[連載・クワイトファインプロジェクト]第1回 テイオー近親と中堅ジョッキーが挑んだ第81回菊花賞

ウマフリ読者の皆様、初めまして。トウカイテイオー後継種牡馬プロジェクト主宰の原田と申します。
今回、ご縁がありましてウマフリさんでコラムを書かせていただくことになりました。よろしくお願いいたします。

トウカイテイオー後継種牡馬プロジェクトでは、クワイトファイン号をトウカイテイオーの唯一の後継種牡馬とすべく2019年11月にクラウドファンディングを行いました。皆様から約780万円の支援をいただき、2020年より種牡馬として繋養しています。

私は中央競馬の馬主ではありませんし(地方競馬馬主登録のみ)、金子さんや里見さん、最近ですとサイバーエージェントの藤田さんのような著名な経済人でもなければ、西山さんや岡田牧雄さんのような実績ある生産者でもなく、ごくごく普通のサラリーマン馬主です。そんな私が、錚々たるホースマンの皆様を差し置いてコラムを書かせていただいて良いのだろうかと恐縮しておりますが、トウカイテイオー後継種牡馬プロジェクトの「中の人」として、プロジェクトのご紹介も兼ねつつ競馬への思いを書かせていただければと思います。

本来であれば、今年産まれたクワイトファインの初年度産駒(母キネオスイトピー、牝馬)の成長記録などご紹介できればよかったのですが、初年度産駒は病気で亡くなってしまいました。そのため、来年の産駒誕生までは毎週の重賞レースにまつわる思い出などを書きつつ、トウカイテイオーやクワイトファインにまつわるエピソードをご紹介できればと思います。

さて、連載第1回は菊花賞ウィークになりました。トウカイテイオーは骨折のため菊花賞は回避し、残念ながら無敗の3冠馬になることはできませんでした。それから約30年の時が流れ、もちろん中央競馬にトウカイテイオー産駒はいませんが、昨年の菊花賞で、トウカイテイオーの全妹の孫という馬が出走したのをご記憶の方も多いかと思います。
そう、ロバートソンキー号です。
ですが、私がロバートソンキーで注目したいのは、血統もさることながら、伊藤工真騎手とのコンビで神戸新聞杯→菊花賞と駒を進めたこと。

実は私は、昨年の神戸新聞杯で三連複を的中させて万馬券をゲットできたのですが、ロバートソンキーがトウカイテイオーの近親だということを知ったのはレース後……つまり馬券を当てた後でした。馬券を買った理由は、伊藤工真騎手の久しぶりの平地重賞挑戦を応援したかったから、というもの。そうしたら14番人気ながら3着に食い込む大健闘。4着馬が、後の仏GⅡ勝ち馬ディープボンドですから、価値のあるレースだったと思います。

愛馬の重賞挑戦、そしてGⅠクラシック出走を、リーディング上位騎手にスイッチすることなく伊藤工真騎手と共に臨んだことは、非常に応援しがいがありました。オーナーの方と面識があるわけではありませんが、騎手と馬とのつながりを大事にしてくれるオーナーさんはそれだけで尊敬に値すると思います。

ロバートソンキーは菊花賞では結果を残せませんでしたが、その後自己条件を連勝しています。伊藤騎手も落馬負傷から10月16日に7ヶ月ぶり戦列復帰し、さっそく勝利していますので、またこのコンビが重賞戦線で活躍するのを楽しみに待ちたいと思います。

騎手の選択と言えば、中央で多くの馬を所有する実績あるオーナーさんならある程度自分の意思を反映できるのかも知れませんが、当然ながらリーディング上位騎手は依頼がかち合うこともあるでしょう。オーナーさんの中では、言い方として適切かどうかわかりませんが「お抱え」の騎手がいる方も多いですね。マイネル軍団と柴田大騎手、丹内騎手、私もお世話になっている山上和良オーナーと水口騎手、といったところが有名でしょうか。
私のような零細馬主にはなかなかそんな力もありませんが、クワイトファインが浦和に移籍した際、平山調教師からは、乗り役は誰にしますか、と意見を聞いていただきました。そう聞かれて私は悩みました。南関東のリーディング上位級は名前は知っていたけれどもちろん面識はありませんし、リーディング上位を指名したところで私の馬になぞ乗ってくれる保証もありません。そこで、唯一、別の馬を荒尾に預けていた時に乗ってもらったことのある船橋の西村栄喜騎手を指名しました。荒尾競馬廃止とともに南関移籍することができた西村騎手と、地方3つの競馬場を渡り歩いて南関移籍を勝ち取ったクワイトファイン、叩き上げ同士で名コンビになってくれるのではいう期待も込めていました。

移籍後3戦、西村騎手に乗ってもらい、結果は3着、4着、2着と惜しいところで勝つことは出来ませんでした。西村騎手もクワイトファイン1鞍だけのために浦和に遠征していただくこともあり、おそらくは意気に感じて乗っていただけたのではないかと思いますが、1着という結果で応えられなかったことを今でも申し訳なく思っています。

クワイトファインの産駒が来年無事に産まれたとして、競走馬デビューするのは早くて2歳ですから3年後です。まだまだ先の話で、どの競馬場に所属するかもわかりませんが、クワイトファインがお世話になった騎手の方々にはどこかで乗ってもらいたいな、そういう人と人とのつながりは大事にしていきたいなと思っています。

写真:出越茂毅

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