[連載・クワイトファインプロジェクト]第36回 やっぱり競馬はロマン?

この1カ月の間に、2回北海道に行きました。一昨日は自分の馬を見に行ったのですが、その前は某クラブ法人さんの募集馬ツアーに参加してきました。

今年参加して思ったこと。

クワイトファインをどう思うか、どう評価するか、は別としても、「レア血統」にロマンを感じる競馬ファンの方は多いのだな、ということです。

もちろん、その馬も、ちょっと前までは主流血統でした。

トーセンジョーダン。

2011年の天皇賞・秋。前走札幌記念勝ちにもかかわらず単勝33.3倍の7番人気と低評価ながら、短期免許で来日していた二コラ・ピンナ騎手に導かれ、念願のGⅠタイトルを手にしたのです。そして、勝ち時計1分56秒1はつい最近イクイノックスに破られるまでの天皇賞レコードでした。

2006年生まれ、種牡馬登録は抹消されていません。ギンザグリングラスの1歳下と考えれば、まだ種付けは十分に可能な年齢かと思いますが、2022年産の産駒は、母クリストフォリの牡馬1頭だけ。(2021年の種付けもクリストフォリだけです)。詳しい事情はわかりませんが2022年、2023年は種付け牝馬0です。このままでは、この母クリストフォリの牡馬が最後の産駒になる可能性もあるわけです。

父ジャングルポケット、言わずと知れたトニービン産駒のダービー馬で、ある芸人さんがこの馬の大ファンで産駒を所有したことも話題になっています。父子2代での府中・芝・中距離のスペシャリストでサンデーサイレンスの血を持たないにもかかわらず、重賞勝ち馬を輩出できないまま(現役5歳のシルブロン号はオープン昇級を果たしていますが)種牡馬生活の終盤戦を迎えようとしています。

そんなトーセンジョーダンのラストクロップ…ではありませんが、そうなる可能性もあるたった1頭の1歳牡馬が、こうして注目を集めているわけです。

もちろん、トニービンのサイヤーラインも風前の灯火です。この仔は牡馬ですから、活躍すればサイヤーラインをつなぐこともできます。

これが、ファンの皆様がおっしゃる「競馬のロマン」だとするならば、それをクラブ法人が後押しし、ファンの方がロマンを感じて出資するのは極めて理想的な姿です。結果は別として、ファンの方も納得して出資するなら誰も文句は言わないでしょう。

文字通り「勝ち馬に乗る」のも競馬の楽しみ方なら、ロマンを追い求め、ジャイアントキリングを目指して儚い夢を仲間と共有するのも競馬の楽しみ方なのです。

もちろん、クワイトファインもそうなって欲しいと思います。思いますが、そうは言っても馬体の評価が悪ければクラブであれ一般の馬主さんであれ買ってはくれません。幸い、クワイトファイン産駒バトルクウ2023は惚れ惚れするような好馬体の持ち主であり、私はあえて、ロマン枠ではなく普通のサラブレッドとして評価してもらいたいと思っています。

話を戻しますが、そのクラブの3次募集馬には他にも、メイショウボーラー(2005年フェブラリーS勝馬)の産駒や、1998年産まれ(種付時点23歳!)スクワートルスクワート産駒の鹿児島産馬がいたりと…いや、攻めてますね。

こういう姿勢、私は大賛成です。私も含めた庶民にとっての競馬の楽しみは、家族経営の牧場から生産された地味な血統の馬でも、大牧場で生産され大富豪が所有する馬と勝負できることだと思うのです。それがロマンだというなら、私は「ロマンを追い求めている」という評価を甘んじて受け入れます。

いま取り組んでいるトウカイテイオーの件だけでなく、私は資本主義の大波に抗い、ジャイアントキリングを死ぬまで追い求めていきたい派の人間です。最後は間違いなく完膚なきまでに叩き潰されるとしても、私の屍を見て後世の人々が何かを感じてくれるなら、それでいいと思っています。

もちろん、血統の寡占化を改善したいという思いが第一です。そこはブレません。ただそれは前回コラム(トリスタンダクーニャ島のこと)で重点的に書きましたので。批判的意見も含め多くの反響をいただいたこと感謝申し上げます。

(追記)最近は本業が忙しく、コラムの掲載が不定期になってしまい申し訳ありません。来年の4月と5月は休載の予定ですが、3月までは引き続き執筆させていただきたく、よろしくお願いいたします。

写真:Horse Memorys

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