2023年クラシックがいよいよ開幕!
ハイレベルなメンバーが女王リバティアイランドに挑む。
今週からいよいよクラシックが開幕します。
第一弾は牝馬の桜花賞です。
今年の桜花賞は出走するためのボーダーラインが非常に高く、フェアリーSで2着となり賞金獲得額1600万円のメイクアスナッチが出走できないほどでした。賞金を獲得していない馬がトライアルレースで出走権を確保したことも大きな要因ですから、各トライアルレースの分析は必須と言えるでしょう。
まずは各前哨戦をおさらいしていきます。
桜花賞 前哨戦振り返り
チューリップ賞 1着:モズメイメイ 2着:コナコースト 3着:ペリファーニア
勝ちタイム:1分34秒0(良) 前半800M:47秒5 後半800M:46秒5
前半600Mが35秒2と遅く、その後の2ハロンも12秒3-12秒4と緩い流れとなりました。
直線では逃げたモズメイメイが上り3ハロン34秒1の脚を使ったので、後続はそれ以上の末脚が必要になってしまい、結局は逃げ切りを許してしまいました。完全に前残りの、先行有利な展開だったと言えるでしょう。
逃げを選択した武豊騎手にペースをコントロールされて押し切られてしまったレースとも見ることができます。2着のコナコーストはやや展開不利のなかで追い込んできたが、本番で勝ち切れる決め手があるかどうかというところ。3着のペリファーニアは出遅れましたが、リカバーして位置を取りに先行したのが結果的に正解でした。
例年に比べてやや凡戦だったという見方もできるチューリップ賞。
桜花賞ではこうしたスローな展開になるとは思えませんし、本番に向けてはあまり参考にはならないかもしれません。ちなみに先週、チューリップ賞・桜花賞と同じ阪神芝1600Mで行われた3歳1勝クラスでは、チューリップ賞9着だったマラキナイアが勝ち、13着だったバースクライが3着という結果でした。
フィリーズレビュー 1着:シングザットソング 2着:ムーンプローブ 3着:ジューンオレンジ
勝ちタイム:1分20秒7(良) 前半600M:33秒2 上り4ハロン:47秒5 3ハロン:35秒8
先行馬が揃ったということもあって、前半600Mが33秒2とハイペースに。
その後も息が入らず速い流れで進み、ラスト3ハロンで35秒8と先行馬の脚が止まる消耗戦となりました。
内の先行馬が苦しくなり、外を回して伸びてきた馬たちが台頭する展開。
スタートを決めて道中6番手の位置を取り、長くいい脚を使ったシングザットソングの持続力が光ったレースでした。
勝ったシングザットソングはそれまで1600Mを使ってきていて、出遅れ癖があるものの直線で鋭い末脚を見せてきた馬です。フィリーズレビューではスタートを決めて6番手につけたのが大きな勝因でしょう。
桜花賞は前半が速い流れになる可能性が高いので、200Mの距離延長に対応できればフィリーズレビューでの走りが桜花賞に向けていい練習になったと見てよいはずです。こちらは、例年よりも桜花賞につながるレースだったのではないでしょうか。
2着のムーンプローブはやや展開が向いたという点は否めませんが、それでも阪神芝1600Mで2勝とコース実績があるのでそれをいかせれば本番でも上位を狙えそうな1頭です。3着のジューンレンジは直線で非常にスムーズに走れたのが好走要因。個人的には1200Mの方がいいと見ています。
アネモネS 1着:トーセンローリエ 2着:コンクシェル
勝ちタイム:1分33秒8(良) 前半800M:46秒6 後半800M:47秒2
スタートしての600Mが34秒7とほぼ平均ペースで進みましたが、その後の600Mが35秒9と緩い流れでした。やや馬群が凝縮して3~4コーナーを進み、残り400Mの勝負ところから11秒2と一気に速くなった、瞬発力勝負の一戦。
やや内、前が有利な展開で道中2番手から早め先頭で押し切ったトーセンローリエの立ち回りの巧さが光りました。2着のコンクシェルは道中後方から直線では大外を回って勝ち馬に迫ったが半馬身差の2着まで。初めて装着したブリンカーの効果があったようで近走から一変を感じました。
勝ったトーセンローリエは完勝で、関東馬同士なら完全に力上位と言える勝ちっぷり。
5戦3勝2着2回はまだ底を見せていないと言えるが、一気の相手強化でどうかという点は気になります。
2着のコンクシェルはブリンカー効果があればというところですが、こちらも相手強化は大きく影響しそうです。
今年の桜花賞はハイペースか?
