[NZT]2歳王者ドルチェモアが始動。しかし迎え撃つ牝馬勢も豪華な顔ぶれに。 - 重賞プレビュー

伝統のNHKマイルカップ前哨戦
同レースにはつながらず格下げ危機も!?

土曜の中山メインはNHKマイルカップのトライアル、ニュージーランドTが行われます。
3着までにNHKマイルへの優先出走権が与えられるレースなのですが、本番の東京芝1600Mとはある意味では真逆な中山芝1600Mで行われるトライアルレースですので、近年の好走馬は続くNHKマイルで結果が出ない傾向にあります。

過去10年の3着以内30頭でNHKマイルカップで3着以内に入ったのは、17年の3着馬ボンセルヴィーソ、18年2着のケイアイノーテック、そして昨年2着のマテンロウオリオンの3頭だけです。後に重賞を勝ったのも5頭だけという点からも、素質豊かな期待馬がこのレースを使うというよりは、現時点での完成度や中山コース適性の高い馬が馬券圏内に入るというレースと言えるでしょう。

素質の高い馬がこのレースを使っていないという点から、近年ではレースレベルの低下が懸念されています。
ニュージーランドトロフィーはG2の重賞ですが、2022年には格付基準を2年連続で満たしていなかったのでG2格付けに対する警告を受けました。レーティングの格付基準を満たすためにはレベルの高い出走馬が出走し、ハイレベルなレースを見せる必要があります。ただし「今年はその基準を満たすのではないか?」と思われる馬が出走しています。近年の波乱傾向から一変し、世代屈指の実力馬によるハイレベルなレースになる可能性があるのではないでしょうか。

ニュージーランドT 注目馬紹介

ドルチェモア - 2歳王者の今年初戦。レースセンスの良さと地力の高さで4連勝へ!

なんと言っても注目は、2歳王者のドルチェモアです。

2勝目のサウジアラビアロイヤルカップでは、後続を離して逃げたグラニットを2番手で追走して差し切って勝利。この時は特殊な展開だったことや、1番人気のノッキングポイントの凡走に助けられた印象もありましたが、3戦目の朝日杯では3番手のインを進んで残り100Mで先頭に立ち、迫るダノンタッチダウンを凌いで勝利と立ち回りの巧さを見せました。

先行力があり、立ち回りの巧さもあるので、中山コースはピッタリと言えそうです。
また、新馬戦では札幌の洋芝のやや重馬場で勝っていることから、多少の雨が降っても大丈夫でしょう。

目標は先だと思いますが、ここでは能力と適性の両方で抜けた存在と言えるのは間違いありません。
2歳王者として、世代トップクラスの力を見せてくれるでしょう。

メイクアスナッチ - 桜花賞は無念の除外。その悔しさをここにぶつける。

今年の桜花賞は、トライアルレースで賞金を持っていない馬が好走したことで、出走ボーダーが高くなりました。阪神JFで2着のシンリョクカが1700万がボーダーとなり、1600万のメイクアスナッチは惜しくも除外になってしまいました。

3戦2勝、2着1回と素晴らしい成績を残していても桜花賞に出走できないのは残念ですが、それだけ今年の桜花賞の出走ボーダーが高くなっているということでしょう。今回と同じ中山芝1600Mで行われたフェアリーSでは直線で外から伸びてきましたが、最内から伸びたキタウイングに届かずの2着。勝ち馬はゴールまでの最短距離をスムーズに回れたという幸運があったことを考えれば、ほぼ勝ちに等しい2着でした。

3着馬を2馬身弱離しているので、本当に運がなかったとしか言いようがありません。
桜花賞除外の件もそうですが、地力は高いのに巡り合わせの悪さを感じる同馬。
ここで2歳王者相手好勝負できれば、その鬱憤も晴れるのではないでしょうか。

エエヤン - つぶやきたくなるその馬名。同コース2連勝の実績馬。

トリッキーな中山芝1600Mですので、コース適性・コース実績のある馬は無視できません。
その観点からは、同コースで2連勝のエエヤンに注目です。

2戦とも先行して早めに前を捕まえに行って先頭に立ち、押し切って勝利しているのですが、圧巻だったのは前走の1勝クラスでのレース。

道中2番手を追走し、4コーナーで先頭に立つとほとんど追うことなく2着に3馬身差をつける完勝でした。
タイムも優秀でしたので本気で追えばもっと好タイムで勝てたのは間違いありません。重賞級の走りをしたと言って良いでしょう。

