[朝日杯FS]G1レース直前プレビュー

今週は朝日杯FSが行われます。昨年は後にダービー馬となるドウデュースがこのレースを勝っていますが、今年はどの馬がこのレースを制し、来年以降の飛躍につなげていくのでしょうか。
来年をクラシック戦線の行方を占う上でも、注目のレースです。

同じコースでも阪神JFとはちょっと違う、朝日杯FS

朝日杯FSは前週の阪神JFと同じく阪神芝外回り1600Mで行われる2歳のG1レースですが、近年、その立ち位置が阪神JFと違ってきています。まずはその違いを挙げていきます。

  1. 年末にホープフルSがあるのでそちらに回る馬もいる
  2. 後に短距離で活躍する馬が多い

かつては中山芝1600Mで行われていた朝日杯FS。しかし同コースは内枠が有利なコースです。そうした枠による有利不利が出てしまうことを避ける意味合いもあってか、現在はコースの有利不利の少ない阪神芝1600Mに移管されています。そしてそれまで阪神芝2000Mで行われたラジオたんぱ杯2歳Sをの役割を、中山芝2000Mで行われていたホープフルSに移管し、G2の格付けを経てG1レースとして行うことになりました。これにより、かつては2歳牡馬のG1レースは朝日杯だけだったのが現在では朝日杯とホープフルSと選択肢ができて、中長距離に適性がある馬がホープフルSに回るようになり、1600Mの朝日杯はマイルや短距離に高い適性を持つ馬がより多くなっていきました。

実際、ホープフルSがG1になった2017年以降、朝日杯で3着以内に入った馬では、17年で2着のステルヴィオや、18年で勝ったアドマイヤマーズ、3着だったグランアレグリア、21年2着のセリフォス、3着のダノンスコーピオンのように後にマイルで活躍する馬が多くいます。さらに、17年の3着馬のタワーオブロンドンは後にスプリンターズSを勝ち、20年の勝ち馬グレナディアガーズは阪神カップ(G2)勝ち、18年の2着のクリノガウディー、タイセイビジョンといった、短距離馬としての活躍が目立つ馬も多いです。その一方で、2000M以上の重賞を後に勝ったのは17年の勝ち馬のダノンプレミアム(G2を2勝)と、昨年の朝日杯を勝ったドウデュース(日本ダービー)のみです。先日引退したサリオスも朝日杯を勝ちましたが重賞勝ちは1800Mまでであり、グランアレグリアも2000Mでは勝てませんでした。近年では後に1200M~1600Mで活躍が見込める馬たちが集まるG1として考えるべきレースになっています。

デイリー杯2歳S 回顧

それでは主要な前哨戦の回顧をしていきましょう。
まずは朝日杯と同じ阪神芝1600Mで行われたデイリー杯2歳Sです。

スタート後は内からショーモンが好スタートを切りますが、外枠からオールパルフェが先手を取り、ショーモンは2番手。その後は縦1列のような馬群で進み、全体的には縦長の馬群で進み、1番人気のダノンタッチダウンは後方から3番手を進みます。3~4コーナーで先行集団がひと固まりになるが逃げたオールパルフェが先頭で、1番人気のダノンタッチダウンはまだ後方で大外に回して直線へ。直線に入ると逃げたオールパルフェが2番手以降を突き離して3馬身ほどのリードを確保します。最後は2着馬が急追してくるものの、最後は半馬身差で押し切って勝利をあげました。2着は大外から上り3ハロン33秒1で追い込んできたダノンタッチダウン。そこから1馬身離れた3着は2番手を進んでいたショーモンでした。

前半800Mが47秒3に対し、後半800Mは45秒9と明らかに後半が速い流れ。展開的には先行馬が有利で、1,3,4着馬は道中1、2,3番手を進んでいた馬でした。そんな展開でも大外から鋭い脚で伸びてきたダノンタッチダウンの切れが光ったレースでした。ただ、勝ったオールパルフェもこれで3戦2勝2着1回で、新馬戦で負けた相手はサウジアラビアロイヤルカップで断然の1番人気になっていたノッキングポイント。決して展開が向いたことによるフロックではないと見ています。直線が短いコースの方が向きそうですが、先行力とセンスのある馬ですのでいい立ち回りを見せて好走する可能性十分と言えそうです。このレースからは2着馬のダノンタッチダウンが上位人気になりそうですが、勝ったオールパルフェも侮れない地力を持っているはずです。