想定される展開ですが、先行馬が多いものの明らかな逃げ馬は不在。
とはいえ「1番人気のリバティアイランドよりも後ろの位置になってしまっては勝ち目が少ない」と判断した伏兵陣が積極的に先行することで、レースの前半がハイペースになる可能性もありそうです。
リバティアイランドが3番枠に入ったので外から被せるように先行し、あわよくば馬群の中に閉じ込めようとする馬も出てくるかもしれません。先行馬たちのポジション争いと、いかに勝負ところで脚を使えるように力を温存できるかが、勝負のポイントになるでしょうか。
桜花賞 注目馬紹介
リバティアイランド - 勝ちっぷりに注目!? 華やかな戦績に桜色の勲章を。
まずは断然の1番人気になるであろうリバティアイランドから紹介していきましょう。
アルテミスSでは出遅れて2着まででしたが、阪神JFでは外目をスムーズに回って突き抜けました。前半600Mが33秒7というHペースでも位置を取って、直線では後続を突き離したのですから非常に強い勝ちっぷり。
脚質にも特に問題がなく、瞬発力勝負になれば、新馬戦の新潟芝1600Mで上り3ハロン31秒4という驚異的な末脚を出せる実力派。前半がハイペースになっても阪神JFの再現になるでしょう。
とにかくスムーズに走れさえすれば阪神JF同様に完勝する可能性が高いと言えるでしょう。
唯一気になる点は渋った馬場でどうか、という点くらいでしょうか。
それほどに、現状では力が抜けているはずです。
ライトクオンタム - ディープインパクトのラストクロップが桜の舞台で花開くか。
現状ではリバティアイランドの一強ムードとも言える今年の桜花賞。
その対抗1番手にあげられるのが、ライトクオンタムです。
シンザン記念では牡馬を相手に大外から豪快に差し切っての勝利でした。7頭立てで相手が物足りない面もありますが、父を彷彿させる勝ちっぷりでした。今回は多頭数で相手が一気に強化されますが、その血統には期待が集まります。
現3歳世代がディープインパクト産駒にとって最後の世代ですが、ディープインパクト産駒が最初にG1を制したのが2011年桜花賞・マルセリーナでした。その後も、ジェンティルドンナ・アユサン・ハープスターと4年連続で桜花賞馬を出したことからも、ディープインパクト産駒にとって縁の深いG1が桜花賞と言えるでしょう。
リバティアイランドはかなり強いですが、こういうメモリアルなレースで『持っている』武豊騎手とディープインパクト産駒で勝利するところを見たいというファンも多いのではないでしょうか。
ハーパー - 伸びしろはメンバー随一。ルメール騎手を迎えて真価を発揮か。
阪神JFでのリバティアイランドが完勝だったので、まだ未対戦の馬に注目が集まります。
3戦2勝、2着1回とまだ底を見せていないハーパーも、その1頭です。
未勝利戦を勝って挑んだクイーンカップでは道中で中団の馬群の中を進んだハーパー。
直線で外に出した時に内の馬に寄られて不利を受けましたが、立て直して勝ち切りました。
この時負かしたのが、阪神JF3着だったドゥアイズ、NZTで4着のモリアーナですから、価値の高い勝利でした。
また、道中馬群の中でかなり揉まれていながらも直線で伸びたので、桜花賞でもその経験が生きてくるのではないでしょうか。特に今回はルメール騎手を迎えて期待も大きいです。リバティアイランド相手に勝ち切れるとは言い切れませんが、他馬に対しては互角以上に戦えるのではないでしょうか。
