例年以上の注目度!? 今年のエリザベス女王杯は面白い!
先週は中央競馬のG1がない週でしたが、今週のエリザベス女王杯からは年末までG1が続いていきます。昨年は大波乱の結果でしたが、今年はエリザベス女王の逝去もあり、より注目が集まることになったエリザベス女王杯と言えるでしょう。
今回は、愛国から参戦したマジカルラグーンの紹介と、阪神で行われた昨年・一昨年のエリザベス女王杯を振り返りつつ、大注目のエリザベス女王杯を紹介していきます。
愛国から参戦 マジカルラグーン
今年は11年ぶりに外国馬の参戦があります。しかも11、12年前に参戦したスノーフェアリーと同じく同年の愛オークスを勝っての参戦という事で、さらに多くの注目が集まっています。
まずはその血統と戦績から紹介していきましょう。
マジカルラグーンは父ガリレオで、半兄にはキングジョージ6世&クイーンエリザベスSをコースレコードで勝つなどG1を4勝し今は日本で種牡馬をしているノヴェリストがいるという、欧州の良血馬です。
これまで7戦3勝という戦績で、その3勝目が愛オークスとなります。
愛オークスでは、道中は少し離れた2番手を進み、直線の入口で早めに先頭に立つと、迫る後続をねじ伏せるように振り切って半馬身差で勝利をあげています。1番人気に応える堂々とした勝利で、タフさと勝負根性を見せました。
ただ、走破タイムが2分34秒02という点は気になります。愛オークスのタイムとしては速くも遅くもないタイムではありますが、日本の芝、特に今の阪神芝は良馬場ならかなりの高速馬場であるため、馬場に対応できるかどうか…という点に疑問符がつきます。
興味深いのは、次戦のヨークシャーオークス。
このレースは勝ったアルピ二スタが後に凱旋門賞を制し、2着のチューズデーが後に米国のブリーダーズカップフィリー&メアターフを制するというハイレベルなメンバーでした。
マジカルラグーンはそこで1~3着馬から少し離れた4着争いをして、わずかに競り負けての5着となっています。そこの4着馬が後に凱旋門賞の前哨戦であるヴェルメイユ賞で2着のライラックロード、7着が昨年のJCで5着に食い込み今年の凱旋門賞でも5着だったグランドグローリーだった点を考えると、マジカルラグーンは欧州の牝馬戦線でトップクラスの馬と言えるでしょう。
日本の速い馬場に対応できるか? という点はありますが、時計のかかる馬場になるならスタミナと勝負根性を生かして好勝負してもおかしくないと思います。少なくとも、今のアイルランドを代表する牝馬と言えるでしょう。来年の欧州戦線でも期待したい実績馬が参戦してくれたことに、改めて感謝したいです。
2020年、2021年のエリザベス女王杯を振り返る
京都競馬場の改修により、阪神芝2200Mで行われるエリザベス女王杯。サンプル数が少ないものの、同舞台で開催されたここ2年間のレースは参考になるはずです。
2021年 エリザベス女王杯
2021年のエリザベス女王杯は10番人気のアカイイトが勝ち、2着に7番人気のステラリア、3着に9番人気のクラヴェルが入って3連単339万という大波乱の結果になりました。
──では、なぜそうした波乱が起こったのでしょうか?
