毎年1月から3月は、3歳重賞が多く開催される。
G1レースに大きく直結するトライアルレースも多く、クラシック戦線のなかでは重要な競走が毎週のように行われる。
そして、そこには過去に数多くの名馬が出走したことから「出世レース」と称されるレースもいくつか存在している。
毎年2月に京都競馬場で行われるきさらぎ賞もまた、出世レースの一つと言われている。
過去の勝ち馬を見渡してみるとスペシャルウィークやネオユニヴァースといったダービー馬や、アサクサキングス・ナリタトップロードなどのクラシックホースが名を連ねている。
2016年のきさらぎ賞もまた、新たな優駿の名が刻まれる予感のするレースであった。
この年のきさらぎ賞は、2頭の有力馬の激突で盛り上がっていた。
その2頭は、サトノダイヤモンドとロイカバード。
共にこの年のクラシック戦線をにぎわせる優駿として期待されていた素質馬だ。
サトノダイヤモンドはアルゼンチンのG1馬マルペンサの血を、ロイカバードはアメリカの名牝アゼリの血を引くというまさに「超良血馬」という2頭であった。
さらにこの2頭はセレクトセールで話題を呼んだ2頭でもある。
サトノダイヤモンドは取引価格2億4千万、ロイカバードは2億5千万で取引されており、この2頭の対決は「5億円対決」とも呼ばれていた。
話題性も血統的価値も、世代屈指の2頭。
この淀での激突に、多くのファンが期待で胸を膨らませていた。
レース当日の京都競馬場は冬晴れ、絶好のレースコンディションだった。
きさらぎ賞の人気はサトノダイヤモンドが1番人気で1倍台。続いてロイカバードが2番人気5.5倍、ロワアブソリューが3番人気と続いた。
単勝オッズではサトノダイヤモンドが優勢も、この2頭が人気の中心であることは揺るぎようがなかった。
9頭で行われた、少頭数の一戦。
京都競馬場の向こう正面ポケット地点でゲート入りが行われ、レースがスタート。
向こう正面での長い先行争いは好スタートを決めたオンザロックスが優位に進める。続いて口を割りながらもロワアブソリュー、さらには外枠のノガロも先団にとりつく。人気の2頭、サトノダイヤモンドとロイカバードはそれぞれ中団から後ろ辺りで脚をためていた。
そして、4コーナーを回っていよいよ直線。
直線に向いても先団にいた3頭が競り合うも、外からサトノダイヤモンドが──何とノーステッキで並んできた。
まさにうなるような手応えで先頭を捕えると、残り200m付近からは独走の一人旅。
追走するロイカバードなどを大きく引き離してゴールインした。
人気に応えるとともに、圧倒的な速さをファンの心に刻み込んだ一戦となった。
ロイカバードもしっかりと差し脚を伸ばしていたものの、最後はレプランシュに差されて3着。
その分サトノダイヤモンドの強さが光った一戦だったとも言える。
このきさらぎ賞から、満を持してクラシックに挑んだサトノダイヤモンドは3歳秋に再びこの淀の舞台で菊花賞を制覇。
さらに勢いそのままにのり、有馬記念ではキタサンブラックを差しきって優勝。
見事3歳最優秀牡馬に輝いた。
まさに名前の通り輝きに満ちた1年であったサトノダイヤモンドであったが、このきさらぎ賞での激闘が、その輝きをさらに煌びやかなものにしたに違いない。
写真:ゆーすけ