コナコースト - ペース激化で期待できる実力派。鮫島駿騎手のG1初制覇に期待。
今年のチューリップ賞はやや参考外のレースかとは書きましたが、出走馬のレベルが高かったのは確かです。
そのチューリップ賞で非常に強い走りをしたのが、コナコーストです。
前半が緩い流れで進んで、完全にモズメイメイの勝ちパターンのなか、外からよく伸びてハナ差まで迫りました。今回は内枠の先行馬が積極的に進み、外枠の差し馬が控えるという展開になれば、9番枠のコナコーストにとって一番いい位置を取れる可能性が高いと言えます。
チューリップ賞のように道中6,7番手の外目を進んで直線で前に迫れるのではないでしょうか。鮫島騎手の継続騎乗でチューリップ賞の経験がいきる流れになりそうです。鮫島駿騎手は2015年にデビューして8年目。後輩たちにもG1を勝った騎手が出てきていますので、ここで初のG1勝利を期待してもいいのではないでしょうか。
ドゥアイズ - 底力勝負に持ち込みたい実力派。
どんな展開になるにせよ、リバティアイランドより後ろで勝負する馬に勝ち目は少ないのは確かです。
リバティアイランドよりも先行し、道中で後続に脚を使わせるように持続的に脚を使って、早め先頭で押し切るタイプが結果的に2,3着に粘る可能性もあるのではないでしょうか。
そんな展開に持ち込みたいのがドゥアイズです。
5戦して1勝、2着2回、3着2回という勝ち切れないタイプではありますが、どんなコースや馬場状態でも走れる総合力の高さはメンバー随一です。今回は4番枠に入ったので逃げるだろうモズメイメイを行かせて2,3番手の内の絶好の位置を取れる可能性が高いです。そのまま持続的に脚を使って、ゴールまで最短距離を通ればリバティアイランドはともかく、他馬に対して有利に戦えるのは間違いありません。
渋った馬場になっても、クイーンカップがやや重だったので対応可能でしょう。
差しに回っても阪神JFでは後方から追い込んできた脚もありますので、安定度の高い馬と言えるでしょう。吉田隼人騎手がフィリーズレビューを勝ったシングザットソングではなく、ドゥアイズを選んだのも手応えを感じているからではないでしょうか。
ムーンプローブ - キャリア4戦全て阪神コース。コース経験をいかせるか?
どうしてもリバティアイランドを意識したレース展開になるので、コース経験と実績は重要になるでしょう。
全5戦中4戦を阪神コースで走り、桜花賞と同じ芝1600Mで2勝しているムーンプローブは経験値でライバルたちを上回ります。未勝利戦と1勝クラスでは先行して早めに抜け出して勝利。阪神JFではハイペースのなかで先行する形になったので展開不利でした。前走のフィリーズレビューは中団外目を追走し、直線で外から追い上げるも2着まで。直線で外に出すまでに外から蓋をされたような形になってなかなか進路ができませんでしたが、進路を確保して伸びた点は桜花賞でもいきてきそうです。
先行しても差しに回っても力を出せるのはないでしょうか。
現状ではリバティアイランドに大注目が集まる一戦ですが、前哨戦で未対戦の馬が多く権利を取ったことで相手関係の把握が難解になったと言えます。リバティアイランドが阪神JFの再現をするのか──それ以上に素晴らしい走りを見せて名牝への道を歩み始めるのか、そうはさせまいと他馬が真価を発揮して2歳女王に競り勝つのか。
素晴らしいレースが行われるのを期待しましょう! この記事が皆さんの参考になれば幸いです。
写真:突撃砲、かぼす、水面、だしまき、Yuuki Hiyorigawa