カギを握るのは、当時の馬場状態です。昨年のエリザベス女王杯の週は月曜から金曜まで雨が降り、土曜は芝が良馬場だったものの、ダートがやや重での開催と、少し渋った馬場状態で行われました。芝も良馬場とはいえ、水分を含んだ馬場で行われたのでやや時計がかかる馬場だったと言えます。
そんな馬場状態の中で、先頭のシャムロックヒルと2番手のロザムールが前半1000Mを59秒0と速い流れで先行し、それを1番人気のレイパパレが4番手の内目で追走する形で進みます。有力馬は先行するレイパパレをマーク。レースの中盤もペースが落ちずに進んで、3~4コーナーで早めにレイパパレが進出して直線の入口で先頭に立ちましたが残り200Mで失速し、外から並びかけてきたアカイイトが残り200Mで交わしてそのまま勝ち切りました。2着は大外から伸びてきたステラリア、3着は最内から伸びてきたクラヴェルと、上位陣には追い込み勢が並びました。
結果から見れば、時計がかかる馬場ながら息の入らない展開で1番人気のレイパパレが強気の競馬をしたことで、後方から伸びた伏兵が台頭したという結果でした。
21年の大阪杯では重馬場で逃げ切りを果たしたレイパパレが、良馬場の2200Mでは最後失速してしまったことを考えれば、阪神芝2200Mは2000Mよりもスタミナが求められるコースと言えそうです。
今年もエリザベス女王杯が行われる11月13日は雨予報が出ているので、同様の流れになるのかもしれません。
2020年 エリザベス女王杯
また、2020年のエリザベス女王杯も簡単に振り返ります。
こちらは、スタートから2番人気のノームコアが2番手以降を離して逃げて前半1000Mを58秒9とやや速めの流れで進みます。
ノームコアはその後もそのペースを維持していたため、最後には苦しくなり、後方から早めに動いていったラッキーライラックが差し切りました。そして2、3着にも後方から追い込んだサラキア、ラヴズオンリーユーが食い込んでいます。
ノームコアが作り出した流れは、結果的には先行馬に苦しいものとなり、差し馬が台頭しています。波乱ではありませんでしたが、その点では2021年と似た流れでした。
今年も差し馬台頭の流れになるのでしょうか?
良馬場でも渋った馬場でも追い込み馬が台頭?
昨年も一昨年も、先行馬が苦しくなって追い込み馬が台頭するレースになりました。
どちらも上位人気の馬が先行していて各馬がそれを見る形で進み、その上位人気の馬が早め先頭に立つも、苦しい流れになって道中後方にいた追い込み馬が台頭するという結果となっています。
21年、22年の3着以内6頭のうち、5頭が道中10番手以降を進んでいた追い込み馬という結果からも、今年の後方勢からは目が離せません。
ただ、21年の上位馬はエリザベス女王杯では追い込んできましたが、その前のレースでは先行していた馬。流れに応じて位置取りを変更できる器用さも必要かもしれません。
今年のメンバーで先行しそうな馬には、ローザノワール、スタニングローズ、ウインマイティー、ウインマリリンと有力どころが並んでいます。
さらに、ウインキートス、クリノプレミアムといった馬たちも、スタート次第では先行するかもしれません。
展開がどうなるかは分かりませんが、スタミナと持続力を必要とする阪神芝2200Mでは見た目以上にスタミナを消費してしまって、思わぬ追い込み馬が穴をあける可能性もあるのかもしれません。また、これまで先行していた馬が差しに回って追い込んでくるケースも注意しておきたいですね。
そもそもエリザベス女王杯が行われる芝2200Mという距離が牝馬にとってなじみの少ない距離といえます。
牝馬限定重賞で芝2200M以上となるとオークスとエリザベス女王杯しかなく、牝馬限定重賞のほとんどが芝2000M以下。それゆえに、G1で勝ち負けできるような底力を持つ馬か、スタミナ型の馬でこれまでの2000M以下の距離では結果を出せなかった馬が好走するレースとなります。そのため、リピーターが好走しやすい…という背景もあります。
追い込み馬、底力のある馬、リピーターには注意が必要と言えるでしょう。
さて、いかがだったでしょうか?
昨年は大波乱だったエリザベス女王杯ですが、今年は注目点が多くメンバーも揃ったので、昨年以上に面白いレースになりそうです。
今週からR.ムーア騎手やD.レーン騎手も参戦して、騎手の面でも国際色が強くなった今年のエリザベス女王杯。
有力馬それぞれにドラマがあるので、そこに想いを巡らせながらも楽しんでいきましょう!
写真:かぼす