今回は2歳王者との対決になりますが、コース適性と連勝の勢いを考えば互角に戦えるかもしれない──そんな気さえしてきます。馬の名前から、どこか"ネタ馬"っぽい感じもしますが、実力は本物です。
このレースで3歳世代のトップマイラーになるかもしれません。

ルミノメテオール - チューリップ賞4着馬の真価が問われる時。

今年のこのレースは、どうしても桜花賞に出られなかった馬に注目が集まります。
チューリップ賞4着のルミノメテオールも、その1頭でしょう。

チューリップ賞ではインの3番手を追走し、直線で前を追いましたが、伸び切れず4着でした。
ただ、初の右回りで距離延長だった点を考えるとうまく対応できたレースだったと言えるのではないでしょうか。

内ラチ沿いの3番手を追走して前に迫る形は中山芝1600Mに向く立ち回りと言えますし、チューリップ賞4着という戦績はモリアーナ、メイクアスナッチに引けを取りません。桜花賞を占う面でもチューリップ賞上位組のレベルがこの馬の走りから見極められるでしょう。

しかも今回は現在中山リーディングの横山武騎手への乗り替わりが大きな強み。横山武騎手は今年の中山で33勝。2位の戸崎騎手が17勝なので圧倒的な数字と言えます。先行して早め先頭から押し切りを狙う横山武騎手にピッタリの馬とも言えるのでより期待もできるのではないでしょうか。

ドルチェモアに騎乗する横山和騎手との兄弟ワンツーも含め、楽しみな存在です。

ロードディフィート - 馬場の味方につけて好走を目指す。

今年のニュージーランドTは、渋った馬場をこなせるかどうかも大きなポイントになるのではないでしょうか。

前走で重馬場の同コースで勝っているロードディフィートのコースと馬場適性にも注目です。

道中は外目の中団を進んで直線では大外へ。
残り200Mでもまだ前と差がありましたが、そこから鋭く伸びて差し切りました。
初の右回り、重馬場でも素晴らしい末脚を見せたのは今回の条件にもきっといきることでしょう。

先行馬が多いメンバー構成ですし、人気のドルチェモアが早めから抜け出そうとするタイプなので、他の先行馬には厳しくなります。差し、追い込み馬が台頭する可能性十分です。不慣れな条件で苦戦する他馬に対して互角以上に戦えてもおかしくありません。

モリアーナ - 関東の3歳牝馬代表が、力を見せる。

今年の桜花賞の出走ボーダーが高いのは前述したとおりですが、2月のクイーンカップで3着だったモリアーナも桜花賞には出走できないようです。

2戦目のコスモス賞では阪神JF3着のドゥアイズに勝ち、今年2月のクイーンカップでも2着だったドゥアイズと差の無い3着とこれまで好成績を残しているだけに、3歳牝馬戦線──特に関東馬の中では、トップクラスの力を持つのは間違いありません。

阪神JFでは前半が速い展開を追いかけて厳しくなり、左右から挟まれる不利もあって失速してしまいましたが、クイーンカップでは差しに回って追い上げるなど器用な立ち回りを見せました。関東圏でのレースなら力を出せる可能性が高いと言えます。今回は中山コースの対応と渋った馬場への対応が鍵になると思いますが、時計のかかる洋芝で結果を出しているので、ある程度は対応可能と見ます。

牝馬同士なら力が上、あとは牡馬に混じってどこまで戦えるでしょうか?

近年はNHKマイルカップに繋がらなかったニュージーランドトロフィーですが、今年は2歳王者のドルチェモアをはじめ、桜花賞除外組も加わって例年以上にハイレベルなレースになったのではないでしょうか。

2歳王者の今年初戦という点でも注目ですし、朝日杯組のレベルの高さ、そして牝馬のレベルの高さという点でも、興味深いレースになったと言えます。

実力馬によるガチンコ勝負を楽しめるのではないでしょうか。この記事が皆さんの参考になれば幸いです。

写真:かぼす

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