた。
この盛岡でファンを魅了した優駿は、ここをステップに大きく羽ばたいて──秋の盛岡は多くの高揚感と満足感を、多くのファンにもたらしてくれた。
写真:マシュマロ