サウジアラビアロイヤルカップ 回顧

スタート後からグラニットが飛ばしていき、2番手以降を大きく引き離して逃げます。3~4コーナーでは2番手以降に10馬身以上の差をつけたまま直線へ。直線に入ると脚が鈍ってきたが後続がなかなか差を詰められず、道中2番手を進んでいたドルチェモアのみが逃げ馬との差を詰めてゴール前で交わして勝利。1馬身強差の2着は逃げたグラニットが粘り込みました。そこから2馬身半離れた3着は道中3番手を進んでいたシルヴァーデューク。断然の1番人気だったノッキングポイントは4着でした。

前半800Mが46秒3に対し、後半800Mが47秒1と前半の方が速かったレース。
とはいえ、大逃げをした2着グラニットのタイムで2番手以降はスロー。逃げたグラニットは残り400Mで脚が止まったものの、後続が上り3ハロン33秒台の脚を使いながらもそれまでに大きな差をつけられてしまっていたので、2番手を進んでいたドルチェモアしか大逃げのグラニットを交わせなかったレースと言えます。
勝ったドルチェモアは初戦が札幌のやや重馬場でこのレースでは東京コースに対して道中追走するスピードや速い上りを出せるのか?という疑問がありましたがうまく対応できました。総合力の高さを感じさせますし、母が桜花賞を勝ったアユサンなので血統的な魅力もあります。2,3歳戦のマイル戦はピッタリと言えるでしょう。
2着のグラニットはここでは7番人気の伏兵。福島での未勝利戦は逃げ切り勝ちだったので、鞍上の嶋田騎手が思い切って大逃げの形を取ったのがハマった印象です。朝日杯でも大逃げをするのかどうかは分かりませんが、朝日杯の展開を考える上では注目の1頭です。また、同レースで3着だったシルヴァーデュークがデイリー杯では4着だったのでデイリー杯とサウジアラビアロイヤルカップでは、若干、デイリー杯の方がレベルが高かったと言えるのかもしれません。

京王杯2歳S 回顧

スタートしてフロムダスクがハナを切り、外枠からスピードオブラブが2番手となる展開、3番手にオオバンブルマイがつけて4番手以降の先行集団が固まって進み、その後ろはバラバラで進みました。3~4コーナーで後続が差を詰めて、各馬が横に広がって直線へ。直線に入っても逃げたフロムダスクとスピードオブラブが粘っていましたが、その後ろから外に進路を切り替えたオオバンブルマイが残り200Mから伸びてゴール前で交わして勝利。1馬身差の2着が際どくなり、逃げたフロムダスクがハナ差抑えて2着を確保しています。ハナ差の3着は2番手を進んでいたスピードオブラブ。

前半600Mが34秒6と平均ペースといえますが、先行する3頭が出た2ハロン目だけ10秒8と速くなり、その後ペースが緩んで残り600Mで再加速するという展開になったため、内、前を通った馬が有利だったレースといえるでしょう。当時の東京の馬場も速い馬場で、内側もそこまで荒れていなかったこと、18頭立てと多頭数だったので、外を回った馬は距離ロスが多く出てしまいました。

朝日杯に向けては勝ったオオバンブルマイの横山武騎手が『(前略)距離が延びる点は未知ですが、小さいのに根性があり、成長を期待しています』とコメントしたように、阪神芝1600Mになってどうかという面はありますが、器用な立ち回りとスピードの持続力が生きる展開になれば面白い存在になりそうです。

朝日杯の展開は先週の阪神JFに似るかもしれない?

