[連載・クワイトファインプロジェクト]第41回 『ベラジオ』とのご縁

2024年のサマーセール、2日目(8月20日)にクワイトファイン産駒のバトルクウ2023(牝馬、母バトルクウ、母父ケイムホーム)を上場し、兵庫県馬主会 株式会社ビープロジェクト様に税込110万円で落札していただきました。

と、事実を書けばそれだけのことなのですが…その後のことは、当事者である我々の想定をはるかに超えた広がりを見せています。

このセリに至るまでの過程は、まさに波乱万丈でした。

まず、バトルクウ2023については、この馬が牝馬としてこの世に生を受けた瞬間から、私にとって言葉を選ばずに言えば地獄の苦しみが始まったのです。競走馬として自分で使うとなればプロジェクトの資金はあっという間に枯渇します。売ることは絶対条件でした。しかし、1年前は今以上にプロジェクトに対する競馬サークルの世論は冷たく、売っても二束三文で、下手をすれば競走馬にしてもらえない危険性もあったわけです。

しかし、生後3か月くらいでまず一つ目の奇跡が起きます。初めてこの馬を見たレーシングマネージャーに「想像を超えるいい馬体の持ち主だ」ということをX(当時Twitter)で呟いていただき、ちょっと評判になりました。その時私は「絶対に二束三文で売ることはしない。この馬をフラットに評価していただけるオーナーさんにフェアな条件で買っていただく」ことを誓い、できればクラブ法人でファンの皆様にかわいがっていただけるよう活動してきました。

しかし、悲しいかな、私という人間の力不足で、クラブ法人には全く相手にされず、2024年を迎えても何のお声もかからぬままいたずらに月日が流れました。そして、種牡馬、繁殖牝馬、1歳馬の預託料負担でプロジェクトの資金は底をつき、個人資金からの持出を余儀なくされました。残された選択肢が、セール上場というフェアな環境で、この馬の評価を世に問う、ということでした。

そして迎えたセリ当日、久しぶりに会ったバトルクウ2023は立派な馬体に成長していました。当日セリ会場にいた真島大輔調教師(姉のクワイエットエニフ号を管理)にも、いい馬だし買い手は付くと思いますよと言っていただけました。

そんな中、展示時間が終わり11時半のセリ開始までの時間に、一人の男性が熱心にこの馬を見てくれていました。この人は入札してくれるかもしれないと思いました。また、前日に、リアルスティールの産駒が150万円で落札されたというニュースを目にしていたので、この血統で金額的に意地を張っても落札のチャンスを逃すかもしれないと思い、本当にセリ開始の10分前にコンサイナーの方と協議し、「価格交渉を受ける」(リザーブ価格より低い入札があってもそれを承諾し、その値段からセリを開始する、という意味)という方針に変更しました。もちろん、入札してくる人が2人以上いて価格が競りあがってくれれば当初リザーブ価格を超えるわけですから、私はその可能性に賭けました。

そして結果は、皆様もご存知の通り。入札者はおひとりだけで、そうなると競り市のルールで最初の入札額で決まります。極めてフェアな結果でした。とは言え、資金繰り的にギリギリの状況でしたから、たとえ100万円でも売却が決まり、1歳馬の預託料支払いから解放されたので、プロジェクトをもう少し続けられるな、という安堵の気持ちで、私はセリ会場を後にしました。

すぐそこにいた真島大輔調教師からも祝福の言葉をいただいた後、「落札者ベラジオさんですよね」と言われ、私はへえ…と思いました。その時にはビープロジェクトという会社がベラジオさんだということを存じ上げず、大手のオーナーさんに買っていただいたんんだなと思いながら控えのところに戻り、Xを見てみたらネットがすでに大盛り上がりを始めていました。

そこから後のことは、当事者の林田祥来オーナーもあまりの反響の大きさに戸惑っておられたくらいで、種牡馬クワイトファインに望みをつなぐ競馬ファンの多さを改めて証明するとともに、中央競馬で実績があり、かつYouTubeチャンネル等の発信力も絶大なものがあるオーナーに買っていただいたことは、100万円という金額をはるかに超えるプライスレスな効果をもたらしてくれた、と言えるかも知れません。わかりやすく言えば、これまでずっと色物扱いされ白い目で見られ続けてきた当プロジェクトが、やっと市民権を得たのかなと思っています。そして、普通ならサマーセールで100万円で取引された馬が記事になることはありませんが、日刊スポーツさんに、すぐに記事にしていただきました。

 バトルクウの仔はまた来年産まれます。もしかしたら再来年のサマーセールにその仔が上場することになるかもしれません。もしそうなるとしたら今年の経験を糧に、もう少し上手に宣伝をしたいなと思っています。

ビープロジェクト、ベラジオ軍団にクワイトファイン産駒が加わったことの波及効果は、現時点ではもちろんまだわかりませんが、少なくともマイナスになることはないですから、今回ご縁があったいろいろな方のご協力をいただきながら、プロジェクトを進めていきたいと考えております。

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