桜花賞に向けて、最重要のトライアルレース
4日土曜の阪神ではチューリップ賞が行われます。今週行われる番組を確認することで季節を感じるのが競馬ファンですが、チューリップ賞と聞くと『ああ、もうそんな時期か』と思われる方も多いのではないでしょうか。同レースは桜花賞への主要なトライアルレースで、このレースを勝ったハープスター、ソウルスターリングは続く桜花賞を制覇。ジェンティルドンナ、アユサン、レッツゴードンキ、ジュエラーはチューリップ賞で負けてしまいましたが、続く桜花賞では巻き返して勝利しています。一時期は『桜花賞ではチューリップ賞で負けた馬を狙え』という格言もあったほどです。桜花賞に向けて有力馬が集まる一戦ですし、勝った馬でも負けた馬でもその後の桜花賞で結果を出した馬があまりにも多いことから、『G1に直結するレース』としてG2に格上げされています。近年は桜花賞に直行する馬も多くなりましたが、桜花賞に向けた最重要トライアルと言えるでしょう。
今年の3歳牝馬路線は阪神JFでかなり強い競馬で勝ったリバティアイランドが頭一つ抜けている状態で、同馬が桜花賞直行のローテのため、今年のチューリップ賞は2歳女王への対抗馬決定戦という構図でしょうか。出走メンバーで明らかに力が抜けていると思われる馬がいないので、このレースで強い勝ち方をする馬が現れれば、リバティアイランドの強力なライバルになるのではないでしょうか。
チューリップ賞 注目馬紹介
ドゥーラ - 戦ってきた相手を考えれば、ここでは負けられない。
ここまでの3歳牝馬路線の基準になるのが昨年の阪神JF。
勝ったリバティアイランドは強かったですが、2着以下はあまり差がなかったレースでしたし、そこで力を出し切れなかった馬もいます。ドゥーラは阪神JFでは出遅れて、後方2番手から。直線では内に切れ込んで、馬群の間を縫うように抜けてきて上り3ハロン最速の脚を使って6着まで押し上げました。直線では進路を切り替えながら上がり最速で伸びてきたので、スムーズなら上りの脚がもっと速いものだったのは確かです。
本来は比較的前につける馬ですので、出遅れずにリバティアイランドに近い位置で進めたらという「たられば」があったのは確かです。チューリップ賞は、そんな「阪神JFで出遅れなかったら…」を証明する場にしたいところでしょう。
未勝利戦では後のホープフルSを勝ったドゥラエレーデを負かし、札幌2歳Sでは阪神JFで3着のドゥアイズを負かしているドゥーラ。今回は戸崎騎手に乗り替わって期待も高まります。桜花賞を見据えての競馬になるでしょう。また、札幌2歳Sで差の無い競馬をして阪神JFでは3着だったドゥアイズが2月のクイーンカップで2着だったので前哨戦を比較する時の参考になるでしょう。その走りと結果に注目が集まる馬であることは間違いありません。
キタウイング - 重賞2勝の実績馬
1勝馬も多いメンバー構成の中で、重賞2勝の実績が光るのがキタウイングです。
新潟2歳Sでは出遅れながらも上り3ハロン33秒0の末脚を伸ばして勝利しましたが、続く阪神JFでは先行するものの失速して14着。しかし、年明けのフェアリーSでは後方からになりましたが、最内を抜けてきての勝利をあげました。
経験の少ない馬が多い中で、右回り、左回り問わず結果を出しているのは地力が高い証拠です。
勝った2重賞は共に上がり最速でしたので、後方からの競馬でどのくらいの脚が使えるか注目したいですね。
モズメイメイ - 展開の鍵を握る1頭。名手がレースを支配するか?
例年のチューリップ賞は2,3ハロン目がやや速くなるものの、レースの中盤はペースが緩んで、上り3ハロンの切れ比べという展開で進んでいきます。このため、速い上りを出せることは上位進出への鍵ですが、ある程度前の位置につけて進めつつ速い上りを使えることが望ましいです。実際、18、19年に勝ったラッキーライラックとダノンファンタジーは道中3番手を進んで速い上りを出しての勝利でした。
今回その傾向に当てはまりそうなのがモズメイメイです。同馬は3戦2勝とまだ底を見せていない馬で、前走のこぶし賞(阪神芝1600M 1勝クラス)では逃げてマイペースに持ち込み、上り3ハロン34秒2の脚を使って押し切りました。7頭立てのレースだったのですんなり先手が取れたのは大きかったですが、対牡馬の1勝クラスを勝ったのは高い地力の証明ですし、チューリップ賞でも同様に走れる可能性は高そうです。
あとは相手との力関係がどうか、という点でしょうか。逃げた時の武豊騎手の絶妙なペース配分が見られるかもですし、この馬を掴まえに行くことでレースが大きく動いていくのは間違いありません。展開面で大きな鍵を握る馬と言えるでしょう。
ルミノメテオール - 2戦2勝の良血馬が一気に重賞制覇か?