ここまで主な前哨戦の3レースを振り返りましたが、3レースとも逃げ馬が2着以内というレースになりました。

スタート後から積極的に先行する馬が多いですし、大逃げをする馬が出てくる可能性もあります。そうなると思い出すのが先週の阪神JFです。このレースでは逃げたサンティ―テソーロがスタートからの600Mを33秒7というHペースで逃げて直線に入りましたが、直線でリバティアイランドが鋭い切れを見せて完勝という結果になりました。これを踏まえると似たような脚質のダノンダッチダウンが該当しますし、鞍上も同じ川田騎手。人気になるのは間違いないでしょう。同馬を中心に「差し脚が届くのかどうか?」が、まずは考えるべきポイントでしょうか。

阪神JFでは2着が12番人気のシンリョクカ、3着が10番人気のドゥアイズと荒れましたが、朝日杯でも似た流れになると考えるなら上記2頭の好走理由は参考になりそうです。2着のシンリョクカは新馬戦でやや重馬場ながらも上り3ハロン33秒4の切れを見せて勝っていた馬です。切れる脚を持っていて、尚且つ内をうまく立ち回ったのが2着につながったと考えていいですし、3着のドゥアイズはスタートを出ずに後方からになりましたが、前が止まるきつい展開になったからこそ距離短縮が生きたと見るべきでしょう。朝日杯でも内枠をうまく立ち回れそうな切れる脚を持つ馬、距離短縮馬は注目かもしれませんね。

土曜の馬場傾向から混戦を解くヒントを探してみる

ここまでの話で、今年の朝日杯FSが非常に難解なレースであることは感じていただいたと思いますが、それに加えて頭を悩ませる要因なのがお天気と馬場状態です。日曜はどうやら晴れる予報ですが、土曜の競馬中に雨が降り、水分を含んだ馬場状態で競馬が行われました。気温が低い時期なので馬場は乾燥せず、朝日杯FS当日の日曜も水分を含んだ馬場での開催になるのは間違いありません。先週までとはガラッと馬場状態が変わるので特徴や傾向を掴みにくいですが、土曜の午後の競馬から、芝のレースの傾向を探っていきたいと思います。

土曜の午後からの芝のレースは7、10、11、12Rの4レース。堅い決着のレースもあれば、波乱の決着のレースもあるので判断が難しいですが、血統的にはディープインパクト、アドマイヤムーンの血を持つ馬が活躍していました。前者は7Rの1着馬、10Rでは2着、12Rでは1着馬と、2着馬は母父ディープインパクト。後者は7Rの2着馬が母父に、11Rでは12番人気2着馬、12Rでは3着馬がアドマイヤムーンの血を持っていました。

また、枠番では内の枠番が有利。11Rでは5,6,2番の枠番の馬で1~3着、10Rでは内目を通った1番枠のトーホウディアスが勝利。12Rでは枠番1,2番の馬でワンツーと内枠の枠番の馬が好結果を出していました。パトロールビデオを見直してみると、内を通った馬しか上位に来れない傾向が顕著で、外を回した馬がとにかく伸びていませんでした。あくまでも土曜の馬場傾向ですが、朝日杯も内を通った馬の方が有利になるかもしれません。

もう一点気にしていただきたいのが、近走の脚質です。近3走以内で道中逃げるか2番手を進んでいた馬の好走が目立ちます。7,10Rでは1,2着馬が、11,12Rでは2,3着馬が該当します。しかも、近走では先行していたのに今回は中団からの競馬で差してくる馬が目立ちました。朝日杯でも近走先行していた馬が差しに回って好走という可能性も十分です。いくつか土曜の競馬から傾向をピックアップしましたが、この辺りにヒントがあるのかもしれません。


阪神JFとは違って後にマイラーや短距離馬を多く輩出するG1として変わりつつある朝日杯。

今年は水分を含んだ馬場状態の下、前半から積極的に先行する馬が多くなると思われるのでスタートから先行争いが激しくなる可能性も十分で目が離せません。ただ、コース自体は直線の長い阪神芝外回りの1600M。直線で鋭い差し馬が伸びてくることが多いコースだけに、「先行馬が押し切れるのか?」「差し、追い込み馬が届くのか?」と、手に汗握る展開になるのは間違いありません。

阪神JFのようにダノンタッチダウンが豪快に差し切るのか、先行馬が押し切って大波乱になるのか──今から楽しみです。この記事が皆さんの参考になれば幸いです。

写真:かぼす

あなたにおすすめの記事