先述の通り、今年の3歳牝馬路線はリバティアイランドの1強状態で、その他は混戦状態です。2月のクイーンカップでも阪神JFで3着だったドゥアイズなどの実績馬が出走していましたが、勝ったのは未勝利勝ちで挑んだハーパーでした。そのため、まだ重賞経験のない新興勢力に期待が集まります。
2戦2勝と負けなしのルミノメテオールに、その期待をするファンも多いのではないでしょうか。圧巻だったのが2戦目のつわぶき賞(中京芝1400M 牝馬1勝クラス)で、道中は中団やや後方の7番手のインを進み、直線では一旦体勢が崩れてしまいましたが、立て直した残り100Mからは素晴らしい伸びで差し切りました。
この勝ちっぷりはなかなかでしたし、このつわぶき賞はレベルの高い一戦でもあります。2着だったダルエスサラームは続く紅梅S(リステッド)を勝利、3着のモズメイメイは対牡馬のこぶし賞を勝利、4着のアリスヴェリテはアルテミスSで3着。5着のユリーシャは紅梅S勝ちと負かした馬たちが次戦で結果を出しています。重賞でも好勝負できる下地があると言えますし、瞬間的に切れる脚がありますので、多頭数での差し比べで力を発揮できるのではないでしょうか。
バースクライ - 外からまとめて交わす豪快な競馬を目指す。
阪神外回り芝1600Mのコースでは最後の直線が長いコースなので、外からまとめて交わしてしまう馬に期待してしまいます。同コースでの上がり最速のタイムを出しているバースクライにはそんな大物感が漂います。
初戦が今回と同じ阪神芝1600Mでの新馬戦。いわゆるスローからのヨーイドンの展開で、外を回す厳しい展開ながらも上り3ハロン33秒1という切れを見せて差し切りました。2戦目の紅梅Sでは出遅れて後方からの競馬になり、直線では一番外。加えて直線で勝ったダルエスサラームが外に斜行してきた影響も少しあり、上がり最速を出しながらも2着に食い込みました。
まだ2戦しかしていないキャリアの少ない馬ですが、その2戦とも上がり最速ですから直線での切れは相当でしょう。今回は乗り替わりですが、スムーズに競馬ができればという条件をクリアできればこのメンバーでも新馬の時のような直線での切れを見せることができるのではないでしょうか。
不器用なタイプですが、大物感のある馬と言えるのではないでしょうか。
ペリファーニア - 兄、エフフォーリアの無念を阪神で晴らせるか。
このレースには1勝馬が多く参戦していて能力の判断がつきにくいですが、そのなかでも注目を集めるのがペリファーニアです。
同馬は父モーリスで、半兄に先日引退したエフフォーリアがいる3歳牝馬。昨年末の新馬戦では2コーナーで前にいた馬が下がってくる不利がありましたが、立て直してその後はスムーズに運んで最後は2着馬に2馬身差をつけて快勝しています。
兄のエフフォーリアは急遽の引退と残念な結果になってしまいましたが、妹のペリファーニアが阪神競馬場で走るとなれば大いに力が入ることでしょう。兄と同じ鹿戸厩舎、横山武騎手で挑むリベンジマッチとも言えるこのレース。実力的には未知数の同馬ですが、非常に注目度の高い1勝馬ではないでしょうか。
3歳牝馬路線はリバティアイランドが抜けた存在ですが、今年のチューリップ賞は対抗できそうな素質を持った馬が多く集まった印象です。近年は桜花賞ぶっつけの馬が多くなりましたが、それでもチューリップ賞のレベルの高さは桜花賞の前哨戦に相応しく、基準になることは間違いありません。
2歳時に実績を積んだ馬の成長ぶりや、キャリアの少ない素質馬の真価はどれほどなのか、他の前哨戦との比較は──など、注目点の多いチューリップ賞。桜花賞へ向けて必見のレースです。
今年もこのレースから名牝が誕生することに期待しましょう!
写真